2022/03/07

個人年金保険にかかる税金とは

個人年金保険にかかる税金について解説します。死亡保障もありながら私的年金を作ることができる個人年金保険ですが、受け取り時にはどのような税金がかかるのでしょうか。パターン別のシミュレーションから、個人年金保険の税金に関する注意点までわかりやすく解説しますので、参考にしてください。

個人年金保険とは

個人年金保険とは、一定期間保険料を払い込むことで将来決まった時期に年金形式で保険金を受け取ることができるという保険の種類の一つです。公的年金とは異なり、個人が任意で加入する保険商品です。公的年金の不足を補うために自分で用意する年金という意味で、確定拠出型年金(iDeCo)などとともに「私的年金」と言われることもあります。

厚生労働省のデータによると、厚生年金保険の平均受給金額は月146,162円となっており、自営業者などが加入する国民年金の場合は月65,000円ほどとなっています。この年金額は令和元年度の平均ですが、今後この金額が減ったり受給開始年齢がさらに繰り上がったりといったことは充分考えられるため、公的年金のみでは老後の生活に必要なお金が足りなくなるリスクがあります。そのリスクに備えるために私的年金は重要であり、近年個人年金保険の注目度も上がってきています。

参考:令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況(厚生労働省)

参考記事:『個人年金保険のメリット・デメリットとは

個人年金保険にかかる税金

老後資金を準備することができる個人年金保険は、受け取り時に税金がかかります。受け取り方や受け取る人によってその種類は異なり、大きく分けて以下の3パターンに分けられます。

1. 所得税(雑所得)がかかるパターン

契約者と年金受取人が同じで、毎年年金形式で受け取る場合、所得税(雑所得)がかかります。

所得税とは

所得税とは個人の所得に対してかかる税金で、1年間の所得から所得控除を引いた課税分に対して所定の税率をかけて計算します。(2013年1月1日~2037年12月31日までの間、所得税が発生する場合は併せて復興特別所得税(所得税額×2.1%)もかかります。)

所得税には利子所得・配当所得・不動産所得・事業所得・給与所得・退職所得・山林所得・譲渡所得・一時所得・雑所得の10種類があり、個人年金保険の一般的な受け取り方法である毎年受け取る方法は「雑所得」に該当します。

参考:所得税の税率(国税庁)

雑所得がかかる場合の個人年金保険受け取りシミュレーション

雑所得の計算方法は以下の通りです。

・総収入金額-必要経費=雑所得(課税金額)

※必要経費=年間の年金受取額×(払込保険料総額/年金の総支給見込額)

・雑所得(課税金額)-48万円(基礎控除)×所得税率=雑所得の税額

所得税には誰にでも一律に適用される48万円の基礎控除があります(令和2年の税制改正によって38万円から48万円に引き上げられました)。つまり、雑所得(課税金額)が48万円以上だった場合に、48万円を超えた部分に対して課税されるということです。


例:

保険料→年間12万円(払込期間30年間)

年間の受取年金額→50万円(受け取り期間10年) の個人年金保険の場合、

年金の総支給見込額→50万円×10年間=500万円※終身年金の場合、年金年額×平均余命年数で計算します。

必要経費→50万円(年間の年金受取額)×(360万円(払込保険料総額)/500万円(年金の総支給見込額))=36万円

雑所得の課税対象→50万円(年間の総収入)-36万円(必要経費)=14万円

課税対象は14万円ですが、48万円の基礎控除があるため給与所得など他の所得がなければ所得税は発生しません。収入が個人年金保険の受け取りのみの場合は、基礎控除を超えて所得税が発生するケースは少ないと思われます。

2. 所得税(一時所得)がかかるパターン

契約者と年金受取人が同じで、年金形式ではなく一括で保険金を受け取る場合、所得税(一時所得)がかかります。

一時所得がかかる場合の個人年金保険受け取りシミュレーション

一時所得の計算方法は以下の通りです。

・(総収入金額-必要経費-特別控除額50万円)/2=一時所得(課税金額)

※必要経費=支払った保険料総額

・一時所得(課税金額)×所得税率=一時所得の税額


例:

保険料→年間12万円(払込期間30年間)

