2022/05/26

20代で住宅ローンを組みマイホームを持つメリット・デメリットとは

人生の中で一番高い買い物と言われるマイホームですが、近年は20代のうちに頭金なしで借り入れする人も増えてきている傾向にあります。実際20代で住宅ローンを組むことは可能なのかという点から、20代のうちに住宅ローンを組むことのメリット・デメリット、利用する際の注意点までわかりやすく解説しますので参考にしてください。

20代で住宅ローンを組む人はどれくらいいる?

国土交通省が令和2年に行った住宅市場動向調査報告書によると、初めて住宅を取得した年齢とそのうち20代の割合は建物の種類別に以下の通りとなっています。

建物の種類 平均取得年齢 20代の割合
注文住宅 38.9歳 11.8%
分譲戸建住宅 37.4歳 11.4%
分譲マンション

39.3歳

7.2%
中古戸建住宅 43.8歳 6.7%
中古マンション 45.0歳 6.7%

いずれの種別でも平均年齢は30代もしくは40代となっています。そして、全体の約1割が20代でマイホームを取得していることがわかります。

また、住宅金融支援機構が2020年10月から2021年3月までに住宅ローンの借り入れを行った人1,500人に対して実施したアンケートのうち、20代の割合は12.2%でした。

年代 割合
20代 12.2%
30代 56.4%
40代 25.9%
50代 5.5%

ボリュームゾーンとしては30代が圧倒的に多くなっていますが、どちらのアンケートも1割程度は20代がいることがわかります。

参考:住宅市場動向調査報告書(国土交通省)

参考:住宅ローン利用者の実態調査(住宅金融支援機構)

20代で住宅ローンは組める?

結論から言うと、20代でも住宅ローンを組むことは可能です。20代はまだ年収も低く勤続年数も短い場合がありますが、ある程度しっかりした企業に勤めていれば金融機関は今後の伸びしろを評価してくれるケースが多くなっています。また、住宅ローンを組む際に金融機関が大きなリスクとして注意しているのは完済時の年齢です。例えば40代でローンを組んで定年後も返済が終わらない計算だと、大きく収入が減る定年後の返済にはリスクがあると判断されます。その点20代で住宅ローンを組む場合は、定年までの年齢で余裕を持って完済することができるため金融機関にとってはリスクが低いと見なされる傾向にあります。

もちろん信用情報に問題がある・転職回数があまりにも多いなどの場合は審査に通ることが難しくなってしまいますが、その他問題がなければ20代でも問題なく住宅ローンを組むことができると言えるでしょう。

20代で住宅ローンを組むメリット

1. 返済期間を長く設定することができる

20代で住宅ローンを組む大きなメリットは、返済期間を長く設定することができるという点です。返済期間が長くなれば毎月の返済額を少なくすることができ、余裕を持った返済計画を立てることができます。通常住宅ローンの最長借入期間は35年ですが、近年では40年や50年といった長期ローンも新たなプランとして出てきており、利用する人も増えてきています。現在の超低金利時代においてはなるべく長く借入期間を設定し、自己資金に余裕を持ちながら返済したいと考える人が多い傾向にあります。20代のうちに住宅ローンを組むことで、時間的に余裕を持ちやすいのは大きなメリットです。

2. 定年までに完済を目指しやすい

1. のメリットともつながりますが、早くに住宅ローンを組むことで定年となる年齢までに完済を目指しやすくなります。例えば25歳で30年ローンの住宅ローンを組んだ場合、55歳で完済となり定年までに余裕ができます。完済後マイホームは資産となり、その後得た給与は老後資金として蓄えることができるため老後資金の形成にも非常に有利になります。30代後半~40代で住宅ローンを組む場合は定年までに完済を目指そうとすると月々の負担が大きくなる可能性が高いので、定年までに完済しやすいというのも20代で住宅ローンを組む大きなメリットです。

3. マイホーム購入までの家賃負担が少ない

マイホーム購入が早い場合、それまでの賃貸住宅の家賃負担が少ない点もメリットになります。もし25歳で家を買った場合と35歳で家を買った場合では10年分の家賃負担の違いとなり、仮に家賃が10万円だとすると1,200万円の差となります。賃貸住宅に払った家賃は自分の資産になることはないため、この金額負担があるかないかは大きな差と言えるでしょう。

4. 団体信用生命保険に加入しやすい

住宅ローン借入時には、団信(団体信用生命保険)の加入を義務づけている金融機関がほとんどです。団信とは、債務者が死亡もしくは高度障害状態になった場合に住宅ローンの残債がなくなるという保険の一種です。団信に入ることにより、返済している人に何かあった際にも遺された人に返済の義務がなくなり、マイホームに住み続けることができます。

団信は保険なので加入時に審査があり、持病がある場合などは加入できない場合があります。住宅ローン利用に団信が必須な金融機関の場合、団信に加入できないとローンを組むことができないため団信に加入できるかは重要なポイントです。その点、20代で住宅ローンを組む場合は健康上の不安がないケースがほとんどなので、問題なく団信に加入することができるというメリットもあります。

