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2022/06/02

私的年金の種類とは。企業型・個人型の違いからそれぞれの特徴まで解説

私的年金の種類について解説します。公的年金だけでは老後の生活資金をすべて賄うことは難しいため、私的年金を利用して老後資金を準備する人が増えています。そもそもの年金の種類から、iDeCoや確定拠出年金など私的年金の種類まで紛らわしい用語をわかりやすく解説しますので、参考にしてください。

年金制度とは

年金制度とは、現役時代から資金を積み立てることで老後になった際に月々年金として受け取れるという制度です。日本の年金は、大きくわけると社会保障の観点から国が行う「公的年金」と、公的年金の上乗せの給付として企業や個人が加入する「私的年金」の2種類があり、その中でさらに種類がわかれています。年金制度は日本国民全ての人が加入を義務づけられているもので、自営業者などが加入する国民年金が1階部分、会社員が加入する厚生年金が2階部分、それにプラスして企業や個人が任意で加入できる私的年金が3階部分と言われているため、日本の年金制度は3階建ての制度と呼ばれています。

厚生労働省のデータによると、公的年金である厚生年金保険の平均受給金額は月146,162円となっており、国民年金の場合は月65,000円ほどとなっています。この年金額は令和元年度の平均ですが、今後この金額が減ったり受給開始年齢がさらに繰り上がったりといったことは充分考えられるため、公的年金のみでは老後の生活に必要なお金が足りなくなるリスクがあります。そのリスクに備えるために私的年金は重要であり、近年注目度も上がってきています。この記事では、日本の年金制度の3階部分にあたる私的年金について解説します。

参考:令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況(厚生労働省)

私的年金の種類

私的年金は、公的年金とは異なり民間の保険会社など政府以外の組織が運営しており、「企業が自社の福利厚生の一環として実施するもの」と「個人が任意で加入するもの」があります。名前が似ていて紛らわしいものもありますが、それぞれ内容が異なりますのでしっかり理解するようにしましょう。

1. 企業が福利厚生の一環として実施する私的年金

企業型確定拠出年金

企業型確定拠出年金とは、企業が掛金を拠出し、従業員が運用するという私的年金制度です。掛金は基本的に会社が負担しますが、加入者本人により上乗せできるケース(マッチング拠出)もあります。企業型確定拠出年金はすべての企業で導入しているわけではなく、確定拠出年金制度を導入している会社に入らないかぎり加入対象とはなりません。この企業型確定拠出年金を個人で行えるようにしたのが後述するiDeCoであり、企業型確定拠出年金とiDeCoは掛金の拠出者や掛金の上限などに違いがあります。

参考:

確定拠出年金制度の概要(厚生労働省)

確定拠出年金(企業型)の統計概況(生命保険協会)

確定給付企業年金

確定給付企業年金とは、企業が掛金を拠出を行い、主に企業が主体となって運用を行う私的年金制度です。企業型確定拠出年金との大きな違いは運用主体が企業側にあるという点と、将来受け取れる年金額があらかじめ確定しているという点です。もし運用結果が悪く年金額が足りなくなった場合は企業が不足分を補填しないといけないため、企業にとっては確定給付企業年金は責任の重い制度と言えます。

参考:

確定給付企業年金制度(厚生労働省)

企業年金(確定給付型)の受託概況(生命保険協会)

厚生年金基金

厚生年金基金とは、国に代わって会社が基金を設立して厚生年金の給付の一部を代行しつつ、企業独自の年金を加算して給付するという制度のことです。確定給付企業年金の種類の一つとして1966年に創設され、一時は厚生年金被保険者の約3分の1の人が加入するまでになりましたが、法改正に伴い2014年4月に廃止されています。厚生年金基金制度を利用していた企業は、基金を解散して他の企業年金制度に移行することが求められました。

参考:厚生年金基金制度(厚生労働省)

自社年金

企業型確定拠出年金、確定給付企業年金、厚生年金基金を合わせて企業年金と言い、制度を導入している企業の従業員が利用することができますが、それ以外にも、他の企業が介入せず自社ですべての管理運営を行う自社年金制度を導入している企業もあります。他の企業年金とは異なり税制上の優遇措置はありませんが、自社で自由に制度設計ができるというメリットもあります。自社年金に関しては企業によって制度や運用方針もまったく異なりますので、自社年金を利用する場合は制度をよく理解してから利用するようにしましょう。

2. 個人が任意で加入する私的年金

iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)とは、2001年にスタートした私的年金制度です。個人の任意で加入し、毎月職業に応じた掛金の上限以内の金額を積み立てて運用を行い、老後に年金として受け取ります。iDeCoの利用者は年々増えてきており、平成28年度には43.1万人だった加入者が令和3年には201.5万人にまで増加しています。企業型の私的年金制度がない企業に勤めている人はもちろん、企業型確定拠出年金制度を利用している人も条件次第でiDeCoにも加入することができます。

参考記事:

iDeCoの始め方は?口座開設の方法やおすすめ金融機関まで解説

iDeCoのメリットとデメリット・注意点

国民年金基金

国民年金基金とは、自営業者・フリーランスなどの第一号被保険者を対象として、国民年金に上乗せして加入できる年金制度のことで、厚生年金加入者との年金額の差を解消するために創設された年金制度です。国民年金基金に個人で加入することで、年金制度の1階部分しかない第一号被保険者の人でも2階建てにすることができます。(第一号被保険者にとっては2階部分の年金制度とも言えるので、国民年金基金は3階部分の私的年金には該当しないとすることもあります)。加入は口数制で、将来受け取る年金額や給付の型は自分で選択することができます。

参考:国民年金基金とは?(国民年金基金連合会)

個人年金保険

個人年金保険とは個人で加入する任意の保険で、一定期間保険料を払い込むことで将来決まった時期に年金形式で保険金を受け取ることができます。運営を行うのはその商品を販売している保険会社で、確定給付企業年金と同じく保険料の支払いが滞ったりしない限り、契約時に設定した金額通りの年金を受け取ることができます。※ただし変額個人年金の場合は運用実績に応じて受け取る年金額が増減します。

参考記事:『 個人年金保険のメリット・デメリットとは

それぞれの私的年金の違い

私的年金制度の中で、すでに終了している厚生年金基金以外の制度の特徴は以下の通りです。


企業型確定拠出年金 確定給付企業年金 自社年金 iDeCo 国民年金基金 個人年金保険
運営主体 企業型年金規約の承認を受けた企業 企業 企業 国民年金基金連合会 国民年金基金 保険会社
加入対象者 実施企業に勤務する従業員 実施企業に勤務する従業員 実施企業に勤務する従業員 日本に住む20歳以上の人 日本に住む20歳以上の自営業者とその家族など 20歳以上60歳未満の人
運用主体 従業員 企業 企業 加入者

加入者

加入者
掛金の拠出

企業

(規約に定めた場合は従業員も追加で拠出可能)

企業 企業 加入者 加入者 加入者
掛金(保険料) 非課税 非課税 課税 非課税 非課税 保険料の一部が所得控除の対象となる

私的年金の種類について理解しよう

私的年金の種類について解説しました。私的年金には主に企業が準備する制度と、自身で加入する制度があり、そのそれぞれに特徴があります。公的年金だけでは老後の必要資金を賄えないと言われている現在、貯蓄だけでなく私的年金制度を利用して早くから準備を始める必要があります。私的年金の種類を理解して、自分に合った制度を活用していきましょう。

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