2022/04/27

不動産投資ローンと住宅ローンの違いとは。金利の違いから融資金額まで

不動産投資ローンと住宅ローンの違いについて解説します。この2つのローンは住宅を借りるためのローンと言う意味では似ていますが、全く異なる融資制度です。金利の違いから審査の内容、投資用物件と自宅ならどちらを先に買うべきかという点まで初心者にもわかりやすく解説しますので、参考にしてください。

不動産投資ローンとは

不動産投資ローンとは、不動産投資のために金融機関から受けることができるローンの名称です。不動産投資ローンには主に個人投資家が利用するアパートローンと、個人投資家から事業主までより投資規模の大きい人が利用するプロパーローンがあります。通常個人投資家の場合アパートローンを利用することになりますので、本記事では不動産投資ローン=アパートローンとして解説します。

参考記事:『【初心者向け】不動産投資ローンとは。種類や組み方、手順や審査基準まで

住宅ローンとは

住宅ローンとは、自分が住むための住宅を買ったり改築したりするために金融機関から受けることができるローンの名称です。原則として、契約者本人や家族が居住するための住宅を購入する費用として活用することができ、「人に貸すための物件」や「セカンドハウス」の購入には利用することができません。

参考記事:『住宅ローンの種類をわかりやすく解説

不動産投資ローンと住宅ローンの違い

借入の目的

不動産投資ローンと住宅ローンの一番大きな違いは、融資の対象になる物件の借入目的の違いです。不動産投資ローンでは購入した物件を他人に貸して家賃収入を得ることを目的にしますが、住宅ローンでは自宅として借主が住むために物件購入に不足している金額分をローンとして借り入れることを目的としています。

返済原資

不動産投資ローンと住宅ローンでは、返済の原資も異なります。住宅ローンの返済原資は、借主の毎月の給与収入です。あくまで住宅という個人の消費にかかわるローンであるため、返済原資の考え方は他の個人向けローンと基本的には変わりません。

一方で不動産投資ローンの場合、返済原資は収益用不動産から得られる毎月の家賃収入となります。個人投資家であっても、賃貸経営という事業を行うことが前提となっているということです。そのため、ローンの審査の際は借主の属性はもちろんのこと、購入予定の不動産の収益性も細かくチェックされます。いくら本人の属性が高くても、購入する不動産の家賃収入が期待できないと金融機関が判断した場合は融資も通りづらく、通ったとしても条件が厳しくなります。

融資金額

融資できる金額の上限にも違いがあります。不動産投資では借主の年収などに加えて家賃収入分も加算されるため、住宅ローンよりも融資金額の上限が高くなります。個人に対する融資なのか、事業を行う投資家に対する融資なのかという違いが融資金額の差になっています。

一般的に住宅ローンの場合には年収に対して5倍~8倍程度が融資の上限と言われていますが、不動産投資ローンの場合は年収の7倍~10倍程度、事業規模によっては15倍~20倍程度の融資も可能と言われています。

融資の金利

住宅ローンと不動産投資ローンでは、融資金額だけでなく融資の金利についても違いがあります。住宅ローンは、給与収入が返済原資となるため勤続が続く限りは大きな返済リスクはなく、貸し倒れのリスクが低いため不動産投資ローンと比べると金利が低くなっています。(0.5%~2%程度)一方、不動産投資ローンは融資金額が大きく、返済原資となる家賃収入も常に一定とは限らないため貸し倒れリスクが高く、住宅ローンと比べると金利が高くなっています。(1.5~4%程度)

しかし、不動産投資ローンでも例えば東京23区や横浜などの大都市圏のワンルームマンションであれば比較的リスクが小さいと判断され、1%~2%程度の低金利で融資が受けられる場合もあります。不動産投資ローンは金利が高めであるとは言え、その実情は物件によってだいぶ異なりますので物件の選定が何より重要であると言えるでしょう。

融資審査の内容

審査時の内容にも2つのローンは違いがあります。住宅ローンにおいては個人の属性が主な融資審査の基準となりますが、不動産投資ローンでは個人の属性に加えて購入する物件の収益性も審査対象となります。不動産投資ローンでは個人の属性では問題がなかったとしても、購入する物件の収益性が見込めないと判断されれば融資が通らない可能性も大いにありますので注意しましょう。また、住宅ローンも不動産投資ローンも審査の基準に関しては金融機関によって異なりますので、一つの金融機関で審査に通らなかったとしても別の金融機関では通る可能性があります。一つの金融機関に断られたからと言って諦めず、他の金融機関にも相談するようにしましょう。

