2022/05/19

フラット35とは?民間住宅ローンとの違いから利用する上での注意点まで

全期間固定金利で有名なフラット35について解説します。CMなどで耳にする機会の多いフラット35ですが、商品や審査にはどのような特徴があるのでしょうか。民間住宅ローンとの違いからフラット35の種類、フラット35を利用する上でのメリット・デメリットや向いている人まで初心者にもわかりやすく解説しますので、参考にしてください。

フラット35とは

フラット35とは、母体が住宅金融支援機構の独立行政法人で、民間金融機関と提携して住宅ローンの融資を行っています。民間ではなかなか扱いにくい長期間固定金利の住宅ローンとして2003年からスタートしました。返済する全期間が固定金利となっており、融資実行時の金利がずっと続くという特徴があります。

フラット35を利用する場合は、民間の金融機関を通して申し込みます。フラット35は都市銀行や地方銀行をはじめ、信用金庫や信託銀行、ネット銀行やフラット35を専門に扱うモーゲージバンクと呼ばれる金融機関など幅広い金融機関が取り扱っています。どの金融機関もフラット35を利用するための条件は同じですが、金利や手数料は金融機関によって若干ですが異なります。

フラット35の利用条件

フラット35には、利用するための条件がいくつかあります。決して難しい条件ではありませんが、これらの条件を満たしていないとそもそも申し込むことができませんので事前に必ず確認しておきましょう。

1. 日本国籍を有していること

原則、フラット35を利用するには日本国籍を有していることが条件となります。ただし、外国籍の方でも「永住者」または「特別永住者」の資格があれば利用可能です。

2. 申し込み時の年齢が満70歳未満であること

申込時点で、申込者が70歳未満であることも条件です。ただし、親子リレー返済の場合は、70歳以上の人でも借入れが可能になります。

3. 返済負担率が基準値以下であること

年収に占める年間合計返済額の割合(返済負担率)が以下の割合以下であることも条件の一つです。この返済額には借りる予定の住宅ローンだけでなく自動車ローンやカードローンなども含まれますので、注意が必要です。

年収400万円未満の場合:30%以下

年収400万円以上の場合:35%以下

4. 資金使途は申込本人またはその親族の方が居住する住宅であること

フラット35は、申込本人またはその親族の方が居住する住宅を購入するための資金もしくは新築するための建設資金としてのみ借りることができます。

5. 住宅金融支援機構が定めた技術水準を満たす住宅であること

購入する住宅にも申込できる基準があります。住宅金融支援機構が定めた、断熱構造や配管設備などいくつかの項目をクリアする必要がありますが、こちらは一般的な住宅であればほぼクリアできる水準となっています。中古住宅を購入する場合は、耐震性に関する基準も加わります。

6. 床面積が一戸建てで70㎡以上、共同住宅で30㎡以上であること

床面積の要件もあります。床面積が一戸建てで70㎡以上、共同住宅で30㎡以上ないとフラット35を利用することができません。(マンションなどの共同住宅の床面積は専有面積を指し、共用部分は含まれません。)

それ以外の要件はなし

以上の要件を満たしていれば、フラット35はどんな人でも申し込むことができます。つまり他の民間住宅ローンでは年収、勤続年数、職業(自営業など)の審査段階で申し込むことが難しい人でも利用しやすいのがフラット35の特徴です。(年収の制限はありませんが、上述した年収に応じた返済負担率は守る必要があります。)また、2014年までは物件価格の90%までしか融資を受けることができなかったため最低でも1割の頭金を用意する必要がありましたが、2014年以降は物件価格の100%融資(フルローン)が可能になっています。フラット35でもフルローンが可能ではありますが、融資率が9割以下の場合と9割以上の場合は金利が異なるため、最新の金利を確認してよく検討するようにしましょう。

※属性に心配がある人でも申し込みやすいという特徴がありますが、すべての人が審査に通過するというわけではありません。

参考:融資率とは(フラット35公式HP)


民間住宅ローンとの違い【図】

項目 フラット35 民間住宅ローン
金利タイプ 全期間固定金利のみ 変動金利、固定金利期間選択型などから選べる
住宅の技術基準 あり なし(別途購入物件の審査はあり)
保証料 なし

金融機関による

(なし、もしくは借入額の2%程度など)

団信 加入は任意 加入が必須であることが多い
繰り上げ返済 手数料なし

金融機関による

(web申込の場合は、手数料なしの場合が多い)

