2020/12/05

アセットアロケーション(資産配分)とは?

資産運用においては、アセットアロケーション(資産配分)が重要だとよく言われます。これから投資・資産運用を始める方へ向けて、アセットアロケーション(資産配分)についてできるだけわかりやすく解説します。ポートフォリオとの違いなどといった基本的なことから説明していきます。

アセットアロケーション(資産配分)とは

インデックス投資とは?メリット・デメリットからおすすめの投資信託・ETFまで解説』では、全世界の株式市場全体や日本の株式市場全体、アメリカの株式市場全体、あるいは株式市場だけでなく債券市場や商品市場に投資をするインデックスファンドを通じて資産運用をしていくべきだということを書きました。

ここで、実際に資産運用を始める際には、数多くのインデックスファンドの中から何を選んで、どういう割合で買えばいいのかという問題がでてきます。例えば、「株式市場と債券市場に投資しようと思うがどういう割合で投資すればいいのか?」「日本の株式市場全体とアメリカの株式市場全体をどういう配分で投資すればいいのか?」「そもそも日本の株式市場に投資するインデックスファンドを買う必要はあるのか?」「金や不動産、原油などの商品にも投資したいが、どれくらいの比率で投資すればいいのか?」などといったことです。

「国内株式」「外国株式」「国内債券」「外国債券」「金」「不動産」「現金」といった資産の種類・分類のことを「アセットクラス(資産クラス)」といいます(分類の仕方はこうだと明確に分類されるものがあるわけではないですが、上記は一般的によく出てくる例です)。

アセットアロケーション(資産配分)とは、このそれぞれのアセットクラス(資産クラス)にどのように資産を配分するかを決めることをいいます。

アセットアロケーションとポートフォリオの違い

アセットアロケーションと混同しやすい用語に「ポートフォリオ」があります。アセットアロケーションがどのアセットクラス(資産クラス)に資産を配分するかを決めることに対して、ポートフォリオは「具体的な金融商品」が組み合わさったものとなります。

例えば、「楽天・バンガード・ファンド(全米株式)」と「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」を50%ずつ保有していた場合、アセットアロケーションとしては米国株式に100%となるのに対して、ポートフォリオとしては「楽天・バンガード・ファンド(全米株式)」と「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」を50%ずつ保有しているということになります。

色々な商品を組み合わせて運用資産を分散させているつもりが、アセットアロケーションとしてみると実はかなり偏っていた、ということもありますので、保有している商品の投資対象が何かということは注意して見るようにしてください。

アセットアロケーションで投資の9割が決まる

ウォーレン・バフェットが師と仰ぎ、「バリュー投資のプロ」「ウォール・ストリートの最長老」と呼ばれた投資家ベンジャミン・グレアムは、投資資産をどのように配分するか(まさにアセットアロケーションです)が最初の投資判断であるべきだと考えていました(今から50年以上も前の話です)。

「機関投資家が運用するトータルリターンの違いのうち、94%がアセットアロケーションで説明できる」とした1986年の画期的な研究に始まり、さまざまな実証研究でも、「資産運用がうまくいくかどうかの9割以上が、個別銘柄の選択ではなくアセットアロケーションで決まる」ということが明らかになっています。

最適なアセットアロケーションは人によって違う

このように、「資産運用はアセットアロケーションで9割が決まる」というほぼ「正解」が出ているにも関わらず、「こういうアセットアロケーションにするのが良い」という「正解」はありません。特に、個人投資家にとっては、個人それぞれの状況によって最適なアセットアロケーションというのは大きく変わってきます。投資を始めるにあたり、最初に投資の目的・目標を設定することが大切なのはそのためです。

(参考:『これから投資を始める人への17のアドバイス』)

資産運用を始めるというと、どうしてもどの銘柄が有望なのか、どの銘柄が儲かりそうなのかといったことを考えるものだと思いがちですが、ベンジャミン・グレアムが「最初の投資判断は資産配分の決定であるべきだ」と言うように、投資目的を決め、目標設定をし、それに基づいたアセットアロケーションを決めることに一番時間を使うべきです、(どの銘柄が有望なのかを考えること自体を否定するつもりはありません。ただ、そういったことは、あくまで、アセットアロケーションを決め、その範囲内の中で必要な部分としてあるのであればするべきものです)。

