2022/04/27

不動産投資でフルローンを組むメリット・デメリット

頭金なしでフルローンを組んで不動産投資を行うメリットやデメリット・注意点について解説します。自己資金なしで最大限レバレッジ効果を得ながら行う不動産投資は魅力的ですが、金利やローンの審査についてなどデメリットや注意点もあります。初心者にもわかりやすく解説しますので、参考にしてください。

不動産投資ローンとは

不動産投資ローンとは、不動産投資のために金融機関から受けることができるローンの名称です。自身が住むための住宅を購入するために組む住宅ローンとは審査基準が異なり、購入する投資物件の収益性なども審査されます。

不動産投資ローンには主に個人投資家が利用するアパートローンと、個人投資家から事業主までより投資規模の大きい人が利用するプロパーローンがありますが、この記事ではアパートローンについて、フルローンを組むメリットとデメリットを解説します。

参考記事:『【初心者向け】不動産投資ローンとは。種類や組み方、手順や審査基準まで

フルローンとは

不動産投資を行う際、多くの人は不動産投資ローンを組むことになります。この時、通常は自己資金(頭金)を物件の1割~2割程度用意し、残った金額分を融資で賄います。それに対して自己資金を入れずにすべての物件取得費用を融資で賄うことを「フルローン」と言います。(物件購入に関わる諸費用は自己資金で賄うため、自己資金が全く不要になるわけではありません。諸費用も含めて物件取得費用以上の融資を行うことを「オーバーローン」と言います。)フルローンにすると借入金額が大きくなるため、よりキャッシュフローを重視して健全な運用を行う必要があります。

健美屋が行っている不動産投資に関する意識調査(2021年5月版)によると、不動産投資を行っていると回答した人のうちフルローンを利用した人の割合は31.4%となっており、約3割の人がフルローンを利用して不動産投資を行っていることがわかります。

参考:第15回不動産投資に関する意識調査

不動産投資でフルローンを組むメリット

1. 資金がほぼなくても不動産投資を行うことができる

フルローンメリットの一つは、資金が少ない状態でも不動産投資を行うことができるということです。「不動産投資は資産が多くある人しか始めることができない」と思っている人も多いと思いますが、フルローンを組むことができれば(諸費用として50万~100万円程度は持ち出しが必要になりますが)自己資金がなくても不動産投資を行うことができます。実際フルローンを利用して、20代の若者が不動産投資を始めるケースは増えているようです。

2. 最大限レバレッジ効果を使うことができる

少ない自己資本で大きなリターンを得ることをレバレッジ効果と呼びますが、フルローンを利用することでレバレッジ効果を最大限活用できるというメリットもあります。

仮に、3,000万円の物件(諸費用100万円)を頭金300万円を入れて購入するケースと、フルローンで購入するケースを比較してみると以下のようになります。

・頭金300万円あり:3,000万円÷(自己資金300万円+諸費用100万円)=7.5倍のレバレッジ

・フルローン:3,000万円÷諸費用100万円=30倍のレバレッジ

このように、フルローンの場合の方が圧倒的に大きなレバレッジ効果を得られることがわかります。レバレッジ効果が高いということは収益が大きくなりやすいということを意味するため、不動産投資の収益も最大化できる可能性があるということです。

3. 団体信用生命保険の保障金額が増える

団体信用生命保険(団信)とは、借主がローン支払い期間中に死亡、もしくは特定の高度障害などになった場合に金融機関へのローン支払いを弁済するという保険制度です。住宅ローンの場合は団信への加入が義務付けられていることが多いですが、不動産投資ローンの場合は団信への加入義務は金融機関によって異なります。

団信はフルローンでなくても加入はできますが、フルローンで団信に加入した場合、必然的に保障金額も増えるというメリットがあります。団信への加入が必須かどうか、加入の場合はどの程度金利上乗せになるのかも金融機関によって異なりますので、加入を検討する場合はよく詳細を確認するようにしましょう。

