2022/05/18

住宅ローンをペアローンにするメリット・デメリットを解説

住宅ローンを組む際に、ペアローンにするメリット・デメリットについて解説します。夫婦で共働きの場合、マイホーム購入時にペアローンを検討する人もいるかと思います。この記事ではペアローンと収入合算との違い、連帯保証型と連帯債務型の違いからペアローンを組む際の注意点まで初心者にもわかりやすく解説しますので、参考にしてください。

ペアローンとは

ペアローンとは、一つの物件に対して夫婦それぞれが1件ずつ、計2件の住宅ローンを契約し、夫婦が互いに連帯保証人になるという住宅ローンの組み方です。ペアローンはそれぞれ別々の契約となりますが、借入先金融機関は同一で、購入する物件に夫婦が同居することが原則となります。

夫婦で住宅ローンを組む方法は4種類

夫婦で住宅ローンを組む方法は以下の4種類あり、ペアローンはそのうちの1種類です。それぞれの特徴を知り、自身に最適な方法を選択する必要があります。

1. 夫婦のどちらかが単独で住宅ローンを組む

最もシンプルな方法は、夫婦どちらか一方がローンの債務者となり、単独で住宅ローンを組む方法です。この方法の場合は契約者本人のみの収入、年齢などを基に借入可能額が決まり、審査が行われます。

2. 互いに連帯保証人となり、2本の契約を結びそれぞれが返済する(ペアローン)

ペアローンとは、上述したように互いに連帯保証人となり、2本の契約を結ぶ方法です。申込の際には二人とも住宅ローン審査の対象となり、勤務先・収入・勤続年数などの属性確認・個人信用情報などを基に審査されます。返済義務は二人で負うため、どちらかの返済が滞った場合には、連帯保証人としてもう一方の返済の義務も負うことになります。

3. 収入合算(一方が債務者となり、もう一方が連帯保証人となる)

住宅ローンの契約は1つですが、夫婦で収入を合算して申し込む方法もあります。債務者は一人でもう一方は連帯保証人となり、債務者の返済が滞った場合には連帯保証人としてもう一方の返済の義務も負うことになります。

4. 収入合算(一方が債務者となり、もう一方が連帯債務者となる)

こちらも住宅ローンの契約は一つで夫婦で収入を合算して申し込むという点は同じですが、債務者ではない人は連帯債務者となり、夫婦両方がローンの返済義務を負います。二人とも債務者となるので連帯債務者も住宅ローン控除を受けることができるなどのメリットがありますが、現在この収入合算で申込ができる金融機関は非常に限られています。(フラット35では利用可能)

夫婦でローンを組む方法【表】


単独ローン ペアローン 収入合算(連帯保証型) 収入合算(連帯債務型)
契約方法 1人の債務者が1本の住宅ローンを契約 夫と妻がそれぞれ債務者となる2本の住宅ローンを契約 夫と妻のどちらかが主債務者となり、もう一方の収入合算者は連帯保証人となり1本の住宅ローンを契約 夫と妻のどちらかが主債務者となり、もう一方の収入合算者は連帯債務者となり1本の住宅ローンを契約
契約数 1つ 2つ 1つ 1つ
所有権 債務者のみにあり 夫婦それぞれにあり 債務者のみにあり 夫婦それぞれにあり
住宅ローン控除 債務者のみ利用できる 夫婦それぞれ利用できる 債務者のみ利用できる 夫婦それぞれ利用できる
団信 債務者のみ加入できる 夫婦それぞれ加入できる 債務者のみ加入できる 金融機関によっては夫婦それぞれ加入できる

ペアローンのメリット

1. 借入額を増やせる可能性がある

ペアローンの一番大きなメリットは、夫婦合算の収入で審査を行うことにより借入可能額が増やせる可能性があるということです。単純に契約が2つということになるため、例えば2人とも年収400万円の夫婦が5,000万円の物件を購入したいと考えた場合、単独ローンでは借入可能額が3,000万円程度だったとしてもペアローンであれば夫婦で6,000万円となり、フルローンでの購入も可能になります。頭金をあまり入れたくない、フルローンで物件を購入したいと考えている人で、単独では借入可能額が少ないという人には有効な選択肢と言えるでしょう。

2. 2人とも団信に加入できる

ペアローンにすることで、夫婦それぞれ団信(団体信用生命保険)に加入することができるのもメリットの一つです。団信とは住宅ローンの返済中に借主に万が一のことがあった場合に保険金によってローンの残債が弁済されるという保険です。支払いはローンの金利に含まれており、金利を少し上げることで特約をつけることも可能です。

