2022/02/14
変額保険(変額生命保険)のメリット・デメリット
変額保険(変額生命保険)について解説します。保険料の運用結果により保険金額が増減する変額保険には、どのような特徴があるのでしょうか。変額終身保険など変額保険の種類からその他の生命保険や投資信託との違い、メリット・デメリット、変額保険に向いている人までわかりやすく解説しますので、参考にしてください。
変額保険とは
変額保険とは、契約者が支払った保険料をもとに保険会社が株式や債券などで運用を行い、運用結果に応じて死亡保険金や解約返戻金、満期保険金が増減するという保険です。変額保険以外の保険商品でも保険料は保険会社によって運用されていますが、変額保険の場合は契約者自身が運用先を選び、その結果によって保険金額が増減するという特徴があります。契約者が選べる主な運用先は以下のようなものがあり、保険会社によって選べる運用先は異なります。
・国内株式型
・海外株式型
・国内債券型
・海外債券型
・海外REIT型
・バランス型
万が一保険期間中に死亡した場合は「基本保険金+変動保険金」を受け取れます。基本保険金部分は運用結果にかかわらず金額が最低保証されており、変動保険金部分は運用結果によって金額が増減します。死亡保険としての特徴も持ちつつ資産運用も行えるという保険商品ですが、変動保険金部分をリスクと感じる人が多く、日本では保険全体のうち変額保険が占めるシェアは2020年12月現在1%前後にとどまっています。
変額保険の種類
変額終身保険
変額終身保険は、終身保険形式の変額保険です。死亡保障が一生涯続き、死亡保険金や解約返戻金の金額が運用成績次第で変動します。死亡保険金については最低保証がありますが、解約返戻金については最低保証がないため長期間契約後に解約したとしても元本割れの可能性があります。
変額有期保険
変額有期保険は、養老保険形式の変額保険です。保険期間は10年・20年や60歳までなどの一定期間で、保険期間中に死亡した場合は死亡保険金を、満期まで生存していた場合は満期保険金が受け取れます。変額終身保険と同じく死亡保険金には最低保証がありますが、満期保険金と解約返戻金には最低保証がないため元本割れの可能性があります。
変額個人年金保険
変額個人年金保険は、個人年金保険形式の変額保険です。一定期間保険料を支払いその保険料で運用することで、将来年金として保険金を受け取ることができます。保険期間中に死亡した場合はそれまで積み立てた保険料が死亡保険金として支払われます。死亡保険金は今まで支払った保険料が必ず戻ってきますが、年金として支払われる金額は最低保証されておらず、元本割れの可能性もあります。
変額個人年金の商品はほとんどが一時払いのみとなっており、契約時に一括で保険料を支払い、一定期間運用後に年金を受け取るという形になっています。すぐには使わないまとまった資金がある時ということで、変額個人年金を利用する人は退職金を受け取った際に検討するというケースが多いようです。
生命保険文化センターが行った調査によると、個人年金保険に加入している人の中で変額個人年金に加入している人の割合は8%でした。割合としては少ないですが、10%弱の人が変額個人年金を選びより大きいリターンを狙っているということがわかります。
その他の生命保険との違い
変額ではない一般の終身保険や定期保険などの生命保険商品でも保険会社は保険料を利用して運用を行っていますが、死亡保険金や解約返戻金は運用結果に関わらず一定金額を受け取れます。その分リスクが低いですがリターンも低く、保険金額が大きく増えるということは滅多にありません。一方変額保険は運用先も契約者が選び、運用結果も契約者に帰属するため死亡保険金や解約返戻金の金額は運用結果に応じて変動します。そのため変額保険ではリスクを大きくとってより大きなリターンを狙うことも可能となっています。
投資信託との違い
変額保険は自身で投資先を選び、その運用実績に左右されるため投資信託と似ている部分があります。前提として変額保険は死亡保障を含んだ「保険」であるため投資信託と同じではありませんが、主な違いとしては以下のような点が挙げられます。
変額保険 | 投資信託 | |
死亡保障 | あり | なし |
商品 | 保険会社が選定した5~10程度の中から選択する |
金融機関が選定した1,000以上の中から選択する |
税制優遇 | 生命保険料控除 | つみたてNISAなどの制度を利用 |
変額保険は死亡保障がある分、投資信託と比べてコストがかかります。純粋に資産運用だけを行いたいのであれば(死亡保障が必要ないのであれば)投資信託を購入して運用を行う方が効率はよいでしょう。
