2022/06/13

就業不能保険のメリット・デメリットとは。必要性から注意点まで

就業不能保険のメリット・デメリットについて解説します。近年注目度が上がってきており、各保険会社で商品の種類も多様となってきている就業不能保険。加入率の推移からメリット・デメリット、就業不能保険の必要性が高い人から加入する際の注意点までわかりやすく解説しますので、参考にしてください。

就業不能保険とは

就業不能保険とは、病気や怪我などで長期間働けない状態となったときに、働けない期間の収入を保障するための保険です。60日や180日など保険商品によって定められている支払い対象外期間を超えて就業不能状態となった際に、保険金を毎月受け取ることができます。医療保険に入っていれば手術や入院で保険金がおりますが、その間働けずに減ってしまった給与については保障してくれません。長期入院や自宅療養となった際に本人を含めた家族の生活費を補うことができるため、近年最も注目されている保険商品の一つです。

就業不能保険とその他の保険との違い

就業不能保険とその他の似ている保険の違いについては、以下のようになります。特に就業不能保険と収入保障保険については内容は全く異なりますが混同されやすいので、しっかり違いを理解するようにしましょう。


就業不能保険 収入保障保険 医療保険
目的 病気や怪我で働けないときの生活費のため 死亡や高度障害状態になった際の家族の生活費のため 病気や怪我で入院・通院する際の医療費のため
保険期間 60歳まで、70歳までなど商品によって異なる 10年、15年など商品によって異なるが基本的に短期 10年、20年、終身など商品によって異なるが基本的に長期
免責期間 60日、180日など商品によって異なる なし 入院3日、入院4日など商品によって異なる
給付期間 免責期間経過後、基本的には医療保険より長期 2年、5年など商品によって異なる 入院60日、入院120日など商品によって異なる

参考記事:『就業不能保険と収入保障保険の違いとは

就業不能保険の加入率

生命保険文化センターが3年ごとに行っている『生命保険に関する全国実態調査』においては、平成30年度に「生活障害・就業不能保障保険、生活障害・就業不能保障特約(いわゆる就業不能保険)」という項目が新たに追加されており、その注目度の高さが伺えます。その調査によると、就業不能保険に加入している人の割合は平成30年度の調査では12.0%でしたが、令和3年度の調査では18.4%とその数字は上がってきています。また、世帯主年齢代別にみると29歳以下が最も加入率が高く26.5%となっています。60歳以降は定年退職によって「病気で働けなくなる」という状況が少なくなるため、より若い世代に加入者が多いのもこの保険の特徴です。

参考:令和3年度『生命保険に関する全国実態調査』(生命保険文化センター)

就業不能保険のメリット

1. 働けなくなった時の経済的な不安を軽減できる

就業不能保険の最大のメリットとして、加入することによって万が一自身が働けない状況となった際の生活費の不安を払拭できるという点があります。特に一家の大黒柱である人の場合、長期で働けなくなった場合のリスクは非常に大きくなります。療養期間が長くなるほど生活費は日々の貯金だけでは賄えなくなってくるので、長期の療養に備えた就業不能保険は大きな安心につながるでしょう。

2. 公的保障でカバーできない部分の保障を受けられる

同じように病気や怪我になったときに使える公的保障として、障害年金や高額療養費制度、傷病手当金、労災などがあります。会社員・公務員であればこれらの保障がすべて受けられますが、一方で自営業・フリーランスの場合国民健康保険に加入していても傷病手当金や労災の保障は受けられません。また、傷病手当金は最大で1年6ヶ月間しか給付が受けられなかったり、保障額が充分でなかったりと公的保障は万能ではありません。病気や怪我で働けなくなった場合に公的保障でカバーできない部分を保障できるというのも就業不能保険のメリットです。


傷病手当金 障害年金 労災 高額療養費制度
会社員・公務員 あり 障害基礎年金+障害厚生年金 休業補償給付、療養補償給付など あり
自営業・フリーランス なし 障害基礎年金のみ なし あり

3. 医療保険でカバーできない部分の保障を受けられる

民間医療保険は主に病気や怪我になった際の入院・手術費用を保障してくれます。最近は通院にも適用できたりと範囲は広がってきていますが、基本的に療養のためにかかる費用のみに適用されます。また、病気や怪我になったとしても自宅療養の場合は保険金がおりない場合もあります。(新型コロナウイルスの流行により各保険会社で自宅療養の取扱いが変わってきていますので、詳しくは各保険会社に確認してください。)

