2021/01/09

ストライク(M&A仲介)への転職者インタビュー【採用や年収、働き方の実態まで】

プレジデント社による平均年収ランキング(2018年版)において平均年収1774万円で第4位だったM&A仲介のストライク。今回は、ストライクへの転職者の方にインタビューしました。M&A仲介会社への転職のノウハウや、ストライクの採用、業務内容年収、働き方の実態までをお聞きしました。

地方銀行からストライクへ転職

−−−これまでの経歴を教えてください。

新卒で地元の地方銀行に入り、5年半勤務し、その後現在の株式会社ストライクに転職しました。銀行員時代はリテール(個人)営業と法人営業を経験しました。法人営業では、新規の融資開拓〜既存取引のある地場の中小企業を担当していました。業務内容は多岐に渡ったもののほとんどを営業として銀行業務に従事し、結果を認めてもらい表彰されることもありました。


−−−なぜ新卒で地方銀行を選んだのですか?

長男だったので漠然と地元に帰って就職して、という考えはありました。公務員か地元リーディングバンクかなと。就活もほとんどしていなかったですし、社会にどんな会社があるのかなんて全く興味がありませんでした(笑)。


−−−なぜ転職しようと思ったのですか?

大きく2つあります。

1つ目は「成果への見返り」です。銀行は年功序列な人事制度でどんなに仕事ができようと給与への見返りは限定的でした。事実、営業成績の表彰をされても2万円分の商品券をもらえるくらいでしたからね。賞与も評価が「中の中」の行員と比べても年間で10万円前後ほどの違いしかありませんでした。より自分の評価がダイレクトに給与に反映する会社で働きたいと思いました。

2つ目は「ライト(light)ワーク」をしたいと思ったからです。銀行が収益をあげ地域経済に安定をもたらすことは非常に社会的に意義があることです。しかしながらビジネスモデルが固定化している今、銀行業そのものが時代の変化に対応できていないのではないかと感じていました。日々の業務にもハリがなくなっていく中で「もっと社会のためになる仕事をし、自分の人生での価値を見つけたい」と考えるようになりました。特に地方銀行で中小企業のオーナーと接することが大半であった中で時代は後継者難、大廃業時代いった文字が新聞を賑わせ始めた頃でもありました。金融商品を売ったり、銀行主導の融資を"お願い"したりすることが本当に顧客本意なのか?と疑う年次でもあったのかもしれません。目の前のお客様のためになる仕事が、社会を照らす(light)ことに繋がり、日本の事業承継問題を解決できるM&Aの道に進もうと決断した理由です。


−−−転職先としてM&A仲介会社を選んだ理由、そしてその中でもストライクを選んだ理由を教えてください。

銀行員時代からM&Aは業務内容の一つではありましたし、行内研修でも時代に求められているソリューションであることは理解していました。その中でM&Aを専業で行なっている会社は興味を持っていましたし、特にストライクは代表が公認会計士であり「営業が全て」というよりは、より専門家的な立ち位置でお客様の力に慣れると感じました。実際会社のカラーもゴリゴリの営業ではなくお客様とのリレーションを築く中で契約をいただくケースが大半です。


−−−ストライクの採用について教えてください。

採用面接は全部で2回あります。

最初に部長面接が1回、最後に社長面接です。

決まった質問はなく、前職での仕事の内容や成績、その成果を出すためにやったことや考えていることが聞かれます。これまでの成績は当然ですが、フランクな会話の中でその「人」をよく見られます。数字どうこうじゃなくストライクの文化にマッチしているかどうかでしょうか。個人的な印象ですが、第一印象は爽やかな人がいいです。どれだけ営業ができても、「なんか油っぽいな」と思われる人は不利かもしれません(笑)。

ストライクの業務内容や年収、働き方の実態

−−−ストライクの具体的な業務内容について教えてください。

ストライクは、M&A仲介業界では日本M&Aセンター(2018年3期売上高246億円)、M&Aキャピタルパートナーズ(2018年9期売上高80億円)に次ぐ、国内3番手(2018年8期売上高37億円)の企業です。

代表が公認会計士であることもあり、金融・財務に強いM&A仲介会社として営業しています。採用についても「決算書が読める」人材が前提になります。出身は会計士の他、ほとんどが銀行、証券会社経験がある人材です。

従業員は約120名うちフロント(営業)は80名前後(2019年4月時点)です。今年は隔年で採用している新卒が5名入社しました。 

ストライクは、主に事業承継などで困っている中堅・中小会社をM&Aを通じて会社を成長させたい会社とマッチングし成立までご支援しています。

業務内容としてはM&Aのアドバイザーとして案件のソーシング(案件を作ること)〜エグゼキューションを行なっております。仲介ですのでセルサイド(譲渡企業側)とバイサイド(買収企業側)どちらも一人で行うのがストライクの特徴です。また同業他社と異なる点として、セルサイド、バイサイドのどちらか片側に立つケースもあるということです。お客様を紹介していただいた金融機関や会計事務所などは、自分の顧客サイドのアドバイザーに就きたいというケースがあります。ストライクとしては仲介が基本ではありますが片側でも柔軟に対応しています。

