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2022/03/15

iDeCoのメリットとデメリット・注意点

iDeCo(個人型確定拠出年金)のメリットとデメリット・注意点について、初心者にもわかりやすく解説します。老後資金の準備としてメリットも多く、積極的に利用すべき制度であるiDeCoですが、デメリットや注意点も存在します。手数料や税金についてなど、注意点までしっかりと理解した上で利用するようにしましょう。

iDeCoとは

iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)とは、2001年にスタートした、確定拠出年金法に基づいて実施されている私的年金制度です。毎月拠出した掛金を自分で選んだ商品で運用し、老後に向けた資産を形成することができます。掛金を60歳になるまで拠出することで、60歳以降に老齢給付金という形で受け取ることができます。

iDeCoという愛称がつけられたのは2016年からで、それまでは「個人型確定拠出年金」や「日本版401k」と呼ばれていました。iDeCoはつみたてNISAと同じく運用して出た利益が非課税なのに加え、掛金の全額が所得控除の対象になるため、所得税・住民税が安くなるという節税メリットの大きい制度です。

iDeCoは国民年金を納めている60歳未満の人であれば、一部の人をのぞき制度を利用することができます。制度改正により専業主婦(夫)や公務員の人でも加入できるようになり、2022年5月には加入できる年齢が引き上げられ65歳まで加入できるようになるなど、制度改正により加入できる人が増えてきています。

参考記事:

iDeCoの始め方は?口座開設の方法やおすすめ金融機関まで解説

iDeCoは2022年の改正でどう変わる?

iDeCoのメリット

iDeCoは、老後のための資産形成を考えた時にまず最初に検討・利用すべきメリットの大きい制度です。iDeCoを利用するメリットは主に以下の3点です。

1. 掛金が全額所得控除の対象になる。

2. 運用益が非課税になる。

3. 積み立てた掛金を受け取る際にも、控除(非課税)の対象になる。

iDeCoのデメリット・注意点

iDeCoはメリットが大きい制度ですが、デメリットや注意しておくべき点も存在します。「知らなかった」ということのないように、すべて理解した上で利用するようにしましょう。

デメリット・注意点1 原則60歳まで引き出せない(解約できない)

iDeCoは老後資金の形成(私的年金)という目的で作られている制度のため、原則60歳になるまでは掛金を引き出すことができません。そのため、途中で掛金の支払いが厳しくなったり、まとまったお金が必要になったとしてもiDeCoの掛金を引き出すことはできませんので、無理のない掛金設定が重要です。もし支払いが厳しくなった場合には、1年に1回だけ掛金の減額もしくは停止を行うことも可能です。

・減額申請の場合:加入している金融機関に「加入者掛金額変更届」を提出する。(掛金は5,000円以上で1,000円刻みでの設定が可能)

・停止申請の場合:加入している金融機関に「加入者資格喪失届」を提出する。その後は今まで支払った掛金のみで運用を継続できますが、運用指図者として毎月手数料が66円かかります。

原則60歳まで引き出すことができないというのは、いつでも売却が可能なつみたてNISAとの大きな違いです。60歳までにまとまった資金が必要になることは誰にでも起こり得ますので、iDeCo以外の手段での資産形成も行っておくべきと言えるでしょう。

デメリット・注意点2 60歳以降の受け取り方法によっては課税される場合がある

iDeCoは掛金を支払う時、運用時、掛金受け取り時に税制優遇が備わっています。しかしこのうち60歳以降での掛金受け取り時のみ、条件によっては課税される場合があります。

iDeCoを60歳まで運用して受け取る際の方法は以下の3パターンあります。

1. 一時金として一括で受け取る

2. 年金として受け取る

3. 一時金と年金を併用して受け取る

それぞれに気をつけるポイントがありますので、ひとつずつ解説します。

1. 一時金として一括で受け取る場合

一時金として一括で受け取る場合、退職金がある企業に勤めている人は注意が必要です。一時金は退職金と同じ扱いになり、合算して退職所得控除額が適用されます。退職金とiDeCoの一時金の総額が控除金額を超えてしまうと、その分は税金がかかります。

例:

勤続年数:35年

掛金の拠出年数:20年

退職金金額:2,300万円


・退職所得控除金額の計算方法

勤続年数(掛金の拠出年数)が20年以下→40万円×勤続年数

勤続年数(掛金の拠出年数)が20年以上→800万円+70万×(勤続年数-20年)