ペアローンにすると夫婦それぞれで団信に加入できるので、2人分の死亡リスクをカバーすることができます。ただしそれぞれの住宅ローンの負担額に応じた利用となるため、例えば夫婦のどちらかが亡くなったとしても、もう一方の住宅ローンの返済は免除されません。

3. 住宅ローン控除などの制度を2人分受けることができる

住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用してマイホームを購入した人が、一定期間住宅ローン残高に応じて所得税や住民税を節税できる制度です。ペアローンの場合、それぞれが住宅ローン控除を利用することができるため、節税できる金額も大きくなる可能性があります。住宅ローン控除額は1人最大40万円(認定長期優良住宅や認定低炭素住宅は最大50万円)で、単独の借入では限度額を超えてしまうようなケースでも、ペアローンを活用することで夫婦で最大80万円(認定長期優良住宅や認定低炭素住宅は最大100万円)まで控除することができます。

参考記事:『住宅ローン控除とは?制度の仕組みから延長期間についてまで解説

4. 契約ごとに借入条件を変えることができる

ペアローンは契約が2つとなるため、それぞれの契約ごとに金利タイプや返済期間を変えることができます。1つの返済方法にしばられずにリスクを分散させることができる点もメリットと言えるでしょう。

ペアローンのデメリット

1. 離婚や退職でのリスクがある

ペアローンのデメリットとしては、まず離婚時のリスクが挙げられます。厚生労働省のデータによると、日本の離婚率は約35%。3組に1組以上が離婚している計算となります。ペアローンを組んで住宅ローンを返済中に離婚した場合、住宅ローンの契約自体は完済まで続くためどちらかが家を出たとしてもローンを払い続ける必要があります。また、家を売却するとしても購入価格以上で売れる保証はなく、長い時間をかけても満足いく売却ができないケースも多いです。

離婚後もローンの返済を続ける場合、家に住み続ける側は相手がきちんと支払いを続けてくれるかという不安を感じながらの生活となります。家を出た側は住んでいない家への返済という負担がのしかかる上に、住宅ローンは1本しか契約することができないため、完済までは新しく自分のための住宅ローンを組むこともできません。また、お互いが連帯保証人となっているためどちらかの支払いが滞ると支払いの催促が来てしまいます。離婚後にもお金のことで揉める可能性が残ってしまうというのがペアローンの一番のデメリットと言えるでしょう。不動産業者によっては、この離婚時のリスクを重く見てペアローンをすすめないというところもあるようです。

参考記事:『住宅ローン返済中に離婚!手続きや注意点について解説

2. 1人に何かあっても全額が弁済されない

メリットのところでも少し書きましたが、団信に2人とも加入できるというのはメリットでもありますが、夫婦のうち1人に何かあっても全額が弁済されないというのはデメリットでもあります。団信で弁済されるのはペアローンのうち自分の負担分だけですので、どちらか1人が例えば亡くなってしまったとしても遺された側は自分の分の住宅ローンを返済し続ける必要があります。人によっては、単独ローンにして債務者に何かあった場合は全額が弁済されるという方が安心感がある、という人もいるでしょう。

3. 諸費用が倍かかる

ペアローンは契約数が2本となるため、契約にかかる印紙税、融資手数料、保証料、登記費用などの諸費用がほぼ2倍必要となります。諸費用は物件にもよりますが物件価格の3~10%ほどかかると言われていますので、決して少なくはない金額です。

ペアローンの注意点

1. 贈与税がかかることもある

ペアローン利用時の注意点として、贈与税がかかるケースもあるという点に注意が必要です。

・贈与税がかかるかもしれないケース1

住宅ローンの負担割合と住宅の所有権の割合が違っていると、一方からもう一方に利益の供与があったとみなされ贈与税がかかることがあります。所有権の割合は、住宅ローンの負担割合に応じて設定するようにしましょう。

・贈与税がかかるかもしれないケース2

夫婦のどちらかがもう一方の返済を肩代わりしたとみなされる場合に、贈与税がかかることがあります。例えばどちらかが退職し、もう一方がローンの返済を肩代わりした場合などに注意が必要です。

リスクも多いペアローンは慎重に検討しよう

ペアローンのメリット・デメリット、注意点について解説しました。ペアローンは単独では借りられない借入金額を可能にすることができるかもしれない方法ですが、その分借入金額が大きくなりやすく、その後の返済のリスクが上がりやすい方法です。利用する場合はデメリットもしっかりと理解した上で、お互いの退職リスクなども充分考慮しながら返済計画を立てるようにしましょう。

HOME記事一覧Page Top