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ベンチャーキャピタル(VC)へのキャリアを在籍者の経歴から考察【VCへ転職するには】

ベンチャーキャピタル(VC)39社374名のデータをもとに、VCへ転職するためにはどのような経歴・キャリアを辿れば良いのかを考察します。MBA保有率を含めた学歴や、新卒での入社業界・入社企業などの職歴、起業経験などのデータからVCへ転職するための道を考察します。またVCごとの在籍者のキャリアの傾向も分析しました。

ベンチャーキャピタル(VC)とは?

ベンチャーキャピタル(以下VC)とは投資ファンドのひとつです。下の表は様々な投資ファンドを比較したものですが、VCの特徴はスタートアップなど高い成長が見込まれる新興~成長企業に対し、ハイリスクハイリターンの投資を行うことです。未公開株を扱うため定義上はPEファンドの一種ではありますが、世間一般的にPEファンドと呼ばれている狭義の意味でのPEファンドと違い、基本的には出資比率が低く、出資先企業の経営に積極的に介入することも少ないと言えます。

VCは、その成り立ちや投資対象によって様々な種類に分けられます。

親会社を持たず、独立した資本を持つ「独立型VC」。それに対し、事業会社が自社の本業強化や新規事業創造のためにベンチャー企業へ投資する機関として立ち上げた「CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)」。最新の研究を事業化するために作られた「大学・研究機関系VC」。金融や証券会社を親会社に持つ投資会社である「金融機関系VC」などが挙げられます。また海外発祥のVCも日本に存在します。

さらに、創業のごく初めの段階やアイディアベースの段階(シード・アーリーステージ)で投資するVCや、創業からしばらく経った上場直前くらい段階(レイターステージ)で投資するVCなど、投資するタイミングによっても様々な特徴を持つVCに細分化されます。

VCの仕事と成功事例

VCは機関投資家や事業会社、個人の資産家などから資金を集め、その資金をベンチャー企業へ投資します。VCごとに関わり方の差異はありますが(採用や広報面で積極的にサポートするVCや、経営に対してアドバイスを積極的にするVC、あるいはその逆で資金を出すだけで口出しも何もしないVCなど)、どのVCも最終的にはIPO(新規株式公開)かM&Aによる株式売却によって利益を得ること(イグジット)を目標とします。したがって、VCの仕事はざっくりではありますが以下になります。

・VCへの出資者の獲得

・投資先の選定

・投資先のイグジットまでのサポート


シード期の代表的なVCのひとつ、East Venturesのメルカリに対する投資案件を見てみましょう。

メルカリの創業後、最初に投資したVCがEast Venturesで、2013年6月に5,000万円を出資し7.7%の株式を取得したと言われています(この時のメルカリの企業価値で約6.5億円)。その後メルカリは、他のVCからも投資を受けながら順調に成長し、2018年6月に上場を果たします。最終的なEast Venturesの保有割合は3.85%であり、公開価格ベースで150億円以上の株式価値になっています。創業初期のメルカリに出資したことによって、East Venturesは約300倍のリターンを獲得したことになります。(注:East Venturesは2014年にもメルカリに追加出資しており、また、保有株式のうちどれくらいの株式をどの価格で売却したかも不明であるため、厳密な数字ではないことをご了承ください。)

メルカリの事例はベンチャー投資の中でも稀有な成功例ではあり、なかなか投資先のベンチャー企業が順調に成長していくという可能性は高くはありませんが、このように大きなリターンを獲得できる可能性があるのがVCの魅力の一つと言えるでしょう。

調査・分析対象

本記事では2016年〜2019年のVC在籍者の経歴(学歴・職歴)を見ることで、VCに転職するための道やVCごとの在籍者のキャリアの傾向を考察します。対象者は、以下39のVCに在籍する管理職層を中心とした374名で、公開情報をもとにデータを取得しています。


ANRI, B Dash Ventures, beenext, Coral Capital, D4V, DCM Ventures, Dentsu Ventures, DGインキュベータ, DNX Ventures, East Ventures, F Ventures, Fenox Venture Capital Japan, GLOBIS CAPITAL PARTNERS, GREE Ventures, IncubateFund, Infinity Venture Partners, Innovation Engine, insprout, Intel Capital, iSGSインベストメントワークス, J-Seeds Ventures, KLab Venture Partners, SPIRAL VENTURES JAPAN(IMJ Investment Partners Japan LLP), UTEC(東京大学エッジ・キャピタル), W ventures, WiL, Xtech Ventures, YJキャピタル, アーキタイプ, アコード・ベンチャーズ, ウィズ, グローバル・ブレイン, サイバーエージェント・ベンチャーズ, ジェネシア・ベンチャーズ, スローガン・コアント, ファスト・トラック・イニシアティブ, モバイル・インターネット・キャピタル, 環境エネルギー投資, 日本みらいキャピタル