アセットアロケーションを考える時に押さえておくべきポイント

自分にとっての最適なアセットアロケーションを考える上でまずはじめに大切なことは、「自分はどれくらいの損失に耐えられるのか」を認識することです。基本的には、自分の損失に耐えられる金額に合わせて、運用資金の中の現金比率で調節するのが良いでしょう。

ここでもう一つ重要なことは、資産運用をする全体の資金(ここからアセットアロケーションを決めます)と「生活防衛資金」を分けて考えることです。つまり、アセットアロケーションの中の現金と、全資産の中の現金はイコールにならないということです。生活防衛資金をいくら残しておくべきかということについても、これも人それぞれという回答になってしまいます。1ヶ月分の生活費があれば十分と考える人もいれば、2,3年は収入が何もなくても生活できる資金を残しておきたいと考える人もいます。人それぞれの生活スタイルや将来に対する見通し、現状の月々の収支の状況などによって大きく変わると思います。人それぞれではありますが、基本的には「けっして運用資産から取り崩すことのない金額(あらかじめ想定している場合を除く)」を最低限運用資産以外に持っておくことが重要です。将来使うことが決まっているお金を運用資産に組み込んでしまうのも、基本的には得策ではありません。

生活防衛資金をいくら残すか、その上で現金比率をどうするかといったことは、本当に人それぞれで違うものです。自分自身で考えることが難しい場合は、信頼できる専門家に相談するのも一つです。ただ金融商品を提案してくるだけではなく、こういったレベルで相談できる専門家かどうかというのが、質の高い金融アドバイザーかどうかを判断する大きな要素になるでしょう。

債券ではなく現金でリスクを調整する

アセットアロケーションで重要なのは現金比率と書きましたが、多くの海外の資産運用の名著では、アセットアロケーションで重要なのは「株式:債券」の比率だと結論づけています。例えば、ベンジャミン・グレアムの古典的名著『賢明なる投資家』では、「基本的なルールとして、株式の割合を25%〜75%、債券の割合は75%〜25%の間にすべきである」と言っています。また、若いうちは株式の比率を高く設定し、年齢と共に債券の比率をあげていくべきだということは国内外の多くの資産運用の本で言われていることです。日本国内でも、昔から「財産三分法」といって株式・債券・不動産の三つに均等に投資する方法が知られていたり、国内株式・国内債券・外国株式・外国債券を(場合によってはこれに不動産や金なども)バランスよく配分するべきだという話もよく聞きます。

最近では、「株式:債券」で語られているのはアメリカをベースとした話で、必ずしも今の日本人の運用には適切とは言えないといった話もよく聞きます。その場合、リスクの低い資産として、「国内債券」(特に個人向け国債「変動10年」)を勧めていることが多いです。もちろん資産の一部に「国内債券」を組み込むことはけっして悪いことではありませんが、実際の購入の手間や途中解約の条件、現状の低い金利(2020年現在で、最低保証金利の0.05%)を考えると、あえて個人向け国債に資産を振り向ける必要はないかもしれません。

このような現在の金利水準等も考えると、アセットアロケーションの中の現金比率でリスクは調整するのが適切でしょう。これまで書いてきた通り、「最適なアセットアロケーション」は人それぞれです(他にも、例えば、国内株式はどれくらい持つべきなのか、そもそも持つ必要があるのか、など人によって検討することは無数にあります)。資産運用について考えたり、投資の勉強をするときにも、是非この部分に一番時間を使ってみることをおすすめします。


なお、アセットアロケーションの中に現金を組み込まず、すべてリスク性のある資産に振り向けている状態を、一般的には「フルインベストメント」と言います。フルインベストメントが最適な人ももちろんいますので、これも人それぞれ、ということになってきます。

年に1回リバランスを

運用を始めると、時間とともに当初決めたアセットアロケーションが崩れてきます(例えば、株式:債券=50:50のアセットアロケーションで、株式の資産が半分になり、債券の資産は変わらなかった場合、株式:債券=33:67に変化します)。この、変化したアセットアロケーションを当初の比率に戻す調整をすることを、「リバランス」といいます。

年に1回、このリバランスをすることによって、知らずに取っていたかもしれない許容度を超えたリスクの調整ができますし、これもまた、多くの研究で、リバランスした方が効率的なリターンを得られるということも明らかになっています。一方で、一度もリバランスをしない方が、より大きな長期的リターンを獲得できる可能性もあるということも認識しておくべきです。

リバランスは、厳密な比率に合わせるためにやる必要もありません。ある程度ざっくりとした範囲内で捉えるのが良いでしょう。最低年に1回(もしくは2回くらい)は、自分のポートフォリオのアセットアロケーションを確認はするべきですが、結果としてリバランスはしないというケースも多々あって問題ないでしょう。

また、リバランスの際に注意したいのが、税金です。利益が出ているものを売却すると、税金が発生します。資産形成上は、税金は払わないで済むのであれば払わない方がリターンは大きいですし、支払うべき税金はできるかぎり先送りした方が良いです。特に積立投資などで資産形成をしている期間においてリバランスをする場合は、すでに利益がでているものを売却してリバランスを行うよりも、その先の投資先を調整することで実質的にリバランスをしていく方が良いです。

アセットアロケーション自体の見直しは慎重に

自分のリスク許容度を認識することは、自分で思っている以上に難しいことです。特に資産運用をはじめた最初の頃は、わずかな価格の上下で一喜一憂してしまいますし、少し損をしただけでも慌てふためいてしまうこともあるかと思います。ある程度のリスクを取る以上、リターンがマイナスになることは十分にあり得ます。

アセットアロケーションを、年齢などとともに見直すことは時には必要です。また、最初の頃は、そもそも決定したアセットアロケーションが、適切ではないこともよくあることです。こうした時に、アセットアロケーション自体を見直すことは必要なことですが、慎重に行うべきです。特に、マーケットの要因(今の資産が増えている・減っている)によってアセットアロケーションを変えることのないように注意してください。

ただ、理論上や言葉では理解できても、実際にその通りに行動することは本当に難しいことです。結局は、実際に自分自身でいろいろ実体験を重ねながら、こうした理論や考え方の勉強を続けていくのが、理想的な資産運用に近づく一番の道なのかもしれません。

ロボアドバイザーなどを使うのもあり

資産運用は、一度おおまかなことを体系的に理解し、アセットアロケーションを決め、それに合わせた商品の選択をすれば、その後は特にやることはありません。ただただ、機械的な作業を続けていくだけです(もちろん、その後も勉強し続けるのは大切なことです)。

ただ実際には、こういったことを考えることすら煩わしいという人もいるかと思います。こうしたとき、「自分に合ったアセットアロケーションを設定し、定期的にリバランスも自動でしてくれる」のがロボアドバイザーやバランスファンドです。ロボアドバイザーやバランスファンドは、こうした「煩わしい」ことを代わりにやってくれるかわりに、だいたい年間1%ほどの手数料を取ります。

資産運用について正しく勉強した人にとっては、この年間1%というのはとても高いコストですが、そうはいっても、現実問題として、「資産運用を考える時間はない」「資産運用なんかより今は1秒でも仕事のことを考える時期だ」という方も非常に多いのが事実です。そういった方でも、資産運用を後回しにせず(資産運用は早く始めれば始めるほど良いです)、自分のリソースもそこまで割かないで済むという面で、まずはロボアドバイザーから始めてみるのも良いでしょう。まずはロボアドバイザーでもいいので始めてみて、自分でやった方がいいなと思えば、その時に自分で始めてみるのも良いかもしれません。

アセットアロケーションとインデックス投資を覚えておけば十分

以上、これから投資を始める方へ向けて、アセットアロケーション(資産配分)について基本的なことを解説しました。自分にとって最適なアセットアロケーションを決めて、その比率にもとづいてインデックス投資を行えば、資産形成の準備はほぼ完了です。その先にやることはほとんどないと言っても良いでしょう。

これまで何度も書いてきた通り、最適なアセットアロケーションや、そもそもの資産全体のうちのどれくらいを運用資産にするべきかというのは人によって大きく変わってきます。リスク許容度についてはご自身でしっかりと判断されるか、信頼できる専門家に相談することをおすすめします。

(参考:『インデックス投資とは?メリット・デメリットからおすすめの投資信託・ETFまで解説』)

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