2022/04/12

不動産投資の10のリスクと回避するための4つのポイント

不動産投資のリスクと、リスクを回避するためのポイントについて解説します。不動産投資は独特のリスクが存在します。そのリスクの詳細から、リスクの種類に応じた成功するためのポイントまで初心者にもわかりやすく解説します。他の投資方法と比べて不動産投資のリスクは高いのか低いのかというところまで言及しますので、参考にしてください。

不動産投資とは

不動産投資とは、不動産物件を購入して第三者に貸し出し、家賃や売却益を利益として受け取る投資方法のことです。主にワンルームマンション、アパート、一軒家など実物の不動産を購入して大家となり貸し出す形の「現物不動産投資」のことを指します。本記事では、現物不動産投資を始めるにあたり知っておきたいリスクと、リスクを回避するためのポイントについて解説します。


参考記事:

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不動産投資のリスク

不動産投資の主なリスクについて解説します。避けられないリスクもあれば、事前に対策を行うことでリスクを下げることができることもありますので事前にしっかり確認しておきましょう。

1. 空室リスク

不動産投資の大きなリスクの一つが「空室リスク」です。空室期間が続いてしまうと単純に収入がなくなり返済の負担だけが増えていってしまいますので、できるだけ空室期間は作りたくないものです。空室期間を短くするために家賃を下げるのは有効な手段ではありますが、値下げは慎重に対応する必要があります。例えば月の家賃を5,000円下げるとすると、年間で6万円の収入が減ることになり、その後再度値上げを行うのは非常に難しいので年間6万円の減収が続いてしまいます。家賃の値下げを検討する場合は周辺の家賃相場をよく調べ、必要以上に下げることがないようにしたほうがよいでしょう。

2. 家賃滞納リスク

空室リスクと同じく避けられないリスクが、入居者の家賃滞納リスクです。口座にお金が入っていなかったなどの一時的な過失の場合はそれほど問題はありませんが、何度も家賃滞納を繰り返す入居者に当たってしまうと対応に時間がかかってしまいリスクがとても高いです。家賃滞納リスクを減らすためには保証人を付ける、保障会社を経由して入居者を審査してもらうなどの対応があります。しかし保証人をつけても実際家賃が滞納された場合はあまり意味がない場合が多く、オーナーの泣き寝入りになってしまうパターンが多いようです。入居者の審査段階でできるだけ厳しく審査を行い、家賃滞納リスクの低い人に入ってもらうよう努力するのが一番の対策と言えるでしょう。

このリスクを回避するには、サブリース契約を行うことで家賃滞納が起こった場合も家賃の〇%分が支払われるような契約を行うことが可能です。(前述の空室リスクもサブリース契約によりリスクの回避が可能です。)しかしサブリースの契約内容によってはオーナーの意向とは異なる運用を強要されたりする可能性もありますので、契約の内容については細部までよく確認するようにしましょう。

3. 修繕リスク

不動産投資は物件という形あるものに投資するので、物件の劣化による修繕リスクも存在します。例え新築の物件を購入したとしても数年後には修繕の必要が出てくる場合もあります。また中古の物件の場合は、見た目ではわからない水回りや配管の故障などで物件購入後すぐに修繕の必要が出てくることもあります。このリスクもある程度は避けられないので、収入の中からあらかじめ一定額を修繕積立金として積み立てておきましょう。目安としては賃料収入のだいたい3%を毎月積み立てておくと安心できると言われています。

4. 天災リスク

不動産投資ならではのリスクとして、天災リスクも外すことができません。主に地震・台風・洪水・火事などのリスクのことを指し、これらは避けられないので事前に対策をしておくことが重要です。地震・火災保険に入っておくことはもちろん、1981年に設定された新耐震基準を満たしていない建物は大地震での倒壊の危険が高いため、物件を探す際は1981年以前に建てられた物件はなるべく避けるようにしましょう。また、近年は台風や大雨による土砂災害の危険性も全国で高くなっているため、以下の参考サイトなどを確認しながら物件のある土地がどういう特徴があるのかをあらかじめ知っておきましょう。不動産業者は物件の不都合な点をすべて伝えてくれるかはわかりませんので、自分で調べてリスクに備えることが重要です。