保証人 不要 金融機関による
審査の厳しさ 自営業などでも審査に通過しやすい 収入の安定性が重視されるため、会社員でないと審査通過は難しいことも

フラット35の種類

フラット35には複数の種類があります。返済年数や利用の用途に応じて、最適なプランを選ぶ必要があります。

フラット35

通常のフラット35です。返済期間は最長35年、融資限度額は100万円以上8,000万円以内と定まっています。限度額以内であれば、諸費用まで融資に含めることが可能です。

フラット35S

フラット35を申し込んだ人のうち、購入する物件が長期優良住宅など省エネルギー性、耐震性など質の高い住宅であった場合に、借入金利を一定期間引き下げる制度がフラット35Sです。基準の高さに応じて金利Aプランと金利Bプランがあり、それぞれ融資開始から10年間もしくは5年間、通常金利より0.25%金利が低くなります。

参考:【フラット35】S(フラット35公式HP)

フラット20

フラット20とは、フラット35のうち15年以上20年以下の借入期間を選択した場合に適用されるプランのことです。借入年数が少ないことで、通常のフラット35よりも低い金利で融資を受けることができます。ただし、20年以下の借入期間を選択した場合、原則として返済途中で借入期間を21年以上に変更することはできませんので注意してください。

参考:【フラット20】(フラット35公式HP)

ダブルフラット

ダブルフラットとは、フラット35の商品を2つ組み合わせる仕組みです。組み合わせ方法としては、次の3つがあります。

1. フラット35+フラット20

2. フラット35+フラット35

3. フラット20+フラット20

借入総額を2つに分けて2つのプランで契約することで、返済額が返済当初は大きくなりますが、途中から低くすることができます。また、フラット20を組み合わせることで一部分でも低金利を適用させることができます。「子供の教育費が高くなる頃から支払いを減らしたい」「定年後の支払いを減らしたい」と考える人は検討してみるとよいでしょう。

参考:【ダブルフラット】(フラット35公式HP)

フラット35リノベ

フラット35リノベとは、以下の1. もしくは2. の条件を満たした場合に、フラット35を利用する際の借入金利を一定期間引き下げる制度です。

1. 中古住宅を購入して一定の要件を満たすリフォームを行う場合(リフォーム一体タイプ)

2. 住宅事業者により一定の要件を満たすリフォームが行われた中古住宅を購入する場合(買取再販タイプ)

リフォームとセットで融資を受けることで、通常金利より0.5%低い金利が条件により5年間もしくは10年間続きます。リノベーションされた中古住宅を検討している人に嬉しい制度です。

参考:【フラット35】リノベ(フラット35公式HP)

フラット50

フラット50とは、長期優良住宅を取得する場合に利用することのできる最長50年の返済プランです。返済期間が長くなることで月々の返済額を抑えることができますが、完済時年齢が高くなり総返済額が増加する可能性がありますので、このプランを選択する場合は返済計画をより念入りに行う必要があります。

参考:【フラット50】(フラット35公式HP)

参考:長期優良住宅とは(国土交通省)

上記で紹介したプラン以外にも、フラット35には様々な返済プランがあります。金融機関に相談する場合は、自身のライフプランに合わせて最適なプランを提案してもらうようにしましょう。(記載した引き下げ金利や優遇金利年数はすべて2022年5月現在の数字です。)

参考:商品ラインナップ(フラット35公式HP)

フラット35のメリット

1. 返済計画が立てやすい

フラット35は長期固定金利のみ扱っているため、借り入れる段階で総返済額が決定します。金利の変動がないことで金利変動リスクがなく、返済計画が立てやすいというメリットがあります。

2. 保証料が不要

保証料とは、住宅ローンで必要になる諸費用の一つで、債務者がやむを得ず金融機関へ住宅ローンを返済できなくなった際、保証会社に代わりに返済してもらうために保証会社と保証契約を結ぶための費用です。借入金額の2%を目安に設定されていることが多く、諸費用の中でも高額になります。(保証料がかからない金融機関もあります。)

フラット35ではこの保証料が不要です。諸費用が安く済むというのも大きなメリットの一つと言えるでしょう。

3. 申込基準が明確

フラット35の申込基準は前述した通りで、その基準を満たしていればどんな人でも申込が可能です。(審査に通るかは別です。)金融機関の中には、住宅ローンの申込基準を明確に提示しておらず申込してみないとわからないという場合も多いのですが、フラット35の場合は基準が明確なため判断がしやすいというメリットもあります。

