2022/06/07

就業不能保険と収入保障保険の違いとは

就業不能保険と収入保障保険の違いについて解説します。2つの保険ともに収入の減少に備える保険ですが、保障内容は全く異なります。公的保障で同じような保障はあるのかという点から、2つの保険の対象者や保障内容の違い、加入するべき人、またさらに似ている所得補償保険についてまでわかりやすく解説しますので、参考にしてください。

就業不能保険とは

就業不能保険とは、病気や怪我などで長期間働けない状態となったときに働けない期間の収入を保障するための保険です。60日や180日など、保険商品によって定められている支払い対象外期間(免責期間)を超えて就業不能状態となった際に、保険金を毎月給料のような形で受け取ることができます。医療保険に入っていれば手術や入院で保険金がおりますが、その間働けずに減ってしまった給与については保障してくれません。長期入院や自宅療養となった際に本人を含めた家族の生活費を補うことができるため、近年最も注目されている保険商品の一つです。

生命保険文化センターが行った調査によると、就業不能保険に加入している人の割合は平成30年度の調査では12.0%でしたが、令和3年度の調査では18.4%と大幅に上がっています。

参考:令和3年度『生命保険に関する全国実態調査』(生命保険文化センター)

参考記事:『就業不能保険のメリット・デメリットとは。必要性から注意点まで

就業不能保険の注意点

1. 「働けない状態」の基準は商品ごとに異なる

就業不能保険を検討する場合、どのような状態を「働けない状態」と指すのかは商品によって異なりますのでしっかりと確認する必要があります。特に、精神疾患での療養については支払いの対象かどうかがわかれています。比較的最近発売された商品にはうつ病など精神疾患での療養についても対象とする商品が多くなっているようですが、就業不能状態の条件については加入前によく確認するようにしましょう。

2. 免責期間、給付金の受け取り期間についても要確認

就業不能状態の条件と同じく、支払い対象外期間(免責期間)や給付金の受け取り期間についても商品によって大きく異なります。特に支払い対象外期間については60日~180日と商品によってバラバラで、療養が始まってから支払いが始まるまでの期間に大きく差が出ますので注意が必要です。なるべく早く支払いを開始してほしい場合は早めの期間から受け取れる商品を選びましょう。後述する公的保障である傷病手当金を考慮して少し遅めからの支払いでも良いと考える場合は、あえて支払い開始までが長い商品を選んで少しでも保険料を安くするという手もあります。

給付金の受け取り期間についても、就業不能状態が解消されるまで支給が続く商品と、就業不能状態が続いていたとしても1年半など給付金の最長受け取り期間が決まっている商品があります。それぞれ条件をよく確認し、納得できる商品を選ぶようにしましょう。

収入保障保険とは

収入保障保険とは、被保険者が死亡または高度障害を負ってしまった際に、家族が保険金を毎月給与のように受け取ることができる「死亡保険」の一種です。就業不能保険は「働けなくなった本人を含む生活費を保障」するための保険ですが、収入保障保険は「遺族の生活費を保障」するための保険となります。同じ死亡保険の中でも、何歳で死亡したとしても同額の保険金を受け取れる定期保険などとは異なり、収入保障保険は年数が経過するにつれて受け取れる保険金の金額が減少していきます。この仕組みによって、定期保険よりも保険料をおさえながら保障を手厚くしたい期間(子どもが小さいうちなど)だけたくさんの保険金を受け取れるというメリットがあります。

参考記事:『収入保障保険のメリット・デメリットとは。必要性から注意点まで

収入保障保険の注意点

1. 基本的に保険料は掛け捨て

収入保障保険は解約返戻金や満期保険金はなく、保険料は掛け捨てタイプの保険となっています。貯蓄性はありませんが、掛け捨てで必要な保障に特化することで保険料を安くしています。

2. まとまった資金を準備するには向かない

収入保障保険の保険金の受け取り方は、給与のように毎月決まった金額を受け取る形が一般的です。そのため通常の死亡保険のように死亡時にまとまった金額を受け取ることはできず、葬式代などの大きな金額を用意するための保険としては向いていません。あくまで被保険者が死亡した後の一定期間、給与のように毎月一定額の保険金がもらえる保険として認識する必要があり、もし死亡一時金が必要だと思われる場合には通常の終身保険などを検討しましょう。(収入保障保険も商品によっては一括で保険金を受け取れるものもあります。)

3. 保険金には税金がかかる

就業不能保険で受け取った保険金には税金がかかりませんが、収入保障保険で年金形式で保険金を受け取る場合、相続税・所得税・住民税の対象となるため税金が発生します。(死亡時のみ。高度障害状態の場合は保険金を受け取っても税金の対象にはなりません。)初回に保険金を受け取った際に相続税がかかり、年金形式で受け取り始めた2年目から徐々に所得税・住民税の課税対象となる金額が増えていきます。

参考:相続等により取得した年金受給権に係る生命保険契約等に基づく年金の課税関係(国税庁)