部署は大きく分けて4つです。①案件の発掘、ドキュメンテーション、マッチングと一連のエグゼキューション業務を行う企業情報部(金融機関・保険会社・不動産会社出身者、会計士)、②外部へ開示する資料を精査、顧客との税務、法務関連で対応する業務支援部(会計士、弁護士)、③会計事務所や金融機関とのリレーション強化をはかる業務推進部(金融機関・保険会社出身者)、④弊社独自の企業情報管理システムなどを保守、改善するシステム部があります。


−−−M&A仲介は結果がすべて。結果を出せなければ退職させられるというイメージもあるのですが。

たしかに競合他社ではそのような文化もあると聞いたことはあります。しかしながらM&Aにおけるワンディールは最低でも半年ほどの期間を要します。すぐに結果を出せることは実力よりも運の力が大きくなるような気がします。最初は先輩と共同で仕事をすることでエグゼキューション(M&A成立に向けた一連の業務)のポイントを掴んだり、顧客との距離間を測りながら案件を進めていきます。

とはいっても、ボランティアではないのである程度の結果は出さないといけませんし、2年間以上も結果が出ないとそもそも向いていない仕事なのかもしれません。


−−−どんな人が結果を出せるのでしょうか?

「トップセールスマンだったから」、「公認会計士だから」成績を残せるかというとそうでもないような気がします。もちろん基礎的な会社の数字を見る力は必要ですが、交渉が破綻しかけそうになった時にゴールへ向かって議論を修正していく力であったり、顧客からの信頼を勝ち取ること=人間力に依存する部分が大きいです。正直華がある仕事に見られることが多いですが、仕事のほとんどは地道で常に気を張る内容です。格好に気を遣うことよりも、誠実に一生懸命仕事に取り組む人が結果を残しているように思いますし、自分もそうであろうと思っています。


−−−M&A仲介の仕事はやはり激務ですよね?

案件が多い人はもちろん激務ですが、その分見返りがあることでもあります。早く帰る人は数字を十分にあげている人か、用事のある人か、やる気のない人でしょう(笑)。早く帰りたいなら仕事をこなせばいいですし、これはどの業種、どの会社にも言えると思います。仕事をこなしていれば誰も文句は言いません。


−−−M&A仲介会社といえば、やはり年収が高いというイメージが強いと思います。ストライクの給料や昇進の実態について教えていただけませんか?

年収ランキングで上位にいるのは、あくまで「平均値」だからです(笑)。業績がトップの人は平均値の何倍ももらっていますが、ほとんどは平均値以下が実態です。

基本的なベース給料は年400〜800万円程度で、前職の年収が考慮されます。前職よりも固定給が多くなるケースはほとんどないと思います。固定の賞与はなく営業成績に応じたインセンティブ報酬になります。このインセンティブ報酬が、かなり高く、自分の仕事次第で大きな見返りとして給与に反映されてきます。数百万円から数千万円は一度に入ってきます。

現状で企業情報部約80名のうち半数は固定給しかもらっていないと思います。理由としては、半数の社員が直近2年以内の入社年次であり、インセンティブ報酬がまだ支給されていないからです。また最低売上が決まっており、売上が一定水準を超えないとインセンティブ報酬は支給されません。ですので、年収の中央値は1000万円前後ではないでしょうか。

ちなみに、年間の成約件数は1人平均2件前後です。これは上場企業3社の中ではトップだと思います。最低成功報酬が他社2社に比べ低額であるため小ぶりな案件の対応が多くなるためでしょう。

昇進については、成績を毎期クリアすることに加えて、日常業務への取り組み姿勢を部長、取締役が判断し社長が承認すると昇進していきます。しかし昇格したからといって固定給がたくさんもらえるということではありません。変わるのは案件を成約させた時のインセンティブへの掛け率が大きくなり、より大きなモチベーションが付与されるといった感じでしょうか。


−−−ストライクにはどのような方が多いですか?ご自身が感じる競合との違いなどもあれば教えてください。

ストライクには、当然ですが「営業ができる人」が多いです。前職の業種としては約90%が金融機関出身で圧倒的に多く、特に地方銀行出身者が多いです。これは顧客とのリレーション能力が高く買われてるためだと思います。

ちなみにアドバイザーの中には女性社員もいます。前職は金融機関出身者です。その他では会計事務所との関係も多岐に渡りますのでソリューションでは物腰が柔らかな女性担当者の方が適していることもあります。

