2021/01/12

「激務の背景はやりきるプロ意識」野村総合研究所の社員インタビュー【年収や転職市場での評価まで】

野村総合研究所(野村総研、NRI)のITソリューション部門に新卒で入社した方へのインタビュー記事。「激務」であることでも有名な野村総研の働き方の実態やその背景、高給と噂される年収イメージ・昇進イメージ、転職市場での評価までお聞きしました。

学生時代からコードを書き、新卒で野村総研へ入社

−−−はじめに、これまでの経歴を簡単に教えてください。

都内の私立大学の文系学部を卒業後、新卒で野村総研に入社しました。野村総研ではITソリューション部門に所属し、保険ソリューション事業本部で働いていました。主に生保系や損保系のプロジェクトを担当していました。数年間(編集部注:5年〜15年)の勤務の後、事業会社に転職しました。


−−−野村総研のITソリューション部門を志望した理由を教えてください。

もともと文系でしたが、学生時代からコードを書いたりしていて、ITが好きでした。総合商社も受けていたのですが、そこでもIT関連のプロジェクトをやりたいと言ってましたね。野村総研では、実は経営コンサル部門に行きたかったんです。ですが、うっかりITソリューション部門に応募していたみたいで。面接の時にすごく驚いたのですが、内定をもらうことができました。結局、業界No.1というブランドや利益率の高いビジネス、教育体制もしっかりしているなど、自分のファーストキャリアに相応しい会社だと思って入社を決めました。


−−−経営コンサル部門に行きたかったのに、うっかりITソリューション部門に応募してしまったんですね。初歩的な質問で恐縮ですが、そもそも野村総研とはどんな会社でどんな部門があるのでしょうか?

野村総研は、日本初の民間シンクタンクである野村総合研究所と、日本で初めて商用コンピュータを導入したシステム開発会社である野村コンピューティングシステム株式会社が合併して誕生した会社です。

お客様の問題を先取りして解決策を導いていく「ナビゲーション」から、具体的な解決策を実施・運用していく「ソリューション」まで、一貫したトータルソリューションの提供を強みにしています。社内は、先見力(「ナビゲーション」)を担う経営コンサルティング部門と、実行力(「ソリューション」)を担うITソリューション部門に分かれて活動しています。

入社4年でシステム開発の全工程を経験

−−−ITソリューション部門について、もう少し詳しく教えてください。

仕事は大きく、顧客に必要な業務設計を行い独自のシステムを開発する仕事と、既に開発済みのシステムを売って利用料をいただく仕事の2つあります。競合はアクセンチュアや日本IBM、NTTデータです。三大顧客と言われているのは、野村證券、セブン&アイ・ホールディングス、かんぽ生命です。


−−−システム開発と一言で言っても、業務は多岐にわたるかと思います。詳しく教えていただけますか?

まず、システム開発では次のような工程が行われます。

・要件定義:顧客の要望をヒアリングし、コストや要件を明らかにする。

・設計:システムの概要と詳細を図にする。

・コーディング:設計に沿って実際にプログラム言語を書き出す。

・単体テスト:個々のシステムが設計書通りに動くか、テストする。

・連結/総合テスト:システム同士が上手く連携するか、テストする。

私の場合は、入社1年目で要件定義以外の工程をすべて、2,3年目で要件定義、4年目には全工程の土台となる基盤の検証等に携わり、入社数年のうちにシステム開発を一通り経験することができました。


−−−入社4年ほどでシステム開発の一通りの工程を経験できるのですね。若手社員は社内でどのようなキャリアパスを歩まれるのですか?

3通りに分かれます。1つ目は「プロジェクトマネジャー」で、パートナー企業などを取りまとめて大小さまざまのプロジェクトを遂行します。早くて入社2年目で5,000万円規模のプロジェクトのマネジャーにアサインされます。2つ目は「システムアーキテクト」です。業務を理解した上で、それを公式にあてはめシステムのアウトラインをデザインします。3つ目は「ビジネスアナリスト」で、より業務寄りの戦略を立てます。これら3つのキャリアパスは、プロジェクトの空き状況によりアサインされていくので、若いうちは自分の意志が反映されにくいです。ですが、選べないわけではなく実際に自分の希望したキャリアパスに進んでいく人もいます。

残業100時間でも少ないと喜んでいたことも

−−−野村総研というと、やはり「激務」というイメージが強いです。激務の定義も色々あるかとは思いますが、まずは勤務時間はどうだったのでしょうか?