所得補償保険とは

就業不能保険と似た保険で「所得補償保険」というものもあります。所得補償保険は就業不能保険と同じく病気や怪我で働けなくなった時の生活費を保障するための保険なのですが、就業不能保険は主に生命保険会社で扱われており、所得補償保険は主に損害保険会社で扱われています。

所得補償保険は就業不能保険よりも短い年数(1年や3年など)の保険期間で設定されていることが多く、更新のたびに保険料が再計算され上がっていきます。60歳までなど比較的長い期間保障を受けられる就業不能保険とは異なるため、より短期間で保障が必要な場合には所得補償保険も検討してみるとよいでしょう。


就業不能保険 所得補償保険
取扱保険会社 生命保険会社 損害保険会社
保険期間 50~70歳前後で満期を選べる 1~5年
免責期間 60日~180日など基本的に長期 7日間など基本的に短期

図で見る就業不能保険と収入保障保険の違い


就業不能保険 収入保障保険
保険の目的 自分や家族の生活費 遺された家族の生活費
いつ保険金が支払われるか 病気や怪我で長期間に渡り働けなくなったとき 死亡もしくは高度障害状態になったとき
生命保険料控除 介護医療保険料控除 一般生命保険料控除
保険金にかかる税金 非課税

課税対象

(高度障害状態の場合は非課税)

2つの保険の一番の違いは、保険の目的です。自分が働けなくなったときに自分も含めた家族の生活費を保障するための保険(就業保障保険)か、自分が死んだあとの家族の生活費を保障するための保険(収入保障保険)かという大きな違いがあります。

公的保険で同じ保障はあるのか

健康保険・厚生年金に加入している人の場合は、同じような保障をしてくれる制度を利用することができます。しかし公的保障は利用できる条件があり期限も定まっていることから、民間保険は必要ないと考えるのではなく、公的保障で足りない部分はないかを検討することが大切です。

就業不能保険と似た公的保障

・傷病手当金

・障害年金

収入保障保険と似た公的保障 ・遺族年金

傷病手当金

傷病手当金とは、以下の条件を満たす場合に標準報酬月額の3/2の金額の給付金が支給される制度です。

・仕事に起因しない病気や怪我で休んでいる

・仕事に就くことができない状態である

・4日以上連続して仕事を休んでいる

・休んでいる期間、会社からは給与の支払いがない

傷病手当金の最大支給期間は最長1年6ヶ月で、その期間が経過したあとも就業できない状態が続いていたとしても給付金を受け取ることはできません。

参考:傷病手当金(全国健康保険協会)

障害年金

障害年金とは、病気や怪我などで障害を負ったときに、認定された等級に応じて支給される年金のことです。就労不能状態になり、傷病手当金の給付期間を過ぎても働けない状態であれば、障害年金として年金を受け取ることができます。年金として給付金が受け取れるありがたい制度ですが、障害年金には障害の程度などに応じて有期と無期があり、場合によっては生活費を賄いきれない可能性があるため注意が必要です。

参考:障害年金(日本年金機構)

遺族年金

遺族年金とは、国民年金または厚生年金保険の被保険者が亡くなった際に遺族が受け取ることができる年金のことです。遺族年金には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」という種類があり、亡くなられた方の年金の加入状況などによって、いずれかまたは両方の年金が支給されます。遺族年金の要件や受給期間は細かく定められており、厚生年金を支払っていたとしても対象外となるケースもありますので注意が必要です。

参考:遺族年金(日本年金機構)

保険が必要なのはどのような人?

就業不能保険と収入保障保険について違いがわかったところで、実際に加入するべき人はどのような人でしょうか。

就業不能保険が必要な人

就業不能保険は働けなくなったときに自分を含めた家族の生活費を保障するための保険なので、傷病手当金をもらうことができない自営業・フリーランスの人や、扶養家族がいるが預貯金が少ない人(貯めるのが苦手な人)などに必要性が高くなります。会社員の人は傷病手当金の制度はありますが、傷病手当金の受給には期限があるため長期の療養に備えておきたいという人も検討すべき保険です。

収入保障保険が必要な人

収入保障保険は遺族の生活費を保障するための保険なので、扶養している家族が多い人や、遺族基礎年金のみで遺族厚生年金をもらうことができない自営業・フリーランスの人は必要性が高いと言えます。また、遺族年金は女性が受け取る場合と男性が受け取る場合で条件が異なるため、女性側が一家の家計を支えているという場合も、公的保障が少なくなってしまう可能性があるため収入保障保険の検討をおすすめします。(妻が死亡して夫が遺族厚生年金を受け取る場合、妻の死亡時に夫が55歳以上でないと受け取ることができません。)

2つの保険の違いを理解しよう

就業不能保険と収入保障保険の違いについて解説しました。年金形式で毎月保険金を受け取るという部分では同じですが、2つの保険の内容はまったく異なります。違いを理解して、自身に本当に必要な保障を選ぶようにしましょう。

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