2022/06/01

住宅ローン返済中に離婚!手続きや注意点について解説

住宅ローンの返済中に離婚となってしまった場合どのような点に気をつければよいのか、手続きや注意点について解説します。離婚時にまず確認しておきたい名義やローン残高などのポイントや、離婚後に取れる3つの行動パターン、物件価格に応じた売却の流れまでわかりやすく解説しますので、参考にしてください。

離婚時に住宅ローンについてまず確認したいこと

結婚や出産を機にマイホームを購入する人は多いと思います。そのまま無事住宅ローン完済までいけばよいですが、なんらかの原因で離婚となってしまう場合もあるでしょう。2019年度の厚生労働省の調査によると、婚姻件数約60万件に対して離婚件数は約21万件となっており、3組に1組以上の夫婦が離婚しているという現状があります。

住宅ローンの返済途中に離婚となってしまった場合、まず確認しておきたい項目は以下の通りです。できれば離婚が決定してしまってからではなく、離婚となりそうな時点であらかじめ確認しておくようにしましょう。

1. 家と住宅ローンの名義人

家の名義人と住宅ローンの名義人は異なるため、それぞれの名義人をまずは確認しましょう。不動産を売却できるのは家の名義人のみなので、もし家を売却することになったら名義人全員の同意が必要になります。夫婦2人で所有する共有名義になっている場合は、離婚から時間が経って家を売却したいと思った際などにに元パートナーにも連絡をして同意を得る必要が出てきてしまいます。また、住宅ローンの返済義務があるのは住宅ローンの名義人のみであるため、住宅ローンの名義人が単独であるか、ペアローンであるかによっても離婚後の対応が変わってきます。住宅ローンの名義人にはなっていなくても連帯債務者になっている場合も、今後返済を行う必要が発生する可能性があります。

※家の名義人が不明な場合は、以下サービスなどで確認することができます。

参考:登記情報提供サービス

2. 住宅ローンの残高

住宅ローンの現時点での残高も確認しておきましょう。家を売った場合にローンを完済できそうか、ローンが残りそうかを判断する必要があるからです。現時点での住宅ローンの残高を調べるには、借入先の金融機関のウェブサイトから問い合わせるか、年に一回郵送される残高証明書を見るという方法があります。

3. 現在の物件価格

家の現在の価格を知っておくことも大切です。家の現在のだいたいの評価額を知っておくことで、家を売却するかどうか、売却する場合にはいつ頃売却すべきかなど今後の見通しを具体的に立てることができます。家の評価額は不動産会社に問い合わせることで知ることができますが、不動産の査定方法は会社によって微妙に異なるため、1社だけでなく複数の不動産会社に依頼し、それぞれに評価額をもらうことをおすすめします。

離婚時に住宅ローンが残っていた場合に取れる3つの選択肢

離婚時に住宅ローンが残った状態だった場合、取れる行動パターンとして3つの選択肢があります。それぞれの状況にあわせて、最適な方法を納得して決められるようにしましょう。

1. 名義人であるどちらか一方が住み続ける

妻か夫、どちらか住宅ローンの名義人になっている方がそのまま住み続けるパターンは、手続きも少なく一番揉めずに済む可能性が高いです。ただし、完全な単独名義であれば問題ないですが連帯保証人として夫か妻を指定されている場合は、住宅ローンの支払いが滞った場合に離婚して年月が経っていても元パートナーに支払い義務が生じてしまいますので注意が必要です。連帯保証人を外れたい場合は別の人を指定するという方法がありますが、連帯保証人の変更はできないという金融機関もあります。その場合は借り換えを行い再度単独ローンを組む方法が現実的です。

また、ペアローンで夫婦ともに住宅ローンを組んでいる場合、離婚後も住み続ける方の単独ローンに名義変更できるか金融機関に審査してもらう必要があります。ペアローンは基本的に単独でローン借入金額が足りない場合に利用されるため、離婚時点での残額を単独で支払える能力がないと判断された場合は単独ローンへの変更はできません。単独ローンへの変更ができない場合は離婚後も2人で住宅ローンを返済していくこととなりますので、後述する公正証書などを残して返済が滞らないようにする必要があります。

2. 名義人ではないどちらか一方が住み続ける

住宅ローンの名義人ではないどちらか一方が住み続けるというパターンは、妻と子が住み続け、夫がローンを払い続けるというケースで意外と多くの人が選択しています。子どもを転校させなくてよい、妻に離婚後の住まいの心配がないなどのメリットがありますが、離婚後夫の再婚などで住宅ローンを支払わなくなる可能性があるなどリスクが高い方法でもあります。また、名義人が夫であることで売却の意志決定も夫側にあるため、ある日いきなり自宅を売却されてしまっていた、などというケースもあり得ます。ローン支払い側の返済が滞った際のリスクが大きいため、離婚前に厳密にシミュレーションを行い、返済をずっと続けていけるかどうか確認しておく必要があります。

そして金融機関によっては、「ローンの名義人がその家に住み続けること」を住宅ローンの融資条件としているところもあります。その場合は名義人である夫が家を出て妻が住むのは契約違反になるケースがあり、発覚した場合はローンの一括返済を迫られるという可能性もあります。この方法を選択する場合は、事前に金融機関にも確認が必要です。

非債務者が家に住み続けるというのはトラブルになる可能性が高いので、できれば離婚後住み続ける側へのローンの名義変更を行いたいところですが、名義変更は簡単ではありません。住み続ける側に問題なく返済能力があれば変更できる場合もありますが、その点も金融機関によって対応は大きく異なります。いずれにせよ、この方法を選択する場合は金融機関にあらかじめ相談が必要です。

