2021/01/23

リクルートの「間違った評判」を現役社員が解説

リクルートは転職市場においては「コスパが良い会社」として人気が高い企業です。一方で、現実とは違うリクルートのイメージや評判が広がっていることも多いです。今回は、現役リクルート社員の方に、一般的に言われているリクルートの「間違った評判」について解説していただきました。

転職でも人気のリクルートグループの本当の姿とは?

「リクルートグループ」の名前は新卒就活の場面でも転職の場面でも、よく耳にすることと思います。その中には「成長できる環境だ」「出世が早く若々しい会社だ」といったポジティブな声もあれば、一方で「サークルノリの会社だ」「労働時間が長い」「元リク(リクルート出身の社員)は使えない」というネガティブな意見も見受けられます。

現役リクルート社員として、先に結論を言ってしまうと、リクルートグループはビジネスマンによって「めちゃくちゃいい会社」です。成長意欲を持って中途半端なベンチャー企業に行くならば、リクルートグループに入った方が成長できますし、年収アップも期待できます。

今回の記事では、リクルートグループにまつわるたくさんの「勘違い」を正し、リクルートという会社が本当はどういう環境なのかということをお伝えします。合わせて、転職先としてリクルートを検討している場合の注意点もあれば、それぞれの項目でお伝えしていきます。

※本記事は現役リクルート社員の方による寄稿記事です。


参考:

株式会社リクルートの資産データ一覧|OpenMoney


参考記事:

リクルート社員の年収・資産データからリアルなお金事情を分析

リクルートへの転職を考えるなら知っておきたいこと【年収・各社の特徴・求める人材まで】

リクルートは「誰でも成長できる環境」ではない

リクルートは「入社すれば成長できる環境だ」と定型文のようによく言われます。この事実は、一部では正しいですが、一部では間違っています。少なくとも、「誰でも成長できる環境」では絶対にありません。

ビジネスマンの成長というのは、基本的にインプットとアウトプットの量、そしてそれをレビュー(チェックする)する人の能力によって左右される部分が大きいと言えます。

リクルートでは、このレビュアーの能力が比較的高い傾向にあります。レビュアーになりうるのは多くの場合GM(マネージャーや部長)、事業推進部などのスタッフ職であれば経営陣などからレビュー・フィードバックをもらうケースなどです。したがって、レビュアーは基本的には「出世をしている」人です。

一般的な企業では、たとえマネージャーや部長、役員などの管理職・経営陣であったとしても、年功序列の結果そのポジションにおさまっただけで、レビュー能力が非常に低いケースが多々あります。一方で、リクルートの場合どのポジションであっても「大きな成果を残した」人でなければ管理職に上がることはありません。そして、リクルートで大きな成果を残した方は構造化能力が高い・言葉の選定に長けている傾向が強いため、レビュー力も必然的に高くなります。

また、インプット・アウトプットの機会も、望めば得られる環境は整っています。リクルートでは人材教育の優先順位は非常に高く、研修制度もかなり充実しています。加えて、社内のどの人も基本的にメール1本でインプットの時間をくれたり、検討している事案に対してレビューを行ってくれます。

「1年目だから」であったり「まだスキル不足だから」といった型にはまった言葉でインプット・アウトプットの機会を制限されることはまずないので、その意味では成長環境としてリクルートは非常に素晴らしい環境です。

リクルートで「全員が成長できるわけではない」理由

では、これだけ恵まれた環境でありながら、なぜリクルートは「必ずしも全員が成長できる環境」ではないのでしょうか。それは、配属される事業の状況により良し悪しがあるからです。

リクルートグループはカンパニーがいくつもある他、カンパニー内にも領域がいくつも存在します。カンパニーでいうとリクルートキャリア、リクルートジョブズ、リクルートライフスタイル、リクルートマーケティングパートナーズ、リクルート住まいカンパニー、などなど。また、例えばリクルート住まいカンパニーの中にも新築マンション領域、賃貸領域、注文領域など、複数の領域が存在しています。ですので、リクルートグループ全体が毎年増収増益・事業計画を達成し成長しているように見えても、実は特定のカンパニーや特定の領域では、売上が伸びず苦しんでいるケースは多々あります(グループ全体としては、事業ポートフォリオを広く持つことでリスクヘッジができていると言えるので、それはそれで素晴らしいことなのですが)。

リクルートは基本的に計画をしっかりと毎年作り予実管理を徹底する会社ですので、当然事業計画や経営目標を達成していない営業部や事業推進部には厳しくプッシュがされます。また、最重要指標である利益を達成できてない領域に対しては、例えば研修費用を削ったりなどコストサイドを削ってでも達成をさせようとするマネジメントがなされます。

つまり、事業環境の悪い領域・事業部ではマネジメントが厳しい上に、予算も厳しいという、とても辛い状況になりえます。もし仮にリクルートグループに転職したとしても、そういった事業部に運悪く配属されると成長以前に、心身の体調を崩すリスクもあります。

もちろん、事業環境が悪化している部署にそれほど人員を受け入れられる余裕はありませんので、配属可能性自体が高いