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2022/06/15

妊娠・出産費用は医療保険でカバーできる?

妊娠・出産にかかる費用と医療保険について解説します。そもそも妊娠・出産にはどのくらい費用がかかるかというところから、公的医療保険でもらえる費用の内容とそのもらい方、民間医療保険でカバーできる内容、民間医療保険を検討する際の注意点までわかりやすく解説しますので、参考にしてください。

妊娠・出産にかかる費用とは

妊娠・出産は嬉しい出来事ですが、お金がたくさんかかると漠然と思っている人も多いのではないでしょうか。具体的に妊娠・出産までにかかる平均の費用は以下の通りとなっています。

妊娠中にかかる費用:合計約6万円~10万円

妊娠すると、一週間~四週間に一度の周期で妊婦検診があります。妊娠に関する受診には健康保険が使えないため全額実費となりますが、自治体から妊婦検診に使える補助券がもらえるため、毎回の手出し金額は数千円程度となります。その他初期に行う血液検査などの費用を含めると、妊娠期間中にかかる費用は平均して6万円~10万円程度となっています。

出産時にかかる費用(自然分娩の場合):合計約50万円~60万円

出産時、特に異常がなく普通分娩の場合は5~6日ほどの入院となり、かかる費用は平均して50万円~60万円程度となります。出産する場所が個人病院なのか、大学病院なのか、助産院なのかによって費用が異なり、出産する都道府県によっても平均の費用が異なってきます。全国で出産費用が最も高いのは東京都で平均が62万円となっており、最も低いのは鳥取県で平均が39万円となっています。また、平均の金額は50万円~60万円ですが、個室を希望した場合や土日祝日に出産となった場合は費用が加算となる病院もあります。病院のサービス内容によって金額は大きく変わってきますので、注意してください。

出産時に係る費用(帝王切開の場合):合計約60万円~80万円

帝王切開とは、何かしらの異常があった場合に妊婦さんのお腹をメスで切り、赤ちゃんを取り出す手術のことです。帝王切開は健康保険が適用される医療行為であり、地域や病院の違いに関係なく緊急帝王切開は22万2,000円、あらかじめ予定して行われる選択帝王切開は20万1,400円の費用がかかります。健康保険が適用されるため自己負担は3割となりますが、帝王切開の場合は自然分娩よりも入院期間が2~3日長くなる傾向があるため入院費用も大きくなり、平均して60~80万円となります。

※帝王切開での出産数は増加している

厚生労働省のデータを見ると、帝王切開での出産数は年々増加しており平成29年度には25.8%と、4人に1人以上の人が帝王切開での出産を行っています。

年度 帝王切開での出産の割合
平成5年 13.8
平成11年 17.4
平成17年 21.4
平成23年 24.1
平成29年 25.8

参考:平成29年(2017)医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況(厚生労働省)

妊娠・出産時に適用される公的医療保険制度

妊娠・出産時には上記のようにまとまったお金が必要となってきますが、基本的には健康保険が適用できず自費となります。しかし、出産時には別途状況によって利用できる以下のような公的医療保険制度が整えられています。

傷病手当金

傷病手当金とは健康保険に加入している人が利用できる制度で、病気や怪我で会社を休んだ場合に、連続して休んだ4日目以降から標準報酬月額の3/2の金額が支給されます。この制度は切迫流産や切迫早産、悪阻(つわり)など妊娠に関して会社を休んだ場合にも医師の診断書があれば適用されます。

参考:病気やケガで会社を休んだとき(全国健康保険協会)

出産手当金

出産手当金とは健康保険に加入している人が利用できる制度で、出産のために会社を休み、給与を受け取らなかった場合に出産の日以前の42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産の翌日以降56日にわたって給付金を受けられるという制度です。1日あたり標準報酬日額の2/3の給付金を受け取ることができ、出産前後の生活費用として利用することができます。

参考:出産で会社を休んだとき(全国健康保険協会)

育児休業給付金

育児休業給付金とは、雇用保険に加入している人が利用できる制度で、出産手当金の支給日数を過ぎた日から、子どもの1歳の誕生日の前日まで(延長すると最大2歳前日まで)給付金を受けられるという制度です。「育休前の2年間で、11日以上働いた月が12ヶ月以上ある」という条件などがありますが、それらをクリアしていれば育休前の給与の50%~67%の給付金を受け取ることができます。この制度があることで、子どもが1歳になるまではお金の心配なく過ごすことができますが、給付金の支給開始までは数ヶ月ほどタイムラグが発生しますので、事前に貯蓄も行っている必要がある点には注意が必要です。

参考:育児休業給付の内容及び支給申請手続について(ハローワーク)

出産育児一時金

出産育児一時金とは、健康保険か国民健康保険の加入者が出産した場合に受け取ることができる一時金のことです。自然分娩・帝王切開に関わらず、妊娠4ヶ月以上で出産した子ども1人につき42万円を受け取ることができます。

一般的な受け取り方としては健康保険から出産した病院に直接一時金が支払われ、残った差額分を出産した当人が支払うという形になります。この出産育児一時金に関してはもらえる金額が改正ごとに増えてはきているのですが、かかる出産費用も年々上がってきてしまっているため多くの場合差額を自費で支払う必要があります。出産育児一時金があるからと安心するのではなく、出産のための貯蓄は事前に行っておくようにしましょう。

参考:子どもが生まれたとき(全国健康保険協会)

医療費控除

医療費控除とは、その年の1月1日から12月31日までの1年間に1世帯につき10万円以上の医療費を支払った場合に所得税・住民税の控除が受けられる制度です。自然分娩だった場合でも、自費で払った分は対象になるので領収書などはなくさないようにしましょう。また、医療費控除を受けるには必ず確定申告が必要です。確定申告を行わないと控除されませんので注意してください。

【妊娠・出産に関わる費用で、医療費控除の対象となるもの】

・妊婦検診費用

・分娩費用

・入院費用

・通院時に利用した公共交通機関の運賃

・出産の入院の際のタクシー代 など

参考:医療費を支払ったとき(国税庁)

妊娠・出産で民間医療保険は適用できる?

では、妊娠・出産に関することは民間の医療保険は適用になるのでしょうか。結論としては民間の医療保険も公的保険の考え方と同様となっており、正常妊娠・正常分娩に関しては保障の対象外、異常妊娠・異常分娩の場合は保障の対象となるケースが多くなっています。健康保険が適用される帝王切開はもちろんのこと、以下のようなケースでは民間の医療保険の保障対象となります(商品によって若干の違いはあります)。

【異常妊娠・異常分娩となるもの】

・流産

・子宮外妊娠

・妊娠糖尿病

・妊娠高血圧症

・鉗子分娩

・吸引分娩

これら民間の医療保険の対象となるものについては、出産育児一時金など公的制度から給付金を受け取っても減額されることはなく、民間医療保険加入でさらにカバーできることになります。例えば帝王切開で手術給付金+入院給付金を民間医療保険から受け取った場合、手出しで出した金額よりプラスで戻ってきたというケースも少なくありません。また、帝王切開だけでなく意外と多くの症例に民間医療保険が適用されますので、全部自費で払わなくてはいけないと勘違いすることのないよう、あらかじめ自身の医療保険の適用内容について確認しておきましょう。

妊娠・出産に関する民間医療保険の注意点

1. 妊娠中での保険加入は難しい場合がある

民間医療保険では、妊娠中の保険加入について一定週数までは認めている場合と、受け付けていない場合とがあります。妊娠中は妊娠前よりもリスクが高い状態であると判断されますので、保険会社の判断は様々です。中には、妊娠中でも保険加入はできるけれど妊娠や出産に伴う入院や手術では保障されないという条件が付くケースもあります(特定部位不担保)。異常妊娠・異常分娩に備えるために医療保険に加入する場合は、妊娠前に加入しておくのがよいでしょう。

また、1人目の子どもの妊娠時には医療保険に加入しておらず、出産した後に2人目に備えて加入しようとしても、もし最初の出産が帝王切開だった場合は特別条件が付き、加入後一定期間は帝王切開を含め妊娠・出産に関係する事項では保障されないというケースが多いようです。想定していたケースで保障されないということのないよう、保障内容はよく確認するようにしましょう。

2. 女性特約の付加でさらに保障を追加することもできる

通常の医療保険に加入するだけでも帝王切開などの際は保障を受けることができますが、女性特約を付加することでさらに手厚く保障することも可能です。女性特約とは女性特有の疾病に手厚く対応する特約で、妊娠・出産に関する異常事項から乳がん、子宮頸がん、卵巣がん、子宮筋腫、子宮内膜症、甲状腺の障害などを保障します。この女性特約は年々保障対象となる疾病が増えてきており、最近では女性が多くかかりやすいと言われているバセドウ病、慢性関節リウマチ、下肢静脈瘤、胆石症、腎結石・尿管結石などまで保障対象とする商品も出てきました。より手厚く女性がかかりやすい疾病に対応しておきたい場合は、女性特約の付加を検討してみてください。

3. 請求漏れに注意

前述したように、妊娠・出産に関する異常に関しては意外と広い範囲で民間医療保険の保障対象となるのですが、気付かずに請求しなかったというケースが非常に多くあります。例えば出産時になかなか赤ちゃんが出てこれず吸引分娩となった場合にも通常医療保険の保障対象となりますが、それを知らずに請求しないパターンなどが多いようです。一般的に保険金や給付金の請求期限は支払事由が生じた日の翌日から3年以内とされており、その期間内なら請求が可能です。後から気付いた場合でも3年以内であれば諦めずに請求を行いましょう。

医療保険は早めの加入を検討しよう

妊娠・出産費用と民間医療保険について解説しました。妊娠・出産においては何が起こるかわからないので、公的保険に加えてあらかじめ医療保険に加入しておくことが大切です。公的保障についても理解しながら、民間医療保険にて足りない部分をカバーしておきましょう。