2022/05/17

転職が住宅ローンに与える影響とは。注意点・知っておくべき点を解説

転職が住宅ローンに与える影響について解説します。終身雇用が当たり前ではなくなってきている現代では、転職の機会も多くなってきています。住宅ローンを利用するにあたり、転職は審査やその後の返済時にどのような影響を与えるのか、注意するべき・知っておくべき点を初心者にもわかりやすく解説します。

住宅ローンの審査項目として重要な「勤続年数」

住宅ローンを利用するための審査項目は、契約者の健康状態、年齢、収入など様々な内容があります。特に重要な項目の一つとして「勤続年数」があり、転職はこの勤続年数に影響を与えます。

国土交通省が発表している調査によると、調査対象となった金融機関のうち、95.6%が勤続年数を審査項目の中に入れていると回答しており、回答した金融機関のうち6割以上が「1年以上の勤続年数」を審査通過の条件としています。転職後1年未満での住宅ローンの申込は、通らない可能性が高いということです。

このように、転職のタイミングと住宅ローンのタイミングによっては審査結果に重要な影響を与える可能性があります。

参考:民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書(国土交通省)

ネット銀行の方が勤務年数に対する審査は緩め

メガバンクなど大手銀行の中には勤務年数3年以上を審査通過ラインにしている金融機関もありますが、ネット銀行(ソニー銀行、住信SBIネット銀行など)の方が、勤務年数に対する審査は緩めの傾向があります。ただし、ネット銀行の場合その他年収などの審査項目は大手銀行よりも条件が厳しい傾向にありますので、ネット銀行であれば勤務年数が短くても必ず審査に通るわけではありません。

フラット35なら勤続年数の要件はなし

全期間固定金利が特徴のフラット35であれば、勤続年数に関する要件がないため転職直後でも審査に通る可能性があります。フラット35は年齢や年収に占める返済比率などの条件を満たしていれば、勤続年数に関係なく申込が可能です。(申込は可能ですが、審査に通るとは限りませんので注意してください。)

【フラット35の主な申込要件】

1. 申込時の年齢が満70歳未満、完済時年齢が80歳未満であること

2. 日本国籍の人、永住許可を受けている人、または特別永住者であること

3. すべての借入れに関して、税込年収に占める年間合計返済額の割合が、次の基準を満たすかた

 ・年収400万円未満の場合…総返済負担率30%以下

 ・年収400万円以上の場合…総返済負担率35%以下

その他フラット35に関しては、詳しくは以下記事を参考にしてください。

参考記事:『フラット35とは?民間住宅ローンとの違いから利用する上での注意点まで

転職後に住宅ローンを利用する際の注意点

1. 転職後3年以上経っていれば審査に影響はほぼなし

審査項目が厳しい金融機関でも、勤続年数の要件は3年が上限であることがほとんどです。そのため転職後3年が経過していれば、申込にほぼ影響はないと言えるでしょう。転職とマイホーム購入を両方検討している人で、まだ購入する物件までは決まっていないという人は、先に転職してその後ゆっくり物件を探すというのもよいでしょう。

2. 年収の見込みが低く出る場合もある

通常、審査の際は数年分(過去3年分のことが多い)の年収の実績を提出し、審査されます。しかし転職後間もない時期での住宅ローン申込の場合、金融機関によっては直近3ヶ月分などの給与の実績から年間の年収見込みを出して、その数字をもとに審査される場合があります。年に1回大きくボーナスが出るというような企業に転職した場合、出るであろうボーナスの金額は考慮されなくなってしまうこともあるため、見込み年収が低く査定される場合もあることに注意しましょう。

3. 申込に必要な書類が増える場合もある

転職後間もない時期に住宅ローンを申し込む場合、金融機関によっては通常の申込に必要な書類に加えて次のような書類が必要となる場合があります。

・採用通知書・雇用契約書

・年収見込証明書

・転職後の給与明細

これらはすべて転職後の企業から発行してもらう書類となりますので、転職後住宅ローンの申込を予定している場合は、総務人事課と連絡を取りながら忘れずに書類を発行してもらうようにしましょう。

4. 住宅ローン申込・審査期間中の転職は基本的にやめた方が良い

住宅ローンの審査においては、仮審査~本審査を経て契約の締結を交わすという流れになります。その審査期間の間に転職を行ってしまうと、審査の内容と実際の状況が異なってしまい、審査が再度やり直しになってしまったり、申込が無効になってしまったりする可能性があります。審査期間中の転職は、よほどの事情がない限りはやめた方がよいでしょう。もしやむを得ない事情でその期間に転職となってしまった場合は、必ずあらかじめ金融機関に相談をしながら申込を進めるようにしましょう。

5. 前職の勤続年数と合算して審査する金融機関もある

転職の内容にもよりますが、金融機関によっては前職との勤続年数を合算した審査が可能なケースもあります。全くの異業種への転職や年収ダウンの転職の場合は難しいですが、例えば同業種への転職・年収アップの転職などの場合、「計画的な転職」として前職との勤続年数の合算が可能になることもあります。勤続年数が合算できれば審査への影響も少なくなりますし、より有利に判断してもらえる可能性がありますのでまずは金融機関に転職の内容について相談してみるとよいでしょう。

6. 転職後が自営業の場合は、転職前に申込を

会社員だった人が転職して自営業・フリーランスになるという場合は、転職後まで住宅ローンの申込を待っているのは得策ではありません。自営業の人は住宅ローンの審査が会社員と比べて格段に厳しく、特定の金融機関でしか申し込めないというケースも少なくありません。転職後に自営業・フリーランスになる予定がある人は、住宅ローンの申込・審査は会社員であるうちに済ませたほうがスムーズに進む可能性が高いと言えます。

住宅ローン返済中に転職をする際の注意点

1. 転職後は金融機関に届出が必要

多くの金融機関では契約約款の中で「届出事項に変更があった場合は所定の手続きや届出をする必要がある」と明記しています。住宅ローンを返済中に転職した場合は、所定の手続きに従って金融機関に届出を行う必要がありますので注意してください。

2. 転職のタイミングによって住宅ローン控除の申請方法が変わる

転職のタイミングによっては、住宅ローン控除の申請にも注意が必要です。年末時点ですでに新しい会社に在籍している場合は、転職後の会社で年末調整が可能ですので残高証明書などの必要書類を新しい会社に提出しましょう。退職後空白期間があるなどで年末時点でどこの会社にも所属していない場合は、年末調整の対象とならないため、住宅ローン控除を受けるには自身で確定申告を行う必要があります。

参考記事:『【2022年最新】住宅ローン控除とは?制度の仕組みから延長期間についてまで解説

転職のタイミングは慎重に

転職が住宅ローンに与える影響について解説しました。転職後すぐの住宅ローン申込は審査に通りづらく、注意すべき点も多いため基本的にあまりおすすめできません。転職とマイホーム購入を考えている人は、両者のタイミングをよく検討するようにしましょう。

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