※全てのVCの全てのメンバーではなく、一部(サンプル)であるため、本記事の分析結果が必ずしもVC全体にもあてはまるとは限らない点、あらかじめご留意ください(統計処理によりVC全体の傾向を推定することもしておりません)。また、データ取得期間の関係上、既に退職者が含まれている可能性もあります。

VC在籍者の学歴

VC在籍者の出身大学(学歴)は以下の通りです。

東京大学や海外大学(UCLAやオックスフォード大学、南京大学など)、早慶の出身者で6割を超えています。

※N=230(学歴不明除く) ※その他大学は国公立大学、私立大学など41校

PEファンド在籍者の出身大学と比較すると、VC在籍者のほうがPEファンド在籍者よりも、東大や京大など最難関大学出身者の割合が低く、私大出身者率が高いです。この点で、学歴偏重とはいえPEファンドよりは学歴に多様性があります。VCに入るためには必ずしも最難関大学を卒業する必要はないとも言えるでしょう。

参考記事:『PEファンドへのキャリアを在籍者の経歴から考察【最強のエリート集団の学歴・職歴】

※N=230(学歴不明除く) ※その他大学は旧帝大、国公立、MARCHなど

【中堅大学出身のVC在籍者の例】

IncubateFund アソシエイト 種市亮氏

立教大学経済学部卒業後、楽天で7年間の勤務の後、IncubateFundに参画。

VC在籍者のMBA取得率

調査対象者230人中58人(25%)もの人がMBAを取得しています。もちろんこの結果だけでMBAがVC就職に有利かどうかは判断できませんが、経営のサポート役も担うVCにおいては、MBAで得た知識は業務に活きてくることは多いと推測できます。

MBA取得先のビジネススクールは、ハーバード大学(9名)、スタンフォード大学(7名)、ペンシルベニア大学ウォートン校(4名)をはじめとする海外の名門大学がほとんどですが、慶應義塾大学や一橋大学などの国内大学での取得者も8名います。

※N=58(学歴不明除く)

こちらもPEファンド在籍者のケースと比較すると、PEファンド在籍者ではMBA取得者が調査対象者230名のうち82名(36%)と、25%であるVC在籍者よりも11ポイント高いです。

PEファンド在籍者のMBA取得先のビジネススクールは海外名門大学がほとんどで、出身大学と同様にVC在籍者のほうが幅広いビジネススクールのMBAを取得していると言えます。

※N=82(学歴不明除く)

【MBAを取得したVC在籍者の例】

WiL パートナー 大西健史氏

東京大学法学部卒業後、日本興業銀行に入行。社費留学で米国ジョージタウン大学院にてMBAを取得。WiLにおいては投資戦略の立案、投資先のバリューアップ、投資ポートフォリオの管理を担当。

VC在籍者が新卒で入社した業界

ほとんどのVCでは定期的な新卒採用を行っておらず、基本的に中途採用のみで成り立っています。そこで、現在VCに在籍する人がどのような業界へ新卒入社していたのか調べました。

※N=340(新卒での職歴が不明な対象者を除く)

金融業界が全体の25%、ついでIT・Web業界が17%となりました。

IT・Web業界の新卒入社率の高さが特徴的です。GoogleやYahoo、楽天などの上場企業だけでなく、ITベンチャーも数多くありました。若手の頃から実際にベンチャーで働いていた人がVCへ転職する傾向を読み取ることができます。新興企業へ積極的に投資するVCにおいて、その経験が必要とされると考えられます。


【新卒でIT。Web業界に入社したVC在籍者の例】

J-SEED VENTURES 執行役員 梅澤亮氏

上智大学在学中からインターンとしてジェイ・シードに参画。2008年、株式会社トラフィックゲート(現リンクシェア・ジャパン株式会社)へ入社。2010年起業。2013年、ヘイロー株式会社のCEO、その後HomeAwayやTinder Japanのカントリーマネージャーに就任。Hailoでは資金調達から新しいビジネスモデルの構築まで行った。

※N=246(新卒での職歴が不明な対象者を除く)

ここでもPEファンドと比較すると、VC在籍者の金融出身者割合の低さが目立ちます。

PEファンド在籍者の半数が金融であり、金融業界・コンサル・商社だけで8割近くを占めています。ここでもまた、VC在籍者のバックグラウンドの多様性を確認することができます。

※N=85

VC在籍者のうち、新卒で金融業界に入社した人が、どのような業種に就いていたのかを整理しました。最も多かった投資ファンドの内訳はそのほとんどがVCで、ジャフコへ9名、フューチャーベンチャーキャピタルへ3名が入社していました。ジャフコは現在も定期的に新卒採用をしている数少ないVCです。