4. 民間ローンを利用しにくい人でも利用可能

フラット35は返済負担率の基準を満たしていれば年収・職業などの審査基準はないため、自営業やフリーランスの人でも利用しやすいというメリットもあります。自営業やフリーランスの人は職業の安定性が低いとして民間住宅ローン(特にメガバンク)は審査に通りにくい傾向があるのですが、フラット35であれば自営業やフリーランスの人でも審査に通った実績が多くあります。

5. 団信の加入が義務ではない、団信の種類が豊富

フラット35の団信は、基本はプランに付帯しており加入にあたり追加の金利を支払う必要はありません。そして団信の加入は義務ではなく、もし加入しない場合はその分下げた金利で融資を受けることができます。他の保険でリスクをカバーしている、健康上の理由で団信に加入できないなどの理由がある人は、団信の加入なしでも利用できるフラット35は魅力的だと言えるでしょう。(なんらかの理由がない限りは、基本的に団信には加入しておくことをおすすめします。)

また、フラット35の団信は基本プランのみでなく、金利を少しプラスすることで民間住宅ローンと同じく様々な病気のリスクをカバーすることも可能です。自身の加入している保険内容とあわせて、団信の内容もよく検討するようにしましょう。

6. 繰り上げ返済の手数料がかからない

民間ローンの中には、繰り上げ返済を行う際に「一回あたり〇〇円」「繰り上げ返済金額×〇%」といったような繰り上げ返済手数料がかかる場合があります。しかしフラット35の場合、繰り上げ返済の手数料がかかりません。資金に余裕ができて繰り上げ返済を行いたいと思った場合にも気軽に行うことができるのもメリットの一つです。ただし、フラット35の繰り上げ返済は100万円単位で可能となっています。100万円以下の繰り上げ返済はできませんので注意してください。

フラット35のデメリット

1. 金利が相対的に高い

フラット35の金利は、融資率9割以下の場合で1.300%~です(2021年10月現在)。民間融資で変動金利を選択した場合0%台の金利がほとんどであることを考えると、フラット35の長期固定金利は相対的に高くなるというデメリットがあります。今後も超低金利時代はしばらく続くと思われるため、変動金利よりも金利が割高な状態は継続する可能性が高いです。少しでも低い金利で住宅ローンの借入をしたいと考える人にとっては、フラット35は最善の選択肢ではない場合があります。

2. 借入額が住宅価格の9割を超えると金利が高くなる

フラット35の金利は融資率9割以下の場合1.300%ですが、融資率が9割を超えると1.560%~となります(2021年10月現在)。フルローンを利用して物件を購入したいと考える人にとっては、この差は大きなデメリットとなります。フラット35を利用する場合は、自己資金に余裕があるようであれば融資率は9割以下に抑えた方がよいでしょう。

3. 住宅に関する独自の基準がある

フラット35を利用するためには、購入する物件が独自の技術基準をクリアしている必要があります。この基準はそこまで厳しいものではないのですが、基準を満たしていることを住宅金融支援機構に証明する適合証明書の提出が必要となり、そのための検査費用がかかります。その費用は業者によって異なりますが、中古住宅の方が費用が高くなる傾向があります。

フラット35に向いている人

ここまで、フラット35の特徴やメリット・デメリットについて解説しました。その特徴を踏まえると、フラット35を利用するのに向いているのは以下のような人となります。

・自営業・フリーランスの人

・金利の変動に不安を感じる人、固定金利を希望する人

・転職したばかりの人

・健康上の不安があり、団信の加入が難しい人

フラット35利用者のアンケート

住宅金融支援機構がフラット35利用者に2021年4月に行ったアンケートによると、フラット35を選んだ理由の上位は以下のようになっています。

1. 今後の金利上昇に備えて予め将来にわたる返済額を確定させておきたかった

2. 金利が低い

3. フラット35Sを利用できるから

4. 住宅事業者、販売事業者の勧め

5. フラット35には建物の審査があるので安心できる

アンケート結果からわかるように、長期固定金利や、独自の物件審査による安心感からフラット35を選択している人が多いようです。

参考:住宅ローン利用者の実態調査(住宅金融支援機構)

フラット35独自の特徴を理解しよう

フラット35について解説しました。民間の住宅ローンと比べると独特の性質を持つフラット35は、メリット・デメリットをよく理解した上で利用を検討しましょう。

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