参考:ハザードマップポータルサイト

5. 家賃下落リスク

購入した物件は年々古くなっていきますので、家賃下落リスクもあります。三井住友トラスト基礎研究所が2013年に発表した『経年劣化が住宅賃料に与える影響とその理由』によると、賃料は年率で約1%ずつ下落していき、10年経過で1割の下落、20年経過で2割の下落となる傾向があると発表されています。また、下落の段階は以下の3段階に分けることができ、新築からの最初の10年間が最も下落率が高く、築20年を超えると安定するという傾向があります(ワンルームタイプの物件の場合)。

1. 第一段階 築3~10年 年下落率 約1.7%

2. 第二段階 築11~20年 年下落率 約0.6%

3. 第三段階 築21年以降 年下落率 ほぼ横ばい

都心などはこの数字よりも下落率が低いというデータもあるようですが、家賃は年々下がっていく傾向がありますので下がった数字も見越したシミュレーションを事前に行うようにしましょう。

参考:経年劣化が住宅賃料に与える影響とその理由三井住友トラスト基礎研究所)

6. 不動産価格の下落リスク

年月とともに家賃が下落していくに従って、不動産価格自体も下落していくリスクもあります。現在、物件の価格は「収益還元法」と言って物件から見込める収益(家賃)から逆算して物件価格を算出する方式で決定されることが多くなっています。そのため、管理がしっかり行き届いていて人気の立地にあり、高い賃料を維持できている物件は不動産価格もあまり下落せず高水準をキープすることができます。不動産価格を大きく下落させないためには、建物全体も部屋も良好な管理状態にしておくことが賃料維持(=不動産価格維持)のために重要になります。

7. 金利上昇リスク

不動産投資を行うにあたって、多くの人が不動産投資ローンを組んで物件を購入することになります。現在は超低金利の時代ですが、今後返済が進むにつれて金利が高くなる可能性も多いにあります。変動金利でローンを組んだ場合は、金利上昇リスクも考えておくべきリスクの一つです。

金利については2016年1月より導入されたマイナス金利政策により現在も低金利の状況が継続しており、不動産投資ローンの借入で適用される金利の利率も低金利となっています。今の金利がずっと続くことはあまり考えられないので、金利分の資金は余裕を持って残しておきましょう。また、固定金利と変動金利にはそれぞれメリットがありますので、どちらを選ぶかは以下を参考に検討してみてください。

■固定金利のメリット

・返済期間中に金利が上昇しても関係なく、総返済額が増えることがない。

・返済額が変わらないので、収支管理がしやすい。

■変動金利のメリット

・固定金利よりも低い利率が設定されることが多い。

・超低金利時代が続く限り、固定金利より総返済額を抑えることができる。

8. 流動性リスク

流動性リスクとは、簡単に言うと「現金化しにくい」リスクのことです。不動産投資の売買には査定→申込→審査→引き渡しの流れで最低でも一ヶ月程度はかかってしまうので、現金化したいと思ったときにすぐに完了しないというリスクがあります。しかし流動性が低い不動産投資の中でも、立地の良い(駅近の物件など)であれば比較的売買しやすい傾向があるので、好立地の物件を購入することが流動性リスクの対策であると言えるでしょう。

9. 倒産リスク

倒産リスクとは、売主である不動産会社や管理を委託している管理会社が倒産してしまうリスクのことです。不動産業界の企業の約85%は従業員数が5人以下の小規模な企業となっており、今まで普通にやり取りしていたのにいきなり倒産してしまうということも起こり得ます。倒産リスクをゼロにすることはできませんが、業者を選ぶ際にはなるべく規模の大きな会社を選ぶこと、管理の内容などは業者任せにせず自身でもある程度把握しておくことなどが重要です。

