2022/07/13

少額短期保険とは?メリット・デメリットから注意点まで解説

少額短期保険について解説します。近年ニッチな需要を埋める少額短期保険を販売する企業が増えてきました。通常の保険会社が販売する生命保険などとどこが違うのか、少額短期保険の種類にはどのようなものがあるのか、メリットやデメリット・注意点までわかりやすく解説しますので、参考にしてください。

少額短期保険とは

少額短期保険とは、「ミニ保険」とも呼ばれており、保険期間が1年または2年で保険金額が1,000万円以下の保険商品のことを言います。2006年に初めて少額短期保険の商品が販売されるようになり、まだ15年ほどの歴史しかない新しい分野の保険商品です。通常の生命保険を扱う保険会社とは異なり、財務省に登録を行った少額短期保険の事業者が販売を行っています。

少額短期保険では死亡保険や医療保険など一般的な保険商品も取り扱っていますが、最大の特徴としては通常の保険会社では取り扱っていないペット保険やモバイル保険など、ニッチなニーズを埋める商品があるということです。一般の生命保険が扱ってない細かなニーズを見つけ出し、現在も様々な商品の種類が増えてきています。

一般的な生命保険会社・損害保険会社との違い

一般的な生命保険や損害保険と少額短期保険を比べると、以下のような違いがあります。


一般的な生命保険や損害保険 少額短期保険
取り扱う企業 金融庁で免許を交付された資本金10億円以上の保険会社(免許制)
財務省に登録を行った資本金1,000万円以上の少額短期保険事業者(登録制)
保険期間 1年~終身まで自分で設定することができる 1年もしくは2年
保険金額 100万円~数億円まで自分で設定することができる 最大で1,000万円
返戻金がある商品 あり なし
生存給付金がある商品 あり なし
外貨を取り扱う商品 あり なし

少額短期保険は1,000万円以上の資本金がある企業が登録することで取り扱うことができます。通常の保険よりも取り扱うための条件が緩いため、現在100社以上の事業者が少額短期保険業者登録を行っています。その他保険金額や保険期間、取り扱える商品の種類などに一般の保険会社・損害保険会社との違いがあります。

少額短期保険の種類

少額短期保険には、様々な種類があります。ペット保険や自転車保険などの低発生率保険(日常生活に伴う発生率の低い事故の損害賠償責任を保障するための保険)が有名ですが、通常の保険会社と同じく死亡時に保険金が出る死亡保険や、入院や手術時に保険金が出る医療保険なども商品として販売されています。少額短期保険で販売されている保険の種類は主に以下の通りです。

・死亡保険・医療保険

・不妊治療保険

・院内介助費用補償保険

・ペット保険

・自転車保険

・旅行キャンセル費用補償保険

・弁護士保険

・いじめ保険

・モバイル保険

近年では子どもがいじめの被害に遭ってしまった際の弁護士対応などを行ってくれるいじめ保険なども注目されています。少額短期保険はニッチなニーズを解決する手段として、今後も様々な種類が増えていくことが予想されます。

※少額短期保険の保険金額の上限

少額短期保険はその種類ごとに、保険金額の上限が決められています。

死亡保険:300万円以下

医療保険:80万円以下

疾病等を原因とする重度障害保険:300万円以下

特定重度傷害保険:600万円

傷害死亡保険:300万円

損害保険:1,000万円以下

低発生率保険:1,000万円以下

少額短期保険の中でも死亡保険と医療保険は保険金額の上限が低いため、少額短期保険の商品のみでは保障が充分ではない可能性が高いことは認識しておきましょう。

少額短期保険のメリット

1. ニッチなニーズに応えることができる

少額短期保険は様々なニッチなニーズに応えることができるというのが大きなメリットの一つです。例えば「旅行をキャンセルした際のキャンセル費用」や「ペットの病気にかかる治療費」など、日常生活で起こりがちな事象に備えておくことができます。人によって心配だと思うことは異なるので、自分が気になることに対してピンポイントで備えておけるのはメリットです。最近では例えば「ネットトラブル保険」など時代に合わせた困りごとに対してどんどん新しい商品が作られているので、今後の商品展開にも注目です。