4. 手元に資金を残しておける

フルローンを組む最大のメリットとも言えるのが、手元に資金を残しておけるという点です。自己資金が残っていると、ローンの返済を行いながらまた次の物件への投資が可能となります。つまり、収益をどんどん拡大できる可能性が出てくるということです。また頭金を使わないことで、手元にある自己資金を今後かかってくるリフォーム費用や教育費や生活費といった予期せぬ支出に充てられるため余裕を持った運用を行うことができます。

不動産投資でフルローンを組むデメリット

1. 月々の返済金額が増える

フルローンを組んで物件を購入すると、当然ですが頭金を投入しない分月々の返済金額(元本+利息)は増えます。月々の負担が大きくなるフルローンだと、空室の場合のリスクはさらに高くなりますので注意が必要です。

例:

3,000万円(諸費用込)の物件を購入する場合(金利は2%、35年返済想定)


毎月のローン支払額 支払総額
フルローン(頭金0) 9.9万円 4,158万円
頭金100万円 9.6万円 4,032万円
頭金500万円 8.3万円 3,486万円
頭金1,000万円 6.6万円 2,772万円

2. 金利上昇リスクがより大きくなる

超低金利時代と言われる現代ですが、今後いつ金利が大幅に上昇するかはわかりません。そうした金利上昇リスクは、フルローンで不動産投資を行っているとより大きくなります。金額が大きい不動産投資では金利が1%上がっただけで100万円単位で金額が変わってくるため、今後の金利状況には注意深くアンテナを張る必要があります。

3. ローン審査がより厳しくなる

不動産投資ローンは、借主の属性や購入物件の収益性などを見て総合的に審査されます。これがフルローンとなると、多くの金融機関がより厳しい審査を行うという点にも注意が必要です。2018年に金融庁が580の銀行・信用金庫・信用組合に対して行った「投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果」では、「物件の購入金額の一部を自己資金で賄わせているかどうか」という質問に対し「2/3以上の案件で頭金の投入を求めている」と回答した金融機関は銀行で88%、信用金庫・信用組合で67%となっています。融資額が大きく融資期間も長くなりがちなフルローンは金融機関にとってリスクの大きい融資であるため、多くの金融機関がフルローンではなく一部自己資金を出すよう求めていることがわかります。フルローンを検討する場合はより審査が厳しくなるということを理解した上で、入念に準備を行う必要があります。

参考:投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果

不動産投資でフルローンを組む際の注意点

1. フルローンが組めるのは限られた物件、金融機関である

フルローンを検討する際の注意点としては、フルローンが利用できるのは限られた物件、金融機関のみであるということが挙げられます。過去の銀行の不正融資問題などを受けて、多くの金融機関が不動産投資への融資審査を厳格化し、フルローンの融資に消極的になっています。金融機関によってフルローンに対する姿勢は異なり、積極的な姿勢だったとしても審査は厳しく行われますので慎重に物件を選定する必要があります。

2. そもそも「自己資金がないからフルローン」という考え方をすべきではない

「自己資金があまりないけど、フルローンが組めるなら問題ないだろう」という考えで不動産投資を検討している人も中にはいると思います。しかし、フルローンのメリットとしてはレバレッジ効果を最大限利用できるという点とともに、「自己資金を手元に残しておくことができる」という点が大きいです。不測の事態に備えて資金を残しておけることがメリットであるため、そもそも自己資金が手元にない場合はフルローンの大きなメリットがなく、逆にリスクとなってしまいます。頭金を入れようと思えば入れることもできるけれど、様々な可能性を考慮してメリットが大きいと判断した場合のみにフルローンを検討するべきだと言えるでしょう。

フルローンのリスクを理解した上で活用しよう

フルローンで不動産投資を行うメリット・デメリットについて解説しました。デメリットや注意点もありますが、不動産投資の最大のメリットであるレバレッジ効果を最大限活用することのできる魅力的な制度です。フルローンを検討する場合は、健全な返済計画を立てた上で上手に活用しましょう。

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