2022/05/13

住宅ローン利用時に必要な保険とは?団信から火災保険、地震保険まで

住宅ローンを組む際に必要な保険について解説します。住宅を購入するとどんな保険が必要になるのか、細かく知らないという人は多いのではないでしょうか。必ず入っておくべき団信や火災保険の種類や保障内容から、それぞれの状況に応じて検討したい収入保障保険などの種類まで初心者にもわかりやすく解説しますので、参考にしてください。

住宅購入後に想定されるリスクとは

マイホームは人生で一番高い買い物とも言われており、住宅ローンを抱えることでその後の生活に不安を感じる人もいるのではないでしょうか。この記事では、住宅ローンを組む際に必要となる保険を大きく4つのリスクごとに分けて解説します。

1. 住宅の損害に対するリスク

まず挙げられるリスクとして、購入した住宅が火災、地震、落雷、爆発、風災、ひょう災、雪災、水災などの事象によって損害するというリスクがあります。どのような建物でも被害に遭う可能性はあるため、しっかり備えておく必要があります。住宅の損害に対するリスクに備える保険として、主に火災保険(家財保険)、地震保険があります。

住宅の損害に対するリスクに備える保険

火災保険

住宅の損害に対するリスクに備える保険としては主に火災保険があります。住宅ローンの担保となる建物が損害を被ってしまうと金融機関は担保を失ってしまうので、火災保険は住宅ローン利用時ほとんどの金融機関が加入を必須条件にしています。

火災保険で補償されるのは火災による損害のみでなく、落雷・爆発、風災・雹(ひょう)災、雪災、水災、建物の外部からの物体の衝突、水濡れ、労働争議、盗難、不測かつ突発的な事故(破損・汚損など)と多岐にわたります。思った以上に様々なケースで火災保険が適用されるので、住宅購入後に建物に関して何かが発生した場合は、まず火災保険での適用が可能かを見てみるとよいでしょう。

また、火災保険で補償されるのは建物・門、塀、物置、車庫、玄関ドア、窓、庭、冷暖房設備に限られ、家具・家電製品、衣類、自転車・原付にも補償をつけたい場合は、保険料を少し上げて家財保険にも一緒に入る必要があります。たいていの火災保険では加入時に「建物だけ」の補償にするか「建物と家財」にするかを選ぶ形になっています。

例えば火事が起こった際に建物の被害だけでなく家具も被害を受けたとすると、買いなおしにかなり大きな金額が必要になることもありますので、家財の補償をつけるかどうかはよく検討するようにしましょう。

地震保険

地震・噴火・津波を原因とする損害には、地震保険が必要になります。地震が多い日本においては地震の被害を不安に思う人も多いのではないでしょうか。地震保険は火災保険とは異なり、住宅ローン加入時に必須となっている金融機関は少ないです。しかし地震の被害が毎年報告されている日本では、必ず検討するべき保険と言えるでしょう。地震保険は単独での契約ができず必ず火災保険とのセットでの契約が必要となりますので、地震保険の契約を検討する場合は火災保険加入時に忘れずに伝えるようにしましょう。

損害保険料率算出機構によると、2020年度において全世帯のうち地震保険を契約している世帯は33.9%でした。年々上がってきているとはいえ、まだ地震保険に加入している世帯は半数以下というのが現状のようです。

参考:グラフで見る!地震保険統計速報(損害保険料率算出機構)

2. 死亡のリスク

住宅ローンの債務者が死亡してしまった場合、住宅ローンの支払いができなくなるだけでなく、その後の家族の生活費用が賄えなくなるという大きなリスクがあります。このリスクに備えるには、団信、生命保険、収入保障保険などの保険があります。

死亡のリスクに備える保険

団信(団体信用生命保険)

団信とは、住宅ローンの返済中に借主に万が一のことがあった場合に保険金によってローンの残債が弁済されるという保険です。ローンが弁済されるのは債務者が死亡した場合か、高度障害状態(病気や怪我などにより身体機能が重度に低下している状態)になってしまった場合です。支払いはローンの金利に含まれており、金利を少し上げることで特約をつけることも可能になります。特約をつけることで三大疾病や八大疾病と診断された時点で残債が弁済されるなど、特定の病気のリスクへの備えることもできます。

住宅ローンを扱っている金融機関では、多くの場合住宅ローンの契約時に団信の契約が必須となっています。つまり持病があるなど健康上の不安があり団信の契約ができないと、住宅ローンの契約ができなくなってしまうため注意が必要です。その場合は持病のある人でも入りやすいワイド団信を検討するか、団信の契約が必須ではないフラット35を検討するなどの対策をとりましょう。

団信と一般の生命保険はどちらも死亡のリスクに備えるという点では同じですが、内容としては以下のような違いがあります。既に契約している生命保険がある場合は、団信と契約の内容がかぶらないように見直す必要があります。


