2022/03/24
iDeCoの掛金はいくらがよいのか?
iDeCoの掛金について、いくらで設定するのが適切なのかという点について解説します。iDeCoは職業によって掛金の上限が異なり、いくらに設定すればよいか迷う人もいるのではないでしょうか。iDeCoの掛金の上限金額や下限金額、加入者の平均掛金額、掛金の変更方法や停止方法までわかりやすく解説しますので、参考にしてください。
iDeCoとは
iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)とは、2001年にスタートした、確定拠出年金法に基づいて実施されている私的年金制度です。毎月決められた金額を拠出し、掛金を運用することで老後に向けた資産を形成することができます。運用は60歳になるまで行い、60歳以降に老齢給付金という形で受け取ることができるという制度です。
iDeCoという愛称がつけられたのは2016年からで、それまでは「個人型確定拠出年金」や「日本版401k」と呼ばれていました。iDeCoはつみたてNISAと同じく運用して出た利益が非課税なのに加え、掛金が全額が所得控除の対象になるため、所得税・住民税が安くなるという節税メリットの大きい制度です。
国民年金を納めている60歳未満の人であれば、一部の人をのぞき制度を利用することができます。制度改正により専業主婦(夫)や公務員の人でも加入できるようになり、2022年5月には加入できる年齢が引き上げられ65歳まで加入できるようになるなど、制度改正によりどんどん加入できる人が増えてきています。
参考記事:
iDeCoで設定できる掛金
iDeCoの掛金は最低毎月5,000円から1,000円単位で設定でき、職業によって設定できる掛金が異なります。各職業に応じた掛金上限は以下の通りです。
職業 | 掛金の上限金額 |
自営業(第一号被保険者) | 月額68,000円(年間816,000円) |
会社員・公務員(第二号被保険者) 1. 会社に企業年金がない会社員 |
月額23,000円(年間276,000円) |
会社員・公務員(第二号被保険者) 2. 企業型DCに加入している会社員 |
月額20,000円(年間240,000円) |
会社員・公務員(第二号被保険者) 3. 企業型DCとDBに加入している会社員 |
月額12,000円(年間144,000円) |
会社員・公務員(第二号被保険者) 4. DBのみに加入している会社員 |
月額12,000円(年間144,000円) |
会社員・公務員(第二号被保険者) 5. 公務員 |
月額12,000円(年間144,000円) |
専業主婦(夫) | 月額23,000円(年間276,000円) |
※DC…確定拠出年金のこと。老後資金を貯めるための制度で、企業で加入するが自身で運用を行う。
※DB…確定給付企業年金のこと。同じく老後資金を貯めるための制度だが、企業で加入し運用は企業が行う。
iDeCoの掛金の平均
iDeCoの掛金額は、拠出限度額までの範囲内で加入者本人が自由に決めることができます。2021年4月時点の全加入者の平均掛金額は15,767円で、加入者の職業に応じた平均とiDeCo加入者の掛金額分布は以下の通りです。やはり掛金上限が一番大きい自営業の人の平均が多くなっています。
国民年金1号加入者(自営業者等)の平均掛金:27,660円
国民年金2号加入者(会社員等)の平均掛金:14,220円
国民年金3号加入者(専業主婦(夫)等)の平均掛金:14,988円
【iDeCo加入者の掛金額分布】
掛金額 | 国民年金1号加入者(自営業者等) | 国民年金2号加入者(会社員等) | 国民年金3号加入者(専業主婦(夫)等) |
5,000円~ | 49,660人 | 275,389人 | 21,122人 |
10,000円~ | 46,243人 | 755,276人 | 14,743人 |
15,000円~ | 6,939人 | 40,361人 | 2,173人 |
20,000円~ | 29,715人 | 556,433人 | 36,918人 |
25,000円~ | 2,996人 | - |
- |
30,000円~ | 15,800人 | - | - |
35,000円~ | 1,935人 | - | - |
40,000円~ | 4,239人 | - | - |
45,000円~ | 1,204人 | - | - |
50,000円~ | 10,866人 | - | - |
55,000円~ | 854人 | - | - |
60,000円~ | 2,720人 | - | - |
65,000円~ | 43,394人 | - | - |
※2021年4月時点
参考:iDeCo公式HP
掛金の分布を見ると、会社員等の人で掛金満額に近い20,000~23,000円に設定している人は約34%、自営業等の人で掛金満額に近い65,000~68,000円に設定している人は約20%、専業主婦(夫)等の人で掛金満額に近い20,000~23,000円に設定している人は約49%となっており、いずれも半数以下となっています。それぞれの年収やライフプランに合わせて無理のない金額を積み立てていることがわかります。
iDeCoの掛金はいくらに設定するのがよいか
