2022/03/14

iDeCoは2022年の改正でどう変わる?

2022年のiDeCoの改正ポイントについて解説します。私的年金を作るための制度として注目されており利用者も急増しているiDeCoですが、2022年には3つの大きな改正が予定されており、より使いやすい制度へと生まれ変わる予定です。受取開始年齢の変更など3つの改正ポイントをわかりやすく解説しますので、参考にしてください。

iDeCoとは

iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)とは、公的年金の不足を補う私的年金として2001年にスタートした制度です。毎月自分で決めた金額の掛金を積み立てて運用し、60歳以降に年金として受け取ります。掛金の積立時・運用時・受取時に節税効果も期待できるため、老後資金の不足が叫ばれている昨今、老後の備えの選択肢として注目されています。

iDeCoの利用者は年々増えてきており、平成28年度には43.1万人だった加入者が令和3年には201.5万人にまで増加しています。

参考:iDeCoの現状(iDeCo公式HP)

参考記事:

iDeCoの始め方は?口座開設の方法やおすすめ金融機関まで解説

iDeCoのメリットとデメリット・注意点


2022年の法改正、3つのポイント

iDeCoは法改正により随時制度が変更になっており、今回も2020年5月に成立した法律が2022年に順次施行されます。2022年に変更になるのは大きく分けて以下の3つのポイントです。

1. 2022年4月 受取開始可能年齢が75歳まで拡大

現在の制度では、60歳まで積み立てたiDeCoの受け取り開始年齢は60歳から70歳になるまでの間で自由に選択することができます。これが2022年4月1日からは受け取り開始の上限年齢が75歳になるまでに引き上げられます。2022年4月1日から公的年金の繰り下げ受給が75歳までになることにあわせてiDeCoも変更することとなり、これにより非課税で運用できる期間が5年増えることになります。

70歳以降も働いていてiDeCoの受給を急ぐ必要がない人や、なるべく長期間非課税投資を継続したいと考えている人は、出口戦略の一つとして75歳からの受け取りも検討してみましょう。

受給開始年齢についての注意点

75歳まで受給開始年齢が伸びたことによる注意点として、投資を継続すると口座管理手数料などの手数料はかかり続けるということと、受給開始を遅らせたからといって、受給額が増えるとは限らない(運用次第である)という点が挙げられます。公的年金の場合は、繰り下げ受給をすると一ヶ月遅らせる毎に0.7%の受給額が確実に増えますが(2022年現在)、iDeCoの場合は確実に増えるというわけではありません。そのため、繰り下げ受給を検討する場合はまず公的年金から検討することをおすすめします。

参考記事:『iDeCoに発生する手数料とは?最安の金融機関・証券会社も紹介

2. 2022年5月 加入可能年齢が65歳まで拡大

2つ目の変更点として、2022年5月1日よりiDeCoに加入できる年齢が65歳まで拡大されます。これまでiDeCoに加入できるのは、基本的に60歳未満の人のみでした。現代社会では60歳以降も働き続ける人が増えていることを受けて、より長期間運用ができるようになるということです。

この変更により、60歳以降もある程度の収入を得ている人は継続して節税効果を得ることができます。また、50歳からiDeCoに加入した人などは積み立て期間が10年→15年に延びるため、運用によっては資産が大きく増える可能性もあります。

ただし、60歳以上で加入する場合には以下の条件がありますので誰でも加入できるというわけではありません。

60歳以上でも加入できる人

60歳以上でも加入できるのは、国民年金の加入者です。国民年金の加入者には第一号被保険者から第三号被保険者までが以下のように分かれています。

・第一号被保険者…自営業やフリーランス

・第二号被保険者…会社員・公務員など厚生年金保険の加入者

・第三号被保険者…第二号被保険者に扶養される主婦(夫)

このうち第二号被保険者の場合は、60歳以上でも変わらず厚生年金に加入できる程度に働き続けていれば国民年金にも加入していることになるので継続してiDeCoに加入することができます。第一号・第三号被保険者の場合は、任意加入被保険者(老齢基礎年金の受給資格を満たしていない、もしくは老齢基礎年金を満額受給できない場合に年金額の増額のために加入継続を希望する人)として国民年金に継続して加入していれば、iDeCoにも継続して加入することができます。