契約者の年齢制限

住宅ローンと不動産投資ローンは両方とも20歳以上の人が申し込むことができます。申し込める下限の年齢は同じですが、上限の年齢制限には違いがあります。住宅ローンの場合、借主が生きている間に完済することが前提となっているため申込時や完済時の年齢上限が決まっていることが多いです(申込時70歳未満、完済時80歳未満など)。一方不動産投資ローンの場合、借主がもし死亡した後も家賃収入は継続して入ってくるため、通常は物件を相続した人に残債を払ってもらうことができます。そのため借主が70歳以上の高齢でも、法定の相続人を連帯保証人とするなどの条件をクリアすることで申込が可能となっている金融機関もあります。

※金融機関によってはそれより低い年齢までに制限している場合もありますので、融資を検討する際はよく確認しましょう。(例:オリックス銀行不動産投資ローン→借入時年齢が55歳未満まで)

名義

法人名義でローンを組むことが可能かどうかも、住宅ローンと不動産投資ローンで異なります。自身の住む物件を購入することを前提とする住宅ローンでは法人名義で契約することはできませんが、物件を貸して家賃を得るという「賃貸事業」を行うことを前提とする不動産投資ローンの場合は、法人名義で契約を行うことが可能です。

法人名義で不動産投資を行うメリットは主に以下の3点です。

1. 融資の条件が有利になることがある(限度額が上がるなど)

2. 経費として使える範囲が広がる

3. 個人の所得税・住民税と比べると法人税の方が安く、節税になる(借主と物件によります)

1室だけでなくアパート一棟などどんどん不動産投資の規模を大きくしていきたい場合には、法人として契約することも検討してみましょう。

団体信用生命保険への加入

団体信用生命保険(団信)とは、借主がローン支払い期間中に死亡、もしくは特定の高度障害などになった場合、金融機関へのローン支払いを弁済するという保険制度です。住宅ローンの場合、フラット35などの一部を除き団信への加入が必須となっています。一方、不動産投資ローンでは借主に万が一のことがあったとしても家賃収入は継続してあるため融資の返済は可能と考えられ、団信への加入は任意となっていることが多いです。しかし金融機関によっては不動産投資ローンでも団信への加入を義務づけているところもあります。団信は残された家族への生命保険の役割も果たしますので、加入する場合は特約も含めて条件をよく確認するようにしましょう。

住宅ローンで不動産投資用の物件は購入できる?

なるべく低い金利で融資を受けたいと考えた時に、低金利で借りられる住宅ローンは魅力的です。しかし住宅ローンは自身が住む家を購入するために用意された特別な融資システムであり、不動産投資には住宅ローンを利用することはできません。もし投資用物件を住宅ローンで購入し、後からその事実が発覚した場合、融資の一括返済を求められるだけでなく詐欺罪で刑事告訴される可能性もあります。不動産投資で住宅ローンを利用するのは、絶対にやめましょう。

ただ、実は不動産投資に住宅ローンの利用が認められるケースというのもあります。それは建物の中に本人が住むスペースと賃貸用のスペースが共存している賃貸併用住宅を購入する場合です。本人居住用の床面積が全体の50%以上を占めている建物にのみ、住宅ローンを適用できることになっています。かなり特殊な物件となりますし、大きく収益をあげていくには向いていないですがそんなパターンも可能だということは知っておきましょう。

自宅と投資用物件ならどちらを先に買うべき?

不動産投資に興味がある、でも将来的に自分の家も購入したい、と考えている人の場合、どちらのローンを先に組んだ方が良いのか迷う人もいるでしょう。そのような場合は、基本的には不動産投資ローンを先に組み、その後住宅ローンを組む順番がおすすめです。なぜなら住宅ローンよりも不動産投資ローンの方が審査のハードルが高く、もし住宅ローンの残債が残っている状態だとその分不動産投資ローンの融資条件が悪くなる可能性があるからです。また、不動産投資ローンを先に組んでいれば、物件から得られる収益も収入と判断され住宅ローンに有利に働く可能性があります。そのため、もし両方のローンを利用する予定がある場合は住宅ローンよりも不動産投資ローンを先に組んだ方がメリットが多いと言えるでしょう。

しかし、不動産投資ローンを先に組んだ場合は後から組む住宅ローンの限度額に少なからず影響を与えます。また、先に始めた不動産投資の運用がうまくいっていない場合、住宅ローンにも悪い影響を及ぼす可能性もあります。いずれにせよ物件の選定は慎重に行い、余裕のある返済計画を立てるようにしましょう。

参考記事:『不動産投資とマイホーム購入はどちらを先にするべきか。メリット・デメリットを比較

2つの制度の違いを理解しよう

住宅ローンと不動産投資ローンの違いについて解説しました。2つの制度には金利や審査内容などに大きな違いがありますが、金融機関によって細かな違いもあります。利用を検討する場合は各金融機関の情報をよく確認するようにしましょう。

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