openmoney
給与版
  • 無料ユーザー登録
    ログイン

    投資のデータを閲覧するには
    OpenMoney投資版へ

2022/05/31

自営業・フリーランス・個人事業主に必要な保険は?会社員との違いや備えるべきリスクまで解説

自営業・フリーランス・個人事業主に必要な保険について解説します。企業に雇われることなく働く人は、会社員と比べて備えるべきリスクの大きさが異なります。日本における会社員以外の人口の推移から、備えるべきリスク、そのリスクに備えるために加入すべき保険までわかりやすく解説しますので、参考にしてください。

自営業・フリーランス・個人事業主の違い

終身雇用制度がなくなってきている現代の日本では、様々な働き方をする人が増えてきています。会社員ではない働き方をする人を「自営業」「フリーランス」「個人事業主」などと様々な呼び方をしますが、まずはそれぞれの言葉の違いを説明します。

・自営業…会社員のように企業との雇用関係がなく、独立して事業を行い収入を得ている人の総称。

・フリーランス…会社員のように企業との雇用関係がなく、一つの仕事ごとに契約を結んで働く働き方のこと。

・個人事業主…個人として事業を営むために開業届を出している人のこと。

つまり、個人事業主は開業届を出して事業を営んでいる人のことを指す法律的な呼び名で、フリーランスは働き方に対する呼び名、自営業は個人事業主やフリーランスなどを含めた会社との雇用関係がない働き方をしている人の総称となります。この記事では、自営業・フリーランス・個人事業主をあわせて今後「自営業」と記載します。

日本における自営業人口

2021年の労働力調査で発表された日本の全就業者数は6,667万人で、そのうち自営業と呼ばれる人の数は660万人と全体の約10%となっています。10年前の2011年では自営業者の数が757万人であったため、日本においては自営業者の数は減少傾向にあると言えます。

しかし、ランサーズが行った「フリーランス実態調査 2021」によると、2015年には937万人だったフリーランス人口が、2021年には1,577万人にまで増えています。この「フリーランス」という言葉の定義としては「過去12か月のうち、本業によらない収入(副業収入)が1円でもあった人」とされているため、自営業として生計を立てている人の人数は減少傾向だが、副業も込みでフリーランスとして何かしらの収入を得ている人の数は増加傾向にあるということが見てとれます。

参考:

労働力調査(総務省)

フリーランス実態調査 2021(ランサーズ)

会社員と自営業の社会保険(公的保険)の違い

会社員と自営業では、受けられる社会保険(公的保険)の制度がかなり異なります。日本では「国民皆保険制度」と「国民皆年金制度」を導入しているため、自営業かどうかにかかわらず全員が公的医療保険と公的年金に加入しています。しかし、自営業に関しては雇用保険・労災保険に加入することができないため業務中の病気や怪我、失業した際の保障、育休中の保障などを受けることができません。また、会社員が加入することができる健康保険や厚生年金保険は保険料を勤務先企業と折半で支払いますが、自営業が加入することのできる国民健康保険や国民年金は保険料全額が自己負担となります(受けられる保障は変わりません)。

「扶養に入れる」という概念も会社員のみのもので、自営業が加入する国民健康保険や国民年金では配偶者や子どもの分の保険料もそれぞれ支払う必要があります。会社員の場合は所得が一定以下の配偶者や子どもを扶養に入れることができるため、扶養者の分の保険料の負担は必要ありません。

このように、会社員と自営業を比べると加入できる社会保険やその中身に違いがあります。会社員と比べて公的に受けられる保障が少ないため、民間の保険で補う必要が大きくなるということです。