平均の掛金額を確認した上で、iDeCoの掛金はいくらに設定するのが適切なのでしょうか。これは個々人の年齢や年収、目標金額によって異なりますが、資金に余裕がある人であれば所得税・住民税の節税効果や運用益の最大化を狙うため満額設定がおすすめです。ただ、20代の会社員の人などまだ年収が低い人にとって、毎月23,000円必ず引かれていく固定費は大きいでしょう。その場合は最低金額の5,000円からでも積み立てをまずは始めることが大事です。以下のシミュレーションを見ると、最低金額の5,000円で積み立てを続けた場合でも、60歳時点には運用益との合算でまとまった金額になっていることがわかります。
【60歳時点の運用シミュレーション】
■月5,000円での積み立ての場合
積立開始年齢 | 積立元本 | 運用益 | 総額 |
22歳 | 2,280,000円 | 1,964,647円 | 4,244,647円 |
30歳 | 1,800,000円 | 1,113,684円 | 2,913,684円 |
40歳 | 1,200,000円 | 441,510円 | 1,641,510円 |
■月10,000円で積み立ての場合
積立開始年齢 | 積立元本 | 運用益 | 総額 |
22歳 | 4,560,000円 | 3,929,293円 | 8,489,293円 |
30歳 | 3,600,000円 | 2,227,369円 | 5,827,369円 |
40歳 | 2,400,000円 | 883,020円 | 3,283,020円 |
■月15,000円で積み立ての場合
積立開始年齢 | 積立元本 | 運用益 | 総額 |
22歳 | 6,840,000円 | 5,893,940円 | 12,733,940円 |
30歳 | 5,400,000円 | 3,341,053円 | 8,741,053円 |
40歳 | 3,600,000円 | 1,324,530円 | 4,924,530円 |
■月23,000円での積み立ての場合
開始年齢 | 積立元本 | 運用益 | 総額 |
22歳 | 10,488,000円 | 9,037,374円 | 19,525,374円 |
30歳 | 8,280,000円 | 5,122,948円 |
13,402,948円 |
40歳 | 5,520,000円 | 2,030,946円 | 7,550,946円 |
■月50,000円での積み立ての場合(設定できるのは自営業等のみ)
開始年齢 | 積立元本 | 運用益 | 総額 |
22歳 | 22,800,000円 | 19,646,466円 | 42,446,466円 |
30歳 | 18,000,000円 | 11,136,844円 |
29,136,844円 |
40歳 | 12,000,000円 | 4,415,100円 | 16,415,100円 |
■月68,000円での積み立ての場合(設定できるのは自営業等のみ)
開始年齢 | 積立元本 | 運用益 | 総額 |
22歳 | 31,008,000円 | 26,719,194円 | 57,727,194円 |
30歳 | 24,480,000円 | 15,146,108円 |
39,626,108円 |
40歳 | 16,320,000円 | 6,004,536円 | 22,324,536円 |
※運用利回りはいずれも3%を想定
iDeCoは積み立てた年数を強みとして資産形成を行っていく制度です。年齢が若く年収が少ない場合は5,000円からでもよいので始めてみましょう。逆に40代以降など遅めの年代からiDeCoを始める場合は、できるだけ満額に近い設定で少しでもリターン増を目指すことが重要です。
また、iDeCoは月5,000円からでも設定はできますが、所得税や住民税の節税の面から見ると、月額10,000円以上に設定すると節税効果が実感できる程度までに上がってくると言われています(平均的給与で年間20,000円~40,000円程度の節税効果)。そのため余裕があるようなら10,000円以上の設定をすることをおすすめします。
まとめると、年齢が若く年収が少ない場合は月5,000円からでも始める、節税メリットを感じたい場合は月10,000円以上に設定する、年齢が高いもしくは年収が高い場合は最初から上限額で設定する、というのが適切な掛金と言えるかと思います。
iDeCoの掛金変更の方法
低めの掛金に設定していたけれど、掛金を増やしたい。もしくは上限金額で掛金設定していたけれど、支払いが厳しくなってきたので掛金を少なくしたいなどの場合、iDeCoは掛金額を1年に1回変更することができます。掛金変更を希望する人は、それぞれの職業に応じた加入者掛金額変更届を金融機関から取り寄せ、記入して提出してください。審査が滞りなく進めば、翌々月の支払から変更が反映されます。
iDeCoの掛金停止の方法
なんらかの理由でiDeCoの掛金を支払うことが困難になった場合は、掛金の支払いを停止することもできます。加入している運営管理機関(金融機関)に加入者資格喪失届を提出することで、掛金の支払いを一時的に停止することが可能です。ただこの場合、停止できるのはあくまで一時的な措置のため、信託銀行に支払う年間792円の資産管理手数料は発生し続けますので注意してください。一時停止措置を行うと「加入者」ではなく「運用指図者」となり、今までに積み立てた掛金での運用を行う形になります。
※掛金の拠出を再開する場合には、再度加入申込み手続きが必要です。
無理せず適切な金額設定を
iDeCoの掛金設定について解説しました。自身の状況に合わせて適切な掛金設定を行うことで、長期運用は可能になります。無理せず長期的な目線で掛金を設定しましょう。