もし不動産会社や賃貸管理会社が倒産してしまった場合は、代わりの会社を見つけることで対処することができます。オーナーが何か被害を被ることはありませんが、代わりの会社を探したり今までの引継ぎをする手間がかかりますので、なるべく最初から倒産リスクの少ない会社を選ぶようにしましょう。

10. 税務リスク

不動産投資を行う上で、税務は避けて通ることができません。固定資産税や不動産取得税、所得税や相続税など税務にかかわる業務が煩雑なこともリスクの一つと言えるでしょう。不動産投資はうまく行えば節税効果もある投資方法ですが、支払う分の税金はしっかり払わないと追徴課税や延滞金の支払いが発生してしまうこともありますので、制度や締め切りはきちんと把握しましょう。自分では自信がないという人は、税理士に相談することで税務を代わりに対応してもらうこともできます。

不動産投資のリスクを回避するためのポイント

ここからは、不動産投資のリスクを回避するための重要なポイントについて解説します。リスクを恐れて行動しないのではなく、リスクを下げる努力をしてうまく運用を行えるように準備することが大切です。

1. 物件の詳細を吟味する

購入を検討する場合は物件の詳細まで吟味すること、内見を行い設備や周辺環境まで確認して判断することで不動産投資における様々なリスクを減らすことができます。入居者の気持ちになって物件を見てみることで、起こりえるトラブルを未然に防ぐことができたり、足りない設備が見えてきたりすることもあります。業者におすすめされた物件を鵜呑みにして購入するのではなく、自分の足で見て判断することが成功への第一歩であると言えるでしょう。

2. 事前に収益のシミュレーションを行う

不動産投資を成功に導くために重要なポイントの一つは「事前のシミュレーション」です。不動産投資は基本的に長期間継続して行う投資方法ですので、数年分だけのシミュレーションや、家賃下落率や不動産価格下落率を甘く見積もっているシミュレーションではあまり意味がありません。厳しめのシミュレーションを行うことで、起こり得るリスクに対して余裕を持って準備することができます。

3. 自己資金を残しておく

繰り上げ返済を過剰に行ったり、不動産投資以外にも投資に資金を投入しすぎているなどで手元に現金が無い状態だと、起こり得るリスクに対して柔軟に対応することができません。税金や諸費用など不動産投資では何かと予定外の資金が必要になることもあるので、自己資金は常に残しておくようにしましょう。

4. 信頼できるパートナー(管理会社、税理士等)を見つける

不動産投資において、信頼できる並走パートナーを見つけられるかどうかも成功へのポイントの一つです。真に親身になってくれる業者というのは、物件オーナーにとって不都合な事実でも包み隠さず教えてくれます。「都合の良いことばかり言ってくる」「グレーなことを勧めてくる」など少しでも信用できないと思ったことがあれば、その業者にお願いするのはやめておきましょう。不動産投資の場合契約後も長い付き合いになることが多いので、レスポンスが早く信頼できる担当者を見つけることが大切です。

不動産投資のリスクは高いのか?

ハイリスク・ハイリターンと言われる株式投資などの他の投資方法と比べて、不動産投資はよくミドルリスク・ミドルリターンと表現されます。動く金額としてはレバレッジを効かせることで他の投資方法よりも大きくなるため利益も大きい傾向はあるのですが、流動性が低く現金化が難しいので短期では利益を出すのが難しいというのが不動産投資の特徴です。一方、株式投資は株価変動が激しく変動幅も大きいので、リスクが大きい分短期的に大きな利益を狙いやすいという特徴があります。どちらの方がリスクが高いのかというのは人によるところが大きいですが、きちんと手順を踏めば不動産投資はリスク低く安定した利益を得ることが可能な投資方法です。自己資金がある程度必要であったり、そもそもローンに通らないことがあるなど不動産投資はチャレンジできる人が限られる投資方法ではありますが、チャレンジできる人にとっては有益な投資方法であると言えるでしょう。

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