※勤続年数と掛金の拠出年数が異なる場合は、年数が長い方で計算されます。


例の場合、勤続年数が20年以上ですので

800万円+70万×(35-20)年=1,850万円

が非課税枠となり、退職金と確定拠出年金の合計額が1,850万円を超える分は所得税がかかることになります。


・退職金にかかる税金の計算方法

退職金には、所得税、住民税、復興特別所得税がかかります。退職所得控除金額がわかったら、退職金の中で課税される金額を計算します。


上記例の場合

課税額:(退職金支給額2,300万円-退職所得控除額1,850万円)×2分の1=225万円

225万円が課税される退職所得額となるため、225万円に税率に応じた所得税、住民税、復興特別所得税がかかることになります。勤続35年、退職金が2,300万円の人の場合、だいたい3つの税金の合計で30万円ほどかかります。退職金や同時期に受け取るiDeCoの掛金が多くなっていくほど、この課税金額が大きくなってしまうのです。

ただし、iDeCoと退職金の合計金額が非課税額を超えそうでも、以下の方法で受け取ることで退職所得控除を2回重複して受けることができます。

「60歳でiDeCoの一時金を受け取り、5年後、65歳で企業の退職金を受け取る」

退職所得控除には通称5年ルールというものがあり、過去4年以内になんらかの退職金とみなせるもの(iDeCoの一時金等)を受け取っている場合、iDeCoの一時金と企業の退職金は合算されますが、5年が経過していれば退職所得とみなされません。そのためiDeCoを60歳時点で先に受け取り、5年後以降に企業の退職金を受け取れば退職所得控除を重複して受けることができます。受け取る順番が逆だと重複は受けられませんので注意してください。

ただしこれは企業の退職金を受け取る時期をある程度コントロールすることができる人の場合取れる方法ですので、万人が取れる方法ではありません。また、今後税制が変わる可能性も大いにありますのでその点は認識しておいてください。

2. 年金として受け取る場合

iDeCoは年金のように複数回に分けて掛金を受け取ることも可能です。「分割年金」として受け取る場合は、受給期間を5年、10年、15年、20年の中から、年間の支給回数を1回・2回・4回・6回の中から選ぶことができます。この場合、特に所得が高い人は注意が必要です。年金として掛金を受け取る場合は公的年金等控除が適用されるのですが、公的年金等控除は受け取る時点の年齢が65歳未満の場合は年間60万円までが、65歳以上の場合は110万円までが非課税枠と決まっています。こちらも公的年金とiDeCoの年金の金額は合算して計算されるため、現役時代に高収入だった人は公的年金+iDeCoの年金で年間の非課税枠を超え、課税対象になる場合があります。こちらは60歳近くになってみないとどれくらい年金がもらえるかが正確にわからないのですが、一般的に平均年収以上の会社員だった人であれば公的年金のみで非課税枠を超えていることが多く、iDeCoの「年金受け取り」分は課税対象となる可能性が高いです。

また、税金とは関係ありませんが、iDeCoは給付金を受け取る際に一回440円(税込)の給付事務手数料がかかります。この費用はどの受け取り方法でもかかりますが、年金として受け取る場合回数が多い分費用が増えますので、その点も認識しておきましょう。

年金として受け取る場合は、すべての金額を受け取り完了するまで残りの金額を非課税で運用継続できるというメリットもあります。運用実績がよくこのままできるだけ運用を継続したい、という人は年金受取を選択して運用を継続していくのも方法の一つです。

3. 一時金と年金を併用して受け取る場合

3つ目の受け取り方法として、年金形式と一時金形式を併用して受け取る方法があります。この方法であれば退職所得控除と公的年金等控除の両方の所得控除を利用できるため、節税対策としては一番有効な方法です。しかし、現在金融機関によってはこの方法が利用できないところもありますので、注意してください。

3つの受け取り方法に応じた注意すべきポイントを説明しましたが、こちらはあくまで現時点の制度内での注意点です。制度は常に変わっていきますので、掛金を受け取る年齢になった際にはまた変わっている可能性が高いです。今のうちからなんとなくでも出口戦略は考えておきつつも、制度は変わる可能性があることを認識し、受け取りに関する変更点があれば情報をキャッチするようにしておきましょう。

デメリット・注意点3 元本割れの可能性がある

iDeCoは、掛金を運用する金融商品を自分で選ぶことができます。選べる商品の中には定期預金型と言って元本保証型の商品もありますが、老後資金を運用で増やしたいと考えている人であれば元本変動型の商品を選ぶべきでしょう。その場合、運用状況によっては元本割れとなる可能性もあることは認識しておきましょう。