一般的な生命保険 団体信用生命保険
保険期間 契約期間中は保障が続く ローンを完済した時点で保険期間が終了する
保険料

・保険料は契約時から変わらないことが多い

・加入時の年齢に応じて保険料が変わることが多い

・支払い方法は選択できる

・残債額が減るにつれて保険料が下がる

・年齢に関係なく保険料は一律

・ローンの金利に保険料が含まれている

生命保険料控除 対象 対象外

収入保障保険

収入保障保険とは、契約者が死亡もしくは高度障害状態になった場合に、死亡保険金を年金形式(毎月受け取るタイプや、毎年受け取るタイプがある)で受け取れるという生命保険の種類の一つです。団信は住宅ローンが弁済されますが、その後の遺された家族の生活費は保障してくれません。自分に何かあった場合の家族の生活費に不安があるという人は、収入保障保険も検討してみるとよいでしょう。

参考記事:『収入保障保険のメリット・デメリットとは。必要性から注意点まで

3. 病気や怪我のリスク

債務者が病気や怪我で働けなくなってしまうリスクも存在します。企業の会社員の場合、病気や怪我で営業日連続4日以上働けなかった場合に健康保険から傷病手当金という手当を受給することができます。その他、病気や怪我のリスクに備える保険として医療保険や就業不能保険があります。また、最近の団信では特約を付けることで、死亡時のみだけでなく特定の病気の診断がおりた時点で住宅ローンの残債がなくなるという保障をつけることができる場合もあります。

病気や怪我のリスクに備える保険

医療保険

健康保険に入っている場合は病気や怪我で就業できなくなると傷病手当金が支給されますが、標準報酬月額の3分の2までという金額制限があり、期間も1年半までと定められています。また、団信の特約をつけることで三大疾病や八大疾病と診断された時点で保険金がおりるようにすることもできますが、団信はあくまで住宅ローンを弁済するのみで、治療費などは保険金がおりるわけではありません。

あらゆる病気や怪我に備えるには、医療保険が最適です。医療保険のタイプにもよりますが、通院や入院、手術などのたびに一時金を受け取れる商品もあります。また女性の場合は、女性特有の病気(子宮がん、子宮頸がんなど)にも保障が出るかを必ず確認するようにしましょう。医療保険は住宅ローンの利用の有無にかかわらず、早めに検討しておきたい保険です。

参考記事:『医療保険の種類徹底解説

就業不能保険

就業不能保険とは、病気や怪我の治療による療養によって働けない状態になった際の収入減少リスクに備えるための保険です。前述した「収入保障保険」は契約者ではなく遺された遺族のための保険ですが、「就業不能保険」は働けなくなった契約者本人のための保険です。

収入減少により住宅ローンが支払えなくなってしまうとせっかく手に入れたマイホームを手放さなければいけない可能性が出てきてしまいますが、就業不能保険に入っていることで働けない期間も毎月給料のように保険金を受け取ることができるため、安心して療養することができます。医療保険と似てはいますが医療保険は治療に対する保険となるため、治療期間の収入減少に対する保障はつきません。

近年各保険会社の就業不能保険の種類は大幅に増えており、加入者も増加している傾向にあります。特に会社員と比較して公的な保障が少ない自営業者や、住宅ローンの期間や金額が大きい人には検討の余地がある保険と言えるでしょう。

参考記事:『就業不能保険のメリット・デメリットとは。必要性から注意点まで

4. 老後のリスク

住宅ローンの返済期間が定年後も続く場合、老後の資金不足というリスクも考える必要があります。退職金の金額が年々下がっており、今後年金の受給開始年齢も上がっていくであろうことを考えると見逃せないリスクと言えます。老後のリスクに備える保険として、個人年金保険があります。

老後のリスクに備える保険

個人年金保険

個人年金保険は、その名の通り個人的な年金として保険金を受け取れるという保険です。近年は定年退職の年齢が上がってきてはいますが、60歳以降も雇用が継続されたとしても給与がかなり下がってしまうこともあります。さらに年金受給開始までに年数があると、その間の生活費や住宅ローンの返済には不安が残ることもあるでしょう。

個人年金保険にはまとめて保険金を受け取る一時金支給型と、毎月など定期的に受け取る年金支給型があり、自分にあった受け取り方を選択することができます。先のことだと思わずに早めから対策しておくことで、老後も安心して過ごすことができるようになるでしょう。

参考記事:『個人年金保険のメリット・デメリットとは

自分に必要な保障を考えよう

これまで紹介した保険についてまとめると以下のようになります。各々の状況により必要な保険は異なりますので、状況にあわせて過不足なく必要な保障を得られるようにしましょう。

保険の種類 どんなリスクに備える保険か どのような保障を受けられるか 住宅ローン契約時に必須であるか
火災保険 住宅が火災など地震以外の事象で損害を受けるリスク 損害を直すための保険金が受け取れる 必須
地震保険 住宅が地震や津波によって損害を受けるリスク 損害を直すための保険金が受け取れる 必須ではない
団信 契約者が死亡または高度障害状態になるリスク 住宅ローンの残債が弁済される 必須であることが多い
収入保障保険 契約者が死亡または高度障害状態になるリスク 遺された家族に対して年金形式で保険金が受け取れる 必須ではない
医療保険 契約者が病気や怪我になるリスク 治療にかかった費用に対して保険金が受け取れる 必須ではない
就業不能保険 契約者が病気や怪我になるリスク 契約者に対して毎月保険金が受け取れる 必須ではない
個人年金保険 契約者の老後の資金不足のリスク 年金形式で保険金が受け取れる 必須ではない
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