2. 保険料が安い

少額短期保険は保障の対象となる範囲が狭いため、月々の保険料が安いという特徴もあります。商品によって異なりますが、中には毎月数百円で加入できる商品もあり、家計への負担が少なく保障を得ることができるというのはメリットです。その分、保障の対象は狭いので幅広い範囲の保障をしてもらいたい場合には向きません。

3. 見直しがしやすい

少額短期保険は1年もしくは2年で保険期間が切れるため、定期的に保障を見直しやすいというメリットもあります。保険会社が販売している保険商品だと短いものでも保険期間5年、長いものだと終身となりなかなか見直す機会がないというケースは多いです。少額短期保険の商品であれば強制的に1年か2年で更新のタイミングが来るため、引き続き保障が必要かどうかを考える機会があるというのはメリットと言えます。

4. 短期間だけ保障を追加したいときに便利

3. 見直しがしやすいともつながりますが、少額短期保険は保険期間が1年もしくは2年の短期であるため、短期間だけ通常の保険会社の商品に加えて保障を追加したいという場合に便利です。例えば子どもに一番教育費がかかる期間のみ死亡保険を追加するなど、必要な保障が多い期間だけ追加できるのは便利です。

少額短期保険のデメリット・注意点

1. 保障範囲が非常に限定的

少額短期保険の代表的な種類である低発生率保険は、保障範囲が非常に限定的である点に注意が必要です。例えばスマートフォンなどの修理費用を保障してくれる「モバイル保険」は少額短期保険の中では人気がありますが、これは国内での故障や紛失・盗難時のみ保障され、海外にいる間に起きても保障してもらえません(海外滞在時にスマホのトラブルがあった場合は「海外旅行保険」の保障対象となることが多いです)。どういう時に保障されるのかという点は、加入前にしっかりと確認しておきましょう。

2. 掛け捨ての商品しかない

少額短期保険では解約返戻金や満期保険金など貯蓄性のある商品を取り扱うことができません。掛け捨てで最低限の保障にすることで保険料も抑えられているのですが、掛け捨てで保険料を支払うことに抵抗がある人は注意が必要です。

3. 保険金額の上限が低い

少額短期保険は保険金額が最大でも1,000万円なので、少額短期保険のみでは充分な保障内容を得ることが難しいというデメリットもあります。特に少額短期保険の死亡保障は最大で300万円となっており、遺された遺族にとって充分な金額とは言えないケースが多いでしょう。少額短期保険での死亡保険を検討する場合は、通常の生命保険などと併用して準備することをおすすめします。

4. 生命保険料控除の対象にならない

少額短期保険は生命保険料控除の対象外なので、保険に加入することで節税になることはありません。この点はあまり知られていないので、年末調整時にペット保険などの保険料について問い合わせてしまう人も多いようです。保険料控除を受けたい場合は、通常の保険会社の商品を検討するようにしましょう。

参考記事:『生命保険料控除とは?対象となる保険から申請方法、注意点まで

5. 保険会社が破綻した場合の保障がない

通常、保険会社は「保険契約者保護機構」に加入することを義務付けられているため、万が一保険会社が経営破綻となった場合に契約者は損失金の補填などの保障が受けられます。しかし少額短期保険はそのような保障がないため、もし運営企業が経営破綻した場合は保障を受けることができない点もデメリットです。特に少額短期保険を運営する企業は小規模であることも多いため、企業の経営状態には常に注意を払っておくようにしましょう。

少額短期保険の特徴やメリット・デメリットを理解しよう

少額短期保険について解説しました。近年商品の種類が増えてきている少額短期保険ですが、他の保険会社の商品にはないメリット・デメリットがあります。特徴を理解して、必要な保障がある場合は活用していきましょう。

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