デメリット・注意点4 非課税で積み立てできる上限額が決まっている

iDeCoで積み立てることができる金額は、職業などによって上限が決まっています。資金に余裕がある人でも上限以上の金額を設定することはできないので、投資枠としては少ないと感じる人もいるかもしれません。

各職業等に応じた掛金の上限金額は下記の通りです。

職業 掛金の上限金額
自営業(第一号被保険者) 月額68,000円(年間816,000円)

会社員・公務員(第二号被保険者)

 1. 会社に企業年金がない会社員

月額23,000円(年間276,000円)

会社員・公務員(第二号被保険者)

 2. 企業型DCに加入している会社員

月額20,000円(年間240,000円)

会社員・公務員(第二号被保険者)

 3. 企業型DCとDBに加入している会社員

月額12,000円(年間144,000円)

会社員・公務員(第二号被保険者)

 4. DBのみに加入している会社員

月額12,000円(年間144,000円)

会社員・公務員(第二号被保険者)

 5. 公務員

月額12,000円(年間144,000円)
専業主婦(夫) 月額23,000円(年間276,000円)

※DC:確定拠出年金のこと。老後資金を貯めるための制度で、企業で加入するが自身で運用を行う。

※DB:確定給付企業年金のこと。同じく老後資金を貯めるための制度だが、企業で加入し運用は企業が行う。

デメリット・注意点5 誰でも加入できるわけではない

つみたてNISAの場合、日本に住んでいる20歳以上の人であれば誰でも制度を利用することができます。しかしiDeCoの場合は、条件によっては加入できない場合もあります。

以下の条件の場合、iDeCoへは加入できません。

・60歳以上の人

・海外在住の人

・農業者年金(年間60日以上農業に携わる60歳未満の人が加入できる確定拠出年金)に加入している人

・会社に企業年金があり、会社がiDeCoの加入を認めていない人

・国民年金保険料を支払っていない(免除又は猶予を受けている)人

海外在住の人に関しては、iDeCo加入途中での海外転勤などにより、日本を年単位で長期的に離れる際も条件によって継続ができない場合があります。海外転勤の予定がある人は、あらかじめ加入している金融機関に確認する必要があります。また、年齢に関しては60歳以上でなければ加入できますが、iDeCoは加入期間が10年未満だと引き出せないので(最長65歳まで)、50歳以上で加入した場合60歳時点での受け取りができないので注意が必要です。

デメリット・注意点6 手数料・口座維持費がかかる

iDeCoには、つみたてNISAとは違い、手数料や口座維持費がかかります。

・口座開設のための手数料(口座開設時のみ):2,829円

・口座管理手数料(毎月):月171円~600円(金融機関によって異なる)

・給付事務手数料(掛金受け取り時):受け取り1回につき440円

iDeCoには上記費用がかかるので、もし元本保証型の商品のみを選んでしまうと掛金次第では手数料負けしてしまう可能性もあります。かかる費用を差し引いても節税メリットはありますが、無料で始められる制度ではないため、金融機関や商品選びは慎重に行いましょう。
参考記事:『 iDeCoに発生する手数料とは?最安の金融機関・証券会社も紹介

デメリット・注意点7 開始までの手続きが面倒

つみたてNISAの場合、口座を開設し、銘柄や金額などを選べば基本的な設定は完了です。しかしiDeCoの場合、加入申込書に加え、会社員や公務員などの厚生年金の被保険者の場合は勤務先の事業主に証明書を記入してもらう必要があります。自分だけで手続きが完了しない上に、勤務先の捺印も必要になるのでやり取りが多く、つみたてNISAと比べて手間に感じる人が多いです。また加入申込書を送付後、国民年金基金連合会での審査に1~2ヶ月かかるので、実際に積み立てを始められるまでに期間を要します。

※iDeCoはこの加入時の手間がデメリットの一つだったのですが、現在2024年を目標に、勤務先の証明が不要になる案が進んでいるようです。

デメリット・注意点を認識した上で活用しよう

iDeCoのメリットとデメリット・注意点について解説しました。つみたてNISAと比べると費用が発生したりと少しハードルが高く感じられるiDeCoですが、老後資金の準備のためには非常に魅力的な制度です。デメリット・注意点も認識した上で、制度を活用していきましょう。