療養のため長く会社を休んだ場合、入院費用は医療保険がおりたとしてもその間の家族の生活費などは保障されません。公的保障でカバーできない部分に加え、医療保険でカバーできない部分の保障を受けられるというのも就業不能保険のメリットです。

就業不能保険のデメリット

1. 支払い要件に該当するまでの期間が長い

就業不能保険は、商品によって支払い要件に該当するまでの期間が定められています(免責期間)。その期間は60日から120日程度と様々で、その期間を通じて「就業不能状態である」と認められないと給付を受けることができません。就業不能状態になってから4日目以降は、健康保険に入っている人であれば傷病手当金の申請を行うことができるので、就業不能保険の免責期間の間は公的保障の利用を検討しましょう。傷病手当金がもらえるのは最大で1年半なので、少なくとも就業不能保険の免責期間が過ぎるまでは公的保障を受けることができます。また、傷病手当金の受給を受けていたとしても、就業不能状態が続いていれば同時期に就業不能保険の給付金の受給も可能です。

自営業やフリーランスの場合は傷病手当金の受給ができないため、免責期間の間は主に貯金でしのぐ必要があります。なので自営業やフリーランスの人が就業不能保険に加入する場合は、免責期間がなるべく短い商品を選ぶことをおすすめします。

2. 精神疾患の場合は保障の対象とならない商品が多い

うつ病などの精神疾患で就業不能状態となった場合、就業不能保険の商品によっては保障の対象外となる点もデメリットとして注意が必要です。精神疾患での長期療養は身近に起こり得ますが、そこが保障の対象となっているかどうかはしっかり事前に確認する必要があります。近年では需要に応える形で精神疾患での就業不能状態もカバーする商品も出てきていますが、精神疾患での需給は「60日以上入院している」など支給要件が厳しいものが多いのが現状です。また、精神疾患もカバーする就業不能保険はその分保険料も高くなっています。自身に必要な保障と保険料のバランスを考えて検討するようにしましょう。

就業不能保険の必要性が高い人

自営業・フリーランスの人

前述の通り、自営業・フリーランスの人は傷病手当金などの公的保障を受けることができません。長期間働けなくなってしまうリスクは会社員の人よりも高いので、就業不能保険の必要性が高いと言えるでしょう。

住宅ローンの残高が大きい人

住宅ローンを返済中の人も、就業不能保険の必要性が高いと言えます。住宅ローンを組む際にはほとんどの人が団信(団体信用生命保険)と言って、ローンの返済者が死亡もしくは高度障害状態になった場合に住宅ローンの残高がなくなるという保険に入ることとなりますが、病気や怪我で働けなくなった場合には団信は適用されません。長期間働けなくなったとしても容赦なく住宅ローンの返済は続くため、ローンの返済や生活費に充てられる就業不能保険は大きな助けとなります。

扶養家族が多い人

扶養家族が多い人はそれだけ普段の生活費が大きくなるため、働けなくなってしまった際のリスクも大きくなります。特に一馬力で多くの扶養家族を抱えている人の場合はリスクが大きいため、就業不能保険に加入しリスクに備えておくのはよい選択肢でしょう。

貯蓄が少ない人・苦手な人

病気や怪我で働けなくなった際に、傷病手当金などを受給したとしても生活費や医療費などの負担が大きく貯蓄を切り崩すことになるというケースも多々あります。元々貯蓄が苦手である人や貯蓄が少ない人は、公的保障に追加して就業不能保険で備えておくのも一つの方法です。

就業不能保険に加入する際の注意点

1. 保険会社によって「就業不能状態」の判断は異なる

デメリットで述べた精神疾患での保障の有無もそうですが、就業不能保険は保険会社によって「就業不能状態」の判断は異なります。自分では「働けない状態だ」と思っていても、保険会社がそう判断してくれない場合は保険金を受け取ることができません。対象となる病気や入院の有無など、どのような状態を就業不能状態と呼ぶのかは加入前によく確認する必要があります。

2. 給付金が受け取れる期間も要確認

就業不能保険は商品によって、いつまで給付金が受け取れるのかという点も大きく異なります。就業不能状態が解消されるまではずっと給付金を受け取れる商品もあれば、就業不能状態が続いていたとしても3年、5年など給付金が受け取れる期間が決まっている商品もあります。加入してから「こんなはずではなかった」と思うことのないように、給付金の受給可能期間についても必ず確認しましょう。

就業不能保険独特のメリット・デメリットを理解しよう

就業不能保険について解説しました。死亡保険や医療保険と比べると、就業不能保険は比較的新しい保険であり、その分商品によっての差が大きくなっています。加入を検討する場合はメリット・デメリットを理解した上で、適切な商品選びを行いましょう。

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