一括での受取年金額→480万円 の個人年金保険の場合、

480万円(総収入金額)-360万円(必要経費)-50万円/2=35万円

この場合も課税対象は35万円ですが、48万円の基礎控除があるため給与所得など他の所得がなければ所得税は発生しません。

※個人年金保険で受け取れる保険金の総額を比べると、一般的に一括で受け取るよりも年金で受け取る方が金額が多くなります。

年金受取と一括受取の税金の違い

もし上記シミュレーションで、年金受取も一括受取も他の所得と合算すると基礎控除の金額を超えた場合、支払う所得税は以下のようになります。(所得税率10%の場合)

年金受取:14万円×10%×10年間=14万円

一括受取:35万円×10%=3.5万円

一括受取の場合は税金を支払うのが一度で済むため、一般的には年金受取よりも所得税の金額は少なくなります。しかし前述したように、年金受取と一括受取では一括受取の方がそもそものもらえる年金額が少ない可能性が高いため、一概にどちらがお得と言えるものではありません。自身の加入している個人年金保険の条件や自身の所得税額などと併せて検討し、最適な受取方法を選びましょう。

3. 贈与税(+所得税)がかかるパターン

契約者と年金受取人が異なる場合、年金受給権(年金を受け取る権利)が契約者から受取人に贈与されたものとみなされるため、1年目に贈与税がかかることに加えて2年目からは所得税(雑所得)の対象となります。ただし、2年目からかかる所得税に関しては1年目に贈与税を支払った部分に対しては課税されないため、対象となる金額は少なくなります。

贈与税がかかる場合の個人年金保険受け取りシミュレーション

贈与税の計算方法は以下の通りです。

・年金受給権の評価額-110万円(基礎控除)=贈与税の課税金額

※年金受給権の評価額=「解約返戻金」「一括受給するときの金額」「予定利率に基づき算出された金額」のうち最も大きい金額

・贈与税の課税金額×贈与税率=贈与税の税額

※贈与税の早見表

基礎控除後の贈与税課税価格 200万円以下 300万円以下 400万円以下 600万円以下 1,000万円以下 1,500万円以下 3,000万円以下 3,000万円超
贈与税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 - 10万円 25万円 65万円 125万円 175万円 250万円 400万円


例:

年金受給権の評価額→480万円 の個人年金保険の場合(贈与税率20%と仮定)、

480万円(年金受給権の評価額)-110万円(基礎控除)=370万円(贈与税の課税金額)

370×20%(贈与税率)ー25万円(控除額)=49万円(贈与税額)

となります。贈与税の場合は、110万円の基礎控除に加えて税率計算時にさらに控除があります。贈与税の場合は110万円まではかかりませんが、それ以降は高い税率で税金がかかりますので年金受給権の評価額が高い場合は注意が必要です。

個人年金保険の税金に関する注意点

契約者と受取人は同じがベター

個人年金保険の受取人は自由に設定ができますが、契約者と年金受取人が異なる場合贈与税の対象となり、一般的に所得税がかかるよりも税金が高くなるため事情がない限り契約者と受取人は同じ人にすることをおすすめします。すでに加入している人でも、年金の受け取りが始まる前であれば受取人は変更することができます。その場合、変更前の分は贈与税と所得税が、変更後の分は所得税が課税される形になります。もし現在契約者と受取人を別にしていて、変更したいという場合は早く変更した方が贈与税の金額を抑えやすくなりますので検討してみましょう。

解約返戻金にも税金がかかる

個人年金保険は、終身保険などと同じく途中で解約した場合は解約返戻金を受け取れる商品が多くなっています。金額によっては、解約返戻金にも所得税(一時所得)がかかりますので注意が必要です。解約返戻金の課税対象金額は以下の式で求められます。

(解約返戻金-累計の払込保険料額-特別控除50万円)×1/2

解約返戻金額が累計の払込保険料額を大きく上回るような場合、所得税の課税対象となる可能性があります。解約する際は、受け取った解約返戻金に所得税がかかるどうかについても確認しておきましょう。

生命保険料控除の申請も忘れずに

個人年金保険で支払った保険料は、生命保険料控除の一つである個人年金保険料控除の対象となります。2012年以降に加入した個人年金保険であれば、所得税から最大40,000円、住民税から最大28,000円の控除が受けられるので、年末調整時の申請は忘れないように行いましょう。

参考記事:『生命保険料控除とは?対象となる保険から申請方法、注意点まで

自分にとって最適な受取方法を選択しよう

個人年金保険にかかる税金について解説しました。個人年金保険は受取方法によってかかる税金が異なります。積み立てた保険金をどのような形で受け取りたいか、税金の事情も含めてあらかじめよく検討するようにしましょう。

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