参考:任意加入制度(日本年金機構)

60歳以降加入できない人

反対に以下のような人は60歳以降iDeCoに加入することができないため、今まで通りiDeCoの積み立て期間は60歳までとなります。

・60歳以降も働いているが、勤務時間が少なく厚生年金に加入できない人

・国民年金の加入年数が40年に達していて、任意加入ができない人

・公的年金を繰り上げて60歳から受給している人(年金を受け取りながらiDeCoに加入することができないため)

3. 2022年10月 企業型確定拠出年金とiDeCoの同時加入要件が緩和

3つ目の変更点として、2022年10月より企業型確定拠出年金(企業型DC)とiDeCoの同時加入がしやすくなります。実は現状でも企業型確定拠出年金とiDeCoの同時加入は認められているのですが、実際はほとんどの人が同時加入していません。なぜなら同時加入を行うにはそれを認める労使合意に基づく規約の定めが必要であるという点が大きなハードルになっていたからです。

しかし2022年10月より、企業の規約の定め等が必要なく本人の意思のみで企業型確定拠出年金とiDeCoの同時加入が可能になることとなりました。これは今まで企業型確定拠出年金があるためiDeCoの加入を諦めていた人にとっては大きなポイントであり、これによりiDeCoの加入者がさらに加速することが予想されます。

企業型確定拠出年金とiDeCoを併用する場合は、月額55,000円から企業型確定拠出年金の掛金額を引いた残りの範囲でiDeCoの掛金を決めることができます(併用する場合のiDeCoの掛金上限額は20,000円)。また、企業型確定拠出年金に加えてマッチング拠出も行っている場合はマッチング拠出を続けるか、iDeCoに加入するかを選ぶ必要があります。マッチング拠出とiDeCo同時加入どちらを選ぶべきかについては個人によって違いがありますが、マッチング拠出の場合は口座管理手数料などの手数料がかからないため諸費用は抑えられる可能性がありますが、選べる商品の選択肢はiDeCoの方が断然多いことが多いです。自身の状況を見ながら、どちらの制度が自分に向いているかを決めましょう。

※企業型確定拠出年金に加えて厚生年金基金など他の年金制度も活用している従業員の場合は限度額が異なりますのでよく確認してください。

参考:2022年からiDeCoはどう変わる?(iDeCo公式HP)

企業型確定拠出年金とは

企業型確定拠出年金とは、企業が掛金を毎月積み立て従業員が自ら資産の運用を行う制度のことで、2020年時点で約750万人が利用しています。これまでの企業年金制度は、基本的に会社側が資産の運用までを行う仕組みとなっていました。しかし企業型確定拠出年金の場合は掛金は企業が負担しますが、運用商品の選択や配分などは従業員自ら決定するため、運用の結果は従業員の選択次第となります。企業型確定拠出年金に加入するかどうかは従業員が選択できる企業と、入社したら自動的に加入する企業とがあります。

マッチング拠出とは

企業型確定拠出年金制度を採用している企業の中で、企業が出す掛金だけでなくさらに従業員個人でも掛金を拠出できるようにしたのがマッチング拠出です。マッチング拠出で従業員が拠出する掛金はiDeCoと同じく全額所得控除の対象となるため、企業が出す掛金にプラスしてさらに効率的に資産運用を進めることができます。

※iDeCoと同じく企業型確定拠出年金やマッチング拠出で積み立てた金額は基本的には60歳まで引き出すことができません。

2022年により使いやすく生まれ変わるiDeCo

2022年に施行されるiDeCoの制度変更について解説しました。この改正により、より多くの人が、より多くの選択肢の中からiDeCoを活用できるようになります。改正の内容を正しく理解して、自身の老後資金の形成に役立てましょう。

※iDeCo加入時に提出が必要な「事業主証明書」について、2022年10月より提出不要になるという案が出ていましたが、2022年2月1日現在そのようなアナウンスはされていません。その代わり新たに公式HPには「2024年12月以降廃止する方向で検討を進めている」との情報が記載されました。担当者に事業主証明書への記載をお願いするのは手間ではありますが、まだしばらくは廃止されないようですのでiDeCo加入時は忘れずに依頼するようにしましょう。

参考:事業主様へのお知らせ(iDeCo公式HP)

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