今は働き方改革で、1ヶ月80時間超、3ヶ月連続65時間超の残業は禁止されているみたいです。つまり、毎日9時〜21時の勤務時間を目標にしているってところでしょうね。これでも多いと感じる人もいるかもしれませんが。

でも昔は規制がなく、1ヶ月100時間の残業でも少ない方だと大喜びしていました。ひどい時には終電がなくなるまで働いて、家にも帰らず職場近くのホテルで仮眠、そして翌日も早朝から出勤。これを1年間続けたチームもあります。ただし部署によって残業量はかなり違って、例えば証券系の部署は基本定時退社だと聞きました。


−−−長時間労働の背景には何があったのでしょうか?

野村総研には、全社共通の社風として「やりきる」「あきらめない」というマインドがあります。どんなに複雑なシステムでも、絶対に投げ出さないというプロ意識が非常に強いです。予算20億円のプロジェクトに対して、50億円の損失を出すといった大赤字を出してでも、今お話したように1年間毎日ほぼ徹夜に近い状況であっても、お客様の信頼や企業ブランド維持のため食らいつく風習があります。開発を途中で投げ出したベンダーに対して高額な違約金を提示された、という報道もよくありますが、野村総研は絶対に投げ出しません。


−−−高いプライドを持って仕事しているからこその激務なんですね。体育会系と言われているのも納得できます。

野村総研ではITスキルだけでなく、人間力・リーダーシップが徹底的に身に付きました。お客様やパートナー企業と良好な関係を築くため、ビジネスマン以前に人間として一流であることが求められ、上司から毎日「お前は人間失格」と言われた時期もありました。上下関係が崩れることはないですし、体育会系であるのは間違いないですね。ただ、風通しは良かったです。私自身、上司の作ったプロジェクト計画書を全部書き換えるなど、生意気を言っても受け入れてもらいました。

あと、雰囲気に関しても部署によってだいぶ違いがあります。お客様先の業界カラーが色濃く反映されるので、金融系部署はお堅い、産業系部署は陽気、といった具合です。

35歳で年収1,200万円に

−−−野村総研の年収や昇進イメージについて教えてください。

野村総研は裁量労働制だったので、長く残業すればその分残業代が出て給料が多くもらえるというわけではなかったです。見込残業時間が35時間と設定されており、それ以上働いても給与に影響がないのですが、基本給がとても良かったので十分満足していました。

学部卒で年収450万円からスタート。1年で約50万円ずつ、数年経つと1年で約80~90万円ずつ年収が上昇するようになり、34,35歳には1,200万円になります。ここまでは年功序列で全員が同じように昇給します。その後は頭打ちになっていて、熾烈な出世争いを乗り越え、部長になると2,000万円、本部長クラスだと6,000万円ほどになります。

仕事がハードなので、「給料が良い」をモチベーションに働くのはとても大切なことだと思っています。

野村総研からの転職者は、外資系コンサルか事業会社が多い

−−−給与面でもやりがい面でも満足されていたとのことですが、なぜ転職しようと思ったのですか?

きっかけは2つあります。ひとつは、事業会社で、システム開発以前のサービスを作るフェーズから携りたいと思ったからです。野村総研のようなシステムインテグレータは、お客様にシステム等のソリューションを提供するだけで、お客様の事業にとって本当にそのシステムが必要なのかを検討する段階から関わることができません。図でいうと、要件定義以前の「IT計画」の部分にも携わりたいと思っていました。また、学生時代のインターンでは、ゼロから事業を立ち上げたことがありました。その時の面白さが忘れられなかったこともあり、事業会社で働きたいと思うようになっていました。

もうひとつの理由は、仕事がハードすぎたからです。私の部署は、社内でも特に労働環境が悪かったようです。"一流"への執着が強すぎる上司から、パワハラを受けることもありました。長く働き続けるためにも転職を考えました。


−−−野村総研から転職される方は多いのでしょうか?

私のまわり転職している人が多いです。今でも時々、転職の相談にのっています。転職者のほとんどは、BCG(ボストン コンサルティング グループ)やガートナーといった外資系コンサルティングファームか、私のように事業会社へ行っています。

若くても転職市場で評価される野村総研出身者

−−−新卒で野村総研に入社することに対して、どのように考えていますか?

野村総研はファーストキャリアとしてとても良い会社でした。ビジネススキル・ITスキル共に身に付きましたし、若手の頃から裁量権が大きく経験を積めました。

野村総研での最初の数年間の経歴を話すだけで、満足のいく転職活動ができている人が非常に多いです。私自身も、入社数年目の時も、若手にしてはかなり大規模のプロジェクトをマネジメントしていたので、他社社員に話すと驚かれることもしばしばありました。

野村総研は社員一人当たりの仕事量・経験が圧倒的に多く、転職市場では高く評価してもらえると思っています。


−−−ありがとうございました。


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参考:

野村総合研究所社員の年収・貯金などの資産データ一覧|OpenMoney

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