日系銀行は日本興業銀行11名、三井住友銀行5名をはじめとする計24名。日系証券は野村證券の7名を筆頭に計17名。外資系投資銀行(外銀)は計15名でした。

VC在籍者が新卒で入社した企業

※対象企業171社中、上位7位を掲載 ※対象者340名

上の表は、VC在籍者が新卒で入社した企業の人数のランキングです。上記の新卒での入社業界の上位である金融業界やIT・Web業界を除くと、ソニーやリクルートが上位に位置しているのが目立ちます。また、コンサルのBCG(ボストン コンサルティング グループ)やマッキンゼー、三菱商事など、PEファンドでも上位の新卒入社企業に数えられる企業群がやはりVCでも上位を占めているようです。

新卒で入社した後の次の転職先に偏りはなく、コンサル、IT・Web、投資ファンドなど様々な業界へ転職しています。2社目でVCに入る人もいれば、その他業界・企業でさらに経験を経た上でVCに入る人もいます。

MBA取得者の多いVC

前述の通りMBA取得者の多いVC業界ですが、今回調査した39のVCの中で特にMBA取得者率の高いVCを取り上げました。半数以上がMBA取得者である企業が複数社あります。MBA取得率の高さが目立つVC在籍者ですが、以下のVCはMBAホルダーであればより転職しやすいVCとも言えるかもしれません。

※対象VC39社 ※対象者374名

VC在籍者にはMBA取得者が多い一方で、MBA取得者がひとりもいないVCも数多くあります。たとえMBAを取得していなくても、VCへの転職ルートは非常に多いと考えられます。

事業会社から自社のCVCへ入れるのか?

事業会社系VC(CVC、コーポレートベンチャーキャピタル)とは、事業会社が自社の本業強化や新規事業創造のためにベンチャー企業へ投資するVCのことです。

CVCには、親会社である事業会社から出向してくる人が多いと推測されますが、実際にそうなのか調べました。いくつかのCVCにおける在籍者の最終職歴を調べ、社員数に対する外部企業出身者数の割合に応じてランキングにしました。

YJキャピタルを除くほとんどのCVCは、外部企業出身者率が高く、半数以上が外部企業出身でした。CVCとは言え、外部企業出身で様々なバックグラウンドを持つ人を積極採用していると考えられます。

また内部出身のCVC在籍者に注目すると、KLab Venture Partners 取締役兼代表パートナーである真田哲弥氏がKLabの代表取締役社長CEOであったり、DGインキュベータ取締役COOの佐々木智也氏がデジタルガレージの執行役員であったりするなど、親会社の役員クラスが名前を連ねているケースがあります。彼らがVCに関連する業務を中心に執り行っているとは考えにくいので、実質の外部出身者割合はより高いと推測することができます。

VC在籍者に起業経験者はどれくらいいるのか?

海外のVCと言えば、マーク・アンドリーセンやピーター・ティールのように自らが起業に成功した人がキャピタリストとなってVCを立ち上げる例が思い浮かびます。一方で日本のVCはどうでしょうか。

※N=374

何を持って起業が成功したかどうかを判断するのは難しいですが、起業した会社が成功したか否かに関わらず、また、創業に関わったことのある人(共同創業者の一人や学生時代の起業経験を含む)すべてを計上しても対象者全体の1割に留まりました。新興企業に投資をするという意味で、起業経験は一定の価値を持ちそうですが、実際には起業経験者はそこまで多くないと言えます。また、そもそも起業経験者にとって、VCが魅力的なキャリアのステップなのかということに関しては考察の余地があるでしょう。

VC在籍者のキャリアまとめ

本記事をまとめると


1. VC在籍者は高学歴。MBA保有率も高い。

PEファンド在籍者と比較すればその傾向はやや緩やかではあるものの、国公立大学や早慶、海外大学出身者が多くを占め高学歴であり、MBA取得者率も高いです。


2. VC在籍者が新卒で入社する業界は金融業界とIT・Web業界が多い。

金融業界(特にVCを中心とする投資ファンド)とIT・Web業界が多く、新卒の頃からITベンチャーで経験を積んできた人も一定数います。しかし大手有名企業出身者が相対的に多く、金融業界とIT・Web業界以外では、ソニーやリクルート、BCG、三菱商事といった企業が目立ちました。


3. 出資元の事業会社からCVCを目指すのはおすすめしない。

ほとんどのCVCでは、出資元の事業会社と関係のない外部企業の人を積極採用している傾向が見られます。VCの仕事がしたいから出資元の事業会社に入社するという選択肢はあまり良い選択肢とは言えないかもしれません。


4. 起業経験者は1割程度。

ベンチャー企業へ投資するという業務の性質上、起業経験がVCの業務に活きることは多いと考えられますが、実際にVC在籍者に起業経験者は少ないです。VCへ転職するのに起業経験はそこまで必要ないと言えるでしょう。


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