2022/06/06
確定拠出年金(401k)とは? 個人型(iDeCo)と企業型(DC)の違いを解説
確定拠出年金(401K)の個人型(iDeCo)と企業型(DC)の違いについて解説します。確定拠出年金の特徴から、似たような制度である確定給付企業年金や退職金との違い、個人型確定拠出年金(iDeCo)と企業型確定拠出年金(DC)の併用についてまでわかりやすく解説しますので、参考にしてください。
確定拠出年金とは
確定拠出年金(401k)とは、個人や企業が自主的に掛金を積み立てる制度で、毎月拠出された一定の掛金とその運用益の合計額で将来もらえる給付金の金額が決定します。国民年金・厚生年金などの公的年金に対して私的年金と呼ばれています。401kという呼び方は米国発祥で、1978年に一定の要件を満たす積み立て貯蓄について課税の繰り延べが認められた際、この改正された条項が401条(k)項であったことから、この要件を満たした積み立て制度は401(k)プランと呼ばれるようになりました。日本の確定拠出年金はこの米国の401kプランをモデルとしていることから、確定拠出年金のことを「日本版401k」と呼ぶようになりました。
確定拠出年金を利用すると、以下の3種類の給付を受けることができます。
1. 老齢給付金:原則として60歳から年金または一時金として支給
2. 障害給付金:高度障害状態になった際に、年金または一時金として支給
3. 死亡一時金:死亡した際に一時金として支給
確定拠出年金は拠出した掛金が所得税・住民税の所得控除の対象となり、運用を通じて出た利益も非課税となることから税制優遇メリットが大きい制度です。一方、選んだ商品の運用結果次第では元本割れの可能性があり、原則60歳までは解約不可で資産を引き出すことができないなどの注意点もあります。
企業型確定拠出年金(DC)とは
企業型確定拠出年金とは、企業が掛金を拠出し、従業員が運用するという私的年金制度です。掛金は基本的に会社が負担しますが、加入者本人により上乗せできるケース(マッチング拠出)もあります。企業型確定拠出年金はすべての企業で導入しているわけではなく、確定拠出年金制度を導入している会社に入らないかぎり加入対象とはなりません。
確定拠出年金制度を導入している企業は2021年3月末時点で39,081ありますが、導入している企業の従業員だとしても確定拠出年金へ必ず加入しなくてはいけない企業と、任意で選べる企業があります。企業型確定拠出年金制度を導入しているけれど任意で加入しなかった従業員に対しては代替給付を行う必要があり、多くの企業では前払い退職金制度を設けています。
企業型確定拠出年金と退職金の違い
老後のための資金を準備するという意味では退職金も企業型確定拠出年金と似ていますが、確定拠出年金と退職金は以下のような違いがあります。
企業型確定拠出年金 | 退職金 | |
加入するかどうか | 入社時に必ず加入する企業と、自分の意志で加入するかを決める企業がある |
一般的に、入社した人はすべて退職金の対象となる(対象が正社員だけの場合もある) |
掛金の運用 | 運用方針や商品は従業員が決める | 運用方針や商品は会社が決める |
給付される金額 | 掛金と運用実績によって異なる | あらかじめ規定で定められている |
給付されるタイミング | 60歳以降 | 定年以外の退職でも支給される(会社の規定によって勤続年数が一定年数以上で支給されることが多い) |
給付金の受け取り方法 | 一時金もしくは年金として受け取る | 退職時にまとめて受け取る |
税制優遇 |
掛金:所得控除 運用益:非課税 受給時:退職所得控除もしくは公的年金控除 |
受給時:退職所得控除 |
転職した場合 | 転職先に資産を移行できる | 転職先に資産を移行することはできない |
企業型確定拠出年金は運用方針や商品を自分で決定するのに対し、退職金は会社が運用方針を決め、もらえる金額も勤続年数に応じてあらかじめ決定されています。また、企業型確定拠出年金は転職した場合も資産を移行できますが、退職金は退職時に必ず受け取らなくてはいけません。勤続年数によっては退職金がもらえないこともあります。
企業型確定拠出年金と確定給付企業年金の違い
企業型確定拠出年金と似た制度に確定給付企業年金(DB)というものもあります。言葉が似ていてややこしいですが、主に以下のような違いがあります。