3. 自宅を売却する

最後の選択肢として、住んでいる家を売却するという方法があります。家を売却するという選択をとる場合、まず物件の査定額が住宅ローンの残債を上回るか(アンダーローン)下回るか(オーバーローン)でその後の対応を変える必要があります。

※オーバーローンとアンダーローンとは

家の査定額がローンの残債を下回っており、ローン返済に全て売却益をあてたとしても負債が残るケースを「オーバーローン」と呼びます。それに対して家の査定額がローンの残債を上回っている状態の事を「アンダーローン」と呼びます。

アンダーローンの場合は、住宅ローンの残債を完済し、売却益が残った場合は2人で折半するというのが一般的です。オーバーローンの場合、売却益をあてて残った住宅ローンの金額が少なければお互いの自己資金で完済することもできますが、自己資金で解決できない場合は「任意売却」という特殊な方法での売却を行うことになります。オーバーローンの場合、残る負債を自己資金で解決できない場合は仲介や買取などの通常ルートでの売却はできません。(住宅ローンには一般的に抵当権が設定されており、住宅ローンを完済して抵当権を外さない限り対象不動産の売却ができないため。)

通常、オーバーローンとなり自己資金をあてても残債が完済できなさそうな場合はどちらかが住み続けて住宅ローンを返済していくことが多いですが、「どうしても離婚のタイミングで家を売却したい」という場合は任意売却を検討しましょう。

※任意売却と競売の違い

任意売却とは、住宅ローンを借りている金融機関との合意のもとで、オーバーローンの物件を売りに出すという売却方法のことです。任意売却という方法をとると、売却価格で住宅ローンの残債を完済できなくても抵当権を外してもらうことができるので、オーバーローン状態でも自己資金なしで家を売却することができます。

離婚で家を手放したいという場合に確実に家を売却できるということがメリットですが、金融機関の許可を得る必要があるため許可がでない場合は実施できないこと、残債の支払い義務は免除されないのでその後別の家に住んでいても残債を支払い続ける必要があるというデメリットがあります。

家を売却する同じような言葉に「競売」がありますが、競売は住宅ローンの返済ができなくなった場合に、不動産を裁判所を通して強制的に売却することを言います。任意売却と比べて売却価格も低いことが多く、元所有者の意志を入れることができないため売却までの流れ、引っ越しの日程などすべて裁判所に決められる形となります。離婚に際しオーバーローンで家の売却を行う場合は任意売却の手段が取られることとなりますが、競売との違いも理解しておきましょう。

【任意売却と競売の違い】

項目 任意売却 競売
売却価格 市場価格に近い価格で売却できることが多い 市場価格の7割前後で売却されることが多い
引っ越し日 協議の上引っ越しの日を自由に設定できる 引っ越しの日は自由に選べない
プライバシー 通常の不動産売却と同じ流れになるため、プライバシーは守られる 新聞やネット上に競売情報が公開される

離婚時の住宅ローンについての注意点

1. 養育費の負担もある場合は、住宅ローンの比重を調整する場合も

成人していない子どもがいる状態で離婚する(母親が親権を持つ)場合、ほとんどのケースでは夫に養育費支払いの義務が課されます。しかし、もし住宅ローンの返済義務も夫が負っている場合は経済負担が大きくなるため、住宅ローンの返済額を考慮して養育費が減額されるケースがあります。離婚後も安心して子育てしていくために、ローンの返済の仕方と養育費の負担についても事前によく話し合い納得できる方法を選択するようにしましょう。

2. 離婚後も連絡を取り続けなくてはいけないケースも

上述した3つのパターンのうち、特に「2. 名義人ではないどちらか一方が住み続ける」の場合、離婚後も元パートナーと連絡を取る必要が出てくる可能性が大きくなります。問題なく返済が行われていれば連絡は不要ですが、離婚後の人生も何が起こるかわかりません。返済が滞った場合、家の売却を考え出した場合などに元パートナーとは否応なく連絡を取る必要が出てきてしまいます。

もし、できるだけ離婚後に連絡を取ることを避けたいようであれば、「2. 名義人ではないどちらか一方が住み続ける」というパターンは避け、違う方法で離婚後の住宅ローンの返済を考えましょう。

3. 公正証書や合意書を活用する

公正証書とは、全国に約300ヶ所ある公証役場で公証人が法律に従って作成する公文書のことです。公正証書には住宅ローンの支払義務のほか、養育費、財産分与、子どもへの面会日および面会条件、親権などについて明記されます。公正証書に記された条項は、法的に違反するものでない限りは遵守する義務が課され、不履行の場合は強制執行の対象になります。

公正証書を作成し離婚することを「公正証書離婚」と言い、協議離婚では近年当たり前になりつつあります。「離婚時に決定したことをきちんと相手に守ってほしい」「相手の心変わりが不安」という場合は、公正証書を活用するようにしましょう。

※公正証書の作成には記載する内容に応じて5,000円~5万円ほどの手数料がかかります。

離婚後の住宅ローンの返済については慎重に決めよう

住宅ローンの返済中に離婚になった際の注意点について解説しました。離婚時の話し合いでは様々なことを考える必要があり、早く決着をつけたいと思ってしまいがちですが、住宅ローンの返済については今後も長く続いていく大きなポイントです。一時的な感情で決めてしまうことのないよう、2人で慎重に決定するようにしましょう。

HOME記事一覧Page Top