社会保険の種類 会社員 自営業
医療保険 健康保険など 国民健康保険
年金保険

国民年金

厚生年金保険

国民年金
介護保険 40歳以上が加入 40歳以上が加入
雇用保険 条件を満たせば加入できる 加入できない
労災保険 全員が加入できる 加入できない

参考記事:『 社会保険(公的保険)の種類徹底解説

個人事業主が備えるべきリスクと必要な保険

1. 病気や怪我で働けなくなるリスク

自営業の人がまず考えておかなければいけないリスクが、病気や怪我で働けなくなるリスクです。自営業者も国民健康保険には入っているため病気や怪我になったときにかかる自己負担額は同じですが、会社員と違って有給休暇や傷病手当金がないため、仕事を休むことでダイレクトに収入が減ってしまいます。今は健康体でも、いつ長期療養が必要な病気になってしまうかわかりません。働けない期間ができてしまったときの医療費や生活費の負担リスクに対しては必ず備えておくべきだと言えるでしょう。

参考:病気やケガで会社を休んだとき(全国健康保険協会)

病気や怪我で働けなくなるリスクに備える保険:医療保険、就業不能保険

病気や怪我で働けなくなってしまった場合、まずは治療に対する費用を準備しなければいけません。高額療養費制度を使うことで月間の自己負担限度額は一定金額に抑えることができますが、それでも入院が長引いたりした場合は継続的に大きな負担がかかります。入院した際や手術した際に給付金がもらえる医療保険は、安心して治療を受けるために加入しておくべき保険と言えるでしょう。自営業者に限らず、日本国民の民間の医療保険の加入率は8割超となっており、多くの人が医療費に対する備えをしていることがわかります。

また、治療を受け仕事を休んでいる間の自分や家族の生活費についても備えておく必要があります。長期間働けなくなった際に、給与のように毎月保険金が受け取れる就業不能保険は近年加入者が急増している保険です。自営業者で貯蓄が少なく、もし仕事を休むことになった際のリスクが大きいと感じている人は医療保険と同様に検討すべき保険と言えるでしょう。

参考:

平成30年度 生命保険に関する全国実態調査(生命保険文化センター)

医療保険の種類徹底解説

就業不能保険のメリット・デメリットとは。必要性から注意点まで

2. 死亡するリスク

自営業で家族がいる人の場合、自分が死亡するリスクも考えておく必要があります。自営業だと加入している公的年金制度が国民年金のみになるため、もし死亡した場合家族は遺族基礎年金のみ受け取ることとなります。会社員だと国民年金に加えて厚生年金保険にも加入しているので、死亡した際は遺族基礎年金に加えて遺族厚生年金を受け取ることができます。

自営業者がもらえる遺族基礎年金のみだと、もらえる金額が少ないことはもちろん、子どものいる配偶者にしか支給されないなどそもそもの受給条件も厳しくなっています。遺族基礎年金は基本額780,900円(年額)に子どもの加算額が加わった金額が支給されますが(2022年現在)、基本的に遺族基礎年金のみでは家族の生活の維持は難しいと思っておくべきでしょう。

また、遺族年金だけでなく障害年金も自営業と会社員では違いがあります。所定の障害状態になってしまった時、会社員の場合は障害基礎年金に加えて障害厚生年金を受け取ることができますが、自営業の場合は障害基礎年金のみの受給となります。

このように、死亡したり障害を負った際のリスクについても自営業の人はより備えなければいけないことがわかります。

死亡するリスクに備える保険:終身保険、収入保障保険

死亡するリスクに備えるためには、生命保険(死亡保険)が有効です。特に、貯蓄性があり生涯保障が続く終身生命保険が自営業者には安心です。解約しないことを前提に加入するのであれば、少ない解約返戻金に設定することで保険料を割安にした低解約返戻金型終身保険などを検討してみましょう。ただし終身保険は一生涯保障されるため、一定期間保障される定期保険と比べると保険料が割高な傾向があります。保険料の支払いが負担に感じる場合は、家族に保障が多く必要である期間(子どもが小さい間など)のみ死亡保障をつける定期保険も選択肢に入れることをおすすめします。

また、死亡時にまとまった死亡保険金がもらえる生命保険のみでなく、契約者の死後家族に給与のように毎月保険金が支払われる収入保障保険も自営業者にはおすすめです。保障期間としては一生涯ではなく一定期間になるため、定期保険(定期生命保険)と同じく割安な保険料で死亡するリスクに備えることができます。

参考記事:

終身保険(終身生命保険)のメリット・デメリット

定期保険(定期生命保険)のメリット・デメリット

収入保障保険のメリット・デメリットとは。必要性から注意点まで

3. 老後資金が不足するリスク

自営業の人は、老後にもらえる年金が少ないため老後資金が不足するというリスクにも備えなければいけません。会社員は国民年金と厚生年金保険の両方に加入するため、老後は老齢基礎年金と老齢厚生年金の2つの年金を受給することができます(このことから会社員がもらえる年金は2階建ての年金と言われています)。しかし自営業の人は国民年金のみに加入するため、もらえる年金額が会社員よりも少なくなります。20歳から60歳までの40年間(480カ月)すべて国民年金保険料を支払っていれば、満額の年780,900円(令和3年度時点)を受け取ることができますが、国民年金の受給額のみで生活していくことは難しいと言えるでしょう。

自営業は定年がないため、可能であれば何歳まででも働けるというメリットもありますが、自分が何歳まで元気に働ける状態であるかはわからないため老後資金はなるべく多く準備しておく必要があります。

老後資金が不足するリスクに備える保険:個人年金保険

老後資金が不足するリスクに備えるためには、個人年金保険が有効です。個人年金保険に加入し保険料を一定期間支払うことで、将来決まった時期から年金を受け取り「私的年金」を作ることができます。また、一般的な個人年金保険は年金を受給する前に契約者が死亡してしまった場合に、あらかじめ設定した受取人が死亡保険金を受け取ることができます。私的年金を準備しながら、生命保険の役割も果たしてくれるということです。

参考記事:『 個人年金保険のメリット・デメリットとは

保険以外の選択肢も検討しよう

ここまで自営業の人が備えるべきリスクとおすすめの保険を解説しましたが、リスクに備えるためには保険のみで準備するというのはあまりおすすめできません。例えば老後資金を準備するために個人年金保険を利用する場合、確実に資金を準備することはできますが、支払った保険料を保険会社が運用することによって受け取る年金額が大幅に増えるといったことはほぼ起こりません。iDeCoやNISAなど非課税で資産運用できる制度を利用することで、運用リスクは上がりますが将来受け取れる金額は保険よりも増えることが予想されます(一方元本割れの可能性もあります)。特にiDeCoは自営業者の場合月々の掛金上限が68,000円と会社員よりも多く設定されていますので、余裕があれば満額設定することでより資産を増やせる可能性があります。また、以下で述べるように自営業者にも会社員と同じように労災保険や健康保険に加入できる可能性もありますので、自分が取れる選択肢を多く理解した上で、自分に合った方法でリスクに備えるようにしましょう。

参考記事:

iDeCoのメリットとデメリット・注意点

つみたてNISAのメリットとデメリット・注意点

自営業でも健康保険に加入できることもある

会社員が加入する健康保険には「任意継続保険制度」というものがあり、会社員から自営業に転職する場合でも2年間は健康保険にそのまま継続して加入することができます。会社を退職する日までに2ヶ月以上継続して健康保険に加入していた人が対象で、退職時に申し出ることで加入を継続することができます。健康保険を継続することで配偶者などを扶養に入れることができたり、人によっては国民健康保険に加入するよりも保険料を抑えることができます。ただし会社員の場合は保険料は企業と折半ですが、任意継続の場合は全額自己負担となりますので注意してください。

参考:健康保険任意継続制度について(全国健康保険協会)

自営業でも労災保険に加入できることもある

事業の内容、企業規模などに制限はありますが、自営業者も条件によっては労災で保障されるべき対象として労災保険に加入できることがあります。これを労災保険への特別加入制度と言い、特別加入することで自営業者も業務中の病気や怪我などに対して保障を受けることができます。自営業者は自身が特別加入の対象となるかどうか一度確認しておくとよいでしょう。

参考:労災保険への特別加入(厚生労働省)

自営業者が備えるべきリスクを理解しよう

自営業・フリーランス・個人事業主に必要な保険について解説しました。自営業者は会社員と比べて公的な保障が少ないため、必要な保障を理解してよりリスクに備える必要があります。自分や家族、従業員を守るため、しっかり保障を準備しておきましょう。