企業型確定拠出年金 | 確定給付企業年金 | |
掛金の運用 | 運用方針や商品は従業員が決める | 運用方針や商品は会社が決める |
給付される金額 | 掛金と運用実績によって異なる | 給付額があらかじめ確定している(運用の結果給付額に足りなければ、会社が補填する) |
運用商品の変更 | 可 | 不可 |
転職した場合 | 転職先に資産を移行できる | 脱退一時金相当額を企業年金連合会に移行できる |
従来、企業年金と言えば確定給付企業年金のことを指し、今でも933万人と多くの加入者がいます(2021年3月現在)。企業型確定拠出年金との大きな違いは運用を行うのが企業が主体となっており、受け取れる年金額があらかじめ確定しているという点です。もし運用結果が悪く年金額が足りなくなった場合は企業が不足分を補填しないといけないため、企業にとっては確定給付企業年金は責任の重い制度と言えます。対して企業型確定拠出年金は現在750万人の加入者がおり(2021年3月現在)、将来受け取れる年金額は運用の結果次第で増減します。
参考:
個人型確定拠出年金(iDeCo)とは
個人型確定拠出年金(iDeCo)とは、確定拠出年金法に基づく私的年金制度の一つで、日本在住の20歳以上60歳未満の国民年金被保険者の方であれば原則個人で誰でも加入することができます(2022年5月以降は条件付きで65歳未満の方まで加入できるようになります)。iDeCoの利用者は年々増えてきており、平成28年度には43.1万人だった加入者が令和3年には201.5万人にまで増加しています。
参考記事:
企業型確定拠出年金(DC)と個人型確定拠出年金(iDeCo)の違い
企業型確定拠出年金(DC)と個人型確定拠出年金(iDeCo)の主な違いは以下のような点になります。
企業型確定拠出年金(DC) | 個人型確定拠出年金(iDeCo) | |
運営主体 | 企業 | 国民年金基金連合会 |
加入できる人 | 確定拠出年金制度を導入している企業の従業員 | 日本在住の20歳以上60歳未満の人(2022年5月以降は条件付きで65歳未満の人まで加入できる) |
掛金 | 企業が負担 | 個人が負担 |
掛金の上限 |
月額55,000円 (iDeCoの同時加入が認められている場合は月額35,000円まで) |
自営業:月額68,000円 会社員:月額23,000円 公務員:月額12,000円 専業主婦:月額23,000円 参考:iDeCo公式HP |
運用商品 | 企業が定めたラインナップから個人が選ぶ | iDeCoを利用する金融機関のラインナップから個人が選ぶ |
口座管理費用 | 企業が負担 | 個人が負担 |
利用するための手続き |
会社の委託を受けた運営管理機関を通じて手続きを行う | 個人が金融機関等を選択し、加入の手続きを行う |
iDeCoが個人で加入する自助努力の制度であるのに対し、企業型確定拠出年金は福利厚生の一つとなります。運用する商品を個人が選び、運用結果について個人で責任を負うという点では同じですが、企業型確定拠出年金は掛金を企業が拠出し、口座管理費用も企業が負担します。
企業型確定拠出年金(DC)と個人型確定拠出年金(iDeCo)は併用できる?
2017年1月の法改正によって、企業型拠出年金に加入している人でもiDeCoに加入して2つの制度を併用することが可能になりました。ただし2つの制度を併用するには企業型確定拠出年金の規約においてiDeCoにも加入できる旨が規定されていて、事業主が拠出する掛金の上限を月額35,000円まで引き下げていなければいけないという条件があり、企業の規定改訂が進まず併用できる人が少ないという現状がありました。しかし、2022年10月よりこの条件が緩和されることとなり、企業の規約の定めが必要なく本人の意思のみで企業型確定拠出年金とiDeCoの同時加入が可能になります。この改正により、2つの制度を併用して資産形成を加速させる人が増えることが予測されます。
参考記事:『iDeCoは2022年の改正でどう変わる?』
確定拠出年金の種類について理解しよう
確定拠出年金の企業型と個人型の違いについて解説しました。私的年金制度は似た名称が多く混乱しがちですが、これからの時代公的年金だけでなく老後資金を自身で準備することは重要です。内容をしっかり理解して自分に合った制度を活用していきましょう。