20代で住宅ローンを組むデメリット

1. 審査に通りにくい可能性がある

20代でも住宅ローンは問題なく組める場合が多いですが、30代以降と比べて審査に通りにくい可能性もあります。審査基準が厳しい金融機関だと勤続年数が3年以上でないと審査に通らないケースもあり、20代には不利になります。また、20代はまだ年収が低いため将来の伸びしろを考慮してもらえないと年収面でも審査が通りにくい可能性があります。傾向としてはネット銀行の住宅ローンの場合、個別の事情を考慮せず数字だけ見て判断することが多いため、店舗型金融機関に足を運び担当者に相談するという形の金融機関の方が審査に通りやすいと言えるでしょう。

もし大手銀行や地銀などの住宅ローンの審査に通るのが難しい場合は、勤続年数や年収に対する審査項目がないフラット35を検討するのも一つの手段です。長期固定金利となるため現状変動金利よりも金利は高くなりますが、審査の面では20代でも通りやすい住宅ローンと言えます。

参考記事:『フラット35とは?民間住宅ローンとの違いから利用する上での注意点まで

2. 借入可能額が少ない可能性がある

デメリットの1. とも関連しますが、20代でまだ年収が低い段階で住宅ローンに申し込んだ場合、借り入れできる上限金額が低くなる可能性があります。借入可能額が少ないと希望するスペックの家を購入できないこともあるため、この点はデメリットです。しかし20代でも例えば大手企業に勤務している場合など、年収に対する借入限度額を通常より多く設定できる金融機関もあります。また、どうしても借入限度額を上げたい場合には共働きであればペアローンを組んで夫婦の収入を合算することも可能ですので相談してみましょう。とはいえ、自分の現状の年収に見合わない額の借り入れを行うことはリスクにもなりますので注意してください。

3. 返済期間が長いと、利息の総支払額も大きくなる

2021年10月現在超低金利時代が続いていますが、20代で住宅ローンを組み返済期間が長くなるとその分利息の支払いも多くなるというデメリットもあります。返済期間を長く設定すると月々の支払いは少なくすることができますが、その分自己資金に余裕ができた場合には積極的に繰り上げ返済を行うなど、自身のライフプランに合わせて柔軟な返済を行いましょう。

4. 自己資金を用意しにくい

20代で住宅ローンを組む場合、親からの援助などが得られないと頭金や諸費用をあわせた自己資金を貯める時間が少ないというデメリットもあります。自己資金があまりない場合にはフルローンに近い形で融資を受けることとなりますが、住宅金融支援機構のデータによると住宅ローンの融資率は90%超100%以下が一番多くなっており、全体の平均として見てもほぼフルローンに近い形で融資を受けている人が多いことがわかります。自己資金を貯める期間が短いのはデメリットではありますが、住宅ローンを利用する上ではそこまで気にしなくてよいポイントかもしれません。

参考:住宅ローン利用者の実態調査(住宅金融支援機構)

5. 人生の不確定要素が多い

20代で住宅ローンを組んでマイホームを持つ一番のデメリットとして、人生の不確定要素が多いという点が挙げられます。30代、40代以降に住宅ローンを組む場合と比べて相対的にライフプランの不確定要素(結婚、出産、離婚、転勤、転職など)が多いため、返済中に子供が増え支出が増えることにより返済が厳しくなったり、マイホームが手狭になったりという問題に直面しやすくなります。

数年後、数十年後に自分がどんな状況であるかは予測することが難しいため、この後の注意点で述べるように20代で住宅ローンを組む場合は変化が訪れたタイミングで売りやすいような物件を選ぶことが大切です。逆に、ライフプランが固まってからマイホームを買おうと思っているとずるずるとタイミングを逃してしまった、というケースも多々あります。ある程度の変化はあるものとして、早めのタイミングでマイホームを持っておくのは悪い選択肢ではないでしょう。

20代で住宅ローンを組む際の注意点

1. あらかじめ住み替えを視野に入れて物件探しをする

デメリットの部分でも書きましたが、20代は今後の不確定要素が多いため長く住み続けることが難しい場合もあると理解しておかなければいけません。住み替えの際に慌てないためには、はじめの物件選びの段階で資産価値が下がりにくい(駅近、周辺環境が便利、学区がよい、奇抜なデザインの建物ではないなど)かどうかをよく見極めて物件を決める必要があります。時間が経っても売りやすい物件であれば、自分の状況に合わないマイホームに無理して住み続ける必要もありません。

2. 住宅ローンだけが非常に低金利であるということを忘れない

20代のうちに住宅ローンを利用してマイホームを持つと、「どんなに大きな買い物でもローンを組めば買える」という思考になり借り癖がついてしまう人も中にはいるようです。住宅ローンは変動金利で0.3~0.5%程度と非常に低金利(2021年10月現在)ですが、これは住宅ローンに限った話であり、その他カードローンなどは住宅ローンと比べ物にならないくらい高金利であることは知っておきましょう。そして住宅のように全額貯めてから購入することが難しい商品の場合は別ですが、それ以外の物に関しては資金を貯めてから購入することを基本にすることが大切です。住宅ローンの健全な返済のためにも、借り癖がつくことのないようにしましょう。

無理のない資金計画を立てよう

20代で住宅ローンを組むメリット・デメリットについて解説しました。早くからマイホームを持つことでメリットも多くありますが、若いからこそ気をつけたい注意点もあります。住宅ローンは何歳から組むとしても、無理のない資金計画を立てることが大切です。20代でマイホームを検討する場合は、自身のこれからのライフプランをしっかり考えた上で健全な返済ができるようにしましょう。

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