新卒は隔年で採用しています。大学名はあまり採用基準として考えていないとは思いますが、結果としては、慶應義塾大学出身の人が多いような気がします。

競合との比較でいうと、競合2社の営業色が強いということもあり、他社より節度ある営業スタンスで丁寧に対応している点を褒めていただくことが多いように思います。それは、顧客からはもちろんのこと、特に、一緒に仕事をすることになる会計士や銀行関係の方からも聞きます。逆に競合2車と比べて弱い点は、競合2社に既に顧客と接点を持たれてしまっているケースが多いことです。特に業界トップの日本M&Aセンターについては、「センターとストライクで決め手がない。であれば規模が大きいセンターお願いする。」というケースでお断りされるケースがよくあります。場合によってはもっとグイグイ押していくスタイルも必要だと思います。


−−−会社の雰囲気について教えてください。

雰囲気は悪くないと思います。代表を含めた経営幹部とは同じ執務室で気軽に相談できる環境にあります。人や繁忙期により異なるとは思いますが、帰宅時間に関しても競合2社よりは間違いなく早く帰っていると思います。

とはいえ実績を上げられない企業情報部は役員の経営会議で名前が上がるようですし、2年間何も実績が上がらなければそもそも不向きな仕事であるように思います。基本的には個人事業主のようなスタイルで仕事をしますが、実績をあげる人はしっかりと社内政治を読んでいる人でもあるような気がします。もちろん実力があってのことですが。


−−−飲み会などは多いですか?

ほとんどありません。会社全体で定期的にありますが、「毎週上司が・・・」などと文句を言うゆとり世代がアレルギーを持つ文化はありません。

しかし仕事ができる上司や先輩とは飲み会でもランチでも一緒に時間を過ごして、自分の仕事のやり方や案件の相談をすることで知識はどんどん吸収できると思います。M&A仲介は一人で完結できる仕事だからこそ、他人の視点を吸収し、より多くの解決法を身につけていくことが大切だと感じます。基本的に「仕事のできない先輩」はいません。

ゴルフ部、キャンプ部など様々な部活動もあるので、飲み会以外でも社内交流はたくさんあります。風通しはいい会社です。


−−−実際にストライクに入社して、入社前のイメージとのギャップはありますか?

特にありませんが、ただ一つだけ、もっとしっかりした教育体制があると思っていました。入社日は営業ツールのみ説明されただけでした。翌日からは「で?案件は?」といった感じで、M&Aの仕組みも知らないまま営業活動をしていたように思います。

私が入社した時はそうでしたが、今はそんなことはありません。会社の沿革から、代表の思いなどについてはオリエンテーションが開催されます。しかし基本的にメンターなどはつかないので自分で案件を見つけ、分からなければ同行してもらい実際に見て、聞いて、自分で意識的に実務を取り込んでいくことが大切になります。


−−−今後のご自身のキャリアについて考えていることがあれば教えてください。

現状特に何がしたいということはありません。まずはこの仕事で様々な人、会社を知ることができているのでもうしばらくはこの業界で頑張ろうと思います。ある程度貯金もできたら友人の会計事務所で事業承継支援の一部として仲介業務ができれば、困っているより多くの零細企業の経営者へお手伝いはできるかなと考えています。もちろん一人で起業したりといったことも全く考えていなわけではないですが、まだまだ実力が備わっていないのでより多くの案件に触れる中で多くの人脈を作って、見定めて行きたいです。


−−−本日はありがとうございました。


プレジデント社による全上場企業平均年収ランキング(2018年版)では、第1位にM&Aキャピタルパートナーズ(2994万円)、第4位にストライク(1777万円)、第24位に日本M&Aセンター(1319万)とM&A仲介業界の年収の高さが目立っています。また、平均年齢もそれぞれ、31.5歳、35.0歳、35.7歳と、他のランキング上位企業と比べても極めて若い年齢となっています。

2020年版でも、第1位にM&Aキャピタルパートナーズ(3109万円)、第20位にストライク(1357万円)、第21位に日本M&Aセンター(1353万円)と上位にランクインしています。


事業承継問題などを理由としたM&Aニーズの高まりから、M&A業界の業績は年々拡大しており、それに伴い各社とも採用もかなり積極的に進めています。


今回インタビューさせていただいた方の出身業界である地方銀行の他、証券会社やメガバンクからM&A仲介への転職者も増加しています。M&A仲介へ転職する方には、銀行や証券会社でありがちな顧客本位ではなく自社本位のビジネスの進め方であったり、個人の結果が給与にほとんど反映されないということに不満が強い方が多いです。銀行や証券会社の営業マンで、こうした不満を少しでも持っているのであれば、M&A仲介業界は転職候補先の一つとして選択肢にいれるべきでしょう。


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参考:

ストライク社員の年収・貯金などの資産データ一覧|OpenMoney


参考記事:

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