変額保険に向いている人
・保険で資産運用を行いたいと考えている人
・少ない選択肢の中から資産運用を行いたい人
・割安な保険料で大きな保障を狙いたい人
変額保険は自身で投資先を選ぶ必要がありますが、その選択肢は保険会社が厳選した10程度の中から選ぶこととなります。自分ですべて資産運用を行う場合は無数の商品の中から選ばなければいけないので、変額保険はより選択しやすい資産運用の一つと言えます。資産運用の知識があまりなく、死亡保障も必要だけど保険で資産運用も行いたいという人は変額保険を検討してみるとよいでしょう。
変額保険のメリット
1. 運用実績によっては受け取る金額を増やせる
変額保険は運用実績に合わせて保険金額が変動するので、運用実績が好調であれば受け取る金額を増やすことができます。保障もありながら資産運用も同時に行えるというのは大きなメリットです。
2. 死亡保険金は最低保証額が決められている
変額保険は運用実績により保険金額が増減しますが、死亡保険金については最低保証額が決められており、運用結果が悪かったとしても決まった金額を受け取ることができます。死亡保障としての役割はしっかり備えられているので、リスクを取りやすいというメリットがあります。
3. インフレ対策になる
変額ではない一般の生命保険は保険会社の責任のもとで運用が行われるため、契約者が受け取れる保険金額は契約時に設定した金額で確定しており、変動することはありません。これはメリットでもありますが、インフレに弱いというデメリットでもあります。変動保険は受け取る保険金額が増減するため、インフレに強いというメリットがあります。しかし反対にデフレには弱いため、景気状況には注意が必要です。
4. 保険料が割安
変額保険は、同じ金額の保険金を設定した一般の生命保険と比べて保険料が割安です。変額保険は株式などに分散投資をして高い利益を狙うため、利回りが高いと予想されており、その分月々の保険料が安く設定できるということです。保険料を安く抑えながら死亡保障を備えられるというのも大きなメリットであると言えるでしょう。
5. 生命保険料控除の対象になる
変額保険は他の生命保険と同じく保険料控除の対象となります。変額保険の保険料を払っている期間は毎年対象となり、支払った保険料に応じて所得税・住民税が減額されます。保険料控除は年末調整か確定申告で対応することができますが、加入している保険会社から毎年送られてくる「控除証明書」が必要となりますので送付された場合はなくさないようにしましょう。ただし、変額個人年金保険などで一時払いとなっている場合は保険料を払い込んだ年度のみ控除の対象となるため注意が必要です。
変額保険のデメリット
1. 元本割れのリスクがある
変額保険は運用実績によって、元本割れのリスクがあります。死亡保険金には最低保証がありますが、解約返戻金や満期保険金などについては最低保証がありませんので、状況によっては払い込んだ保険料を大きく下回る可能性もあるということは認識しておきましょう。元本割れのリスクを少なくするには、株式のみなどリスクが大きい運用先を選ぶのではなく、バランス型などより分散された投資先を選ぶことも大切です。
2. 投資信託と比べてコストがかかる
変額保険は払い込んだ保険料すべてが運用されるのではなく、一部は保険会社のコストとして引かれています。そのため純粋に投資のためだけの商品と比べてコストがかかるというデメリットもあります。しかしもちろん純粋な投資商品には死亡保障はないため、一概に変額保険のコストが高いというわけではありません。死亡保障の部分を見れば一般の生命保険と比べて保険料が安いという特徴もあるため、自分が保険に何を求めているかという部分を明確にしてから加入することが大切です。
3. 自分でもある程度運用に関する知識が必要
変額保険は他の生命保険とは異なり、契約者自身で運用先を選定する必要があります。途中で運用比率を変更したりすることもできるため、運用結果をよくするためにはある程度の知識が必要であり、これは他の保険商品にはないデメリットと言えるかもしれません。
保険会社によっては、毎月の商品ごとの運用実績を公開しています。運用先や運用比率の選定を行う際には、これらの資料も参考に決めるとよいでしょう。
変額保険のメリット・デメリットを理解しよう
変額保険について解説しました。変額保険は数多くある保険商品の中で、唯一運用手段を自分で選択できて、運用成果が自分自身に帰属するという生命保険です。メリットとデメリットを納得した上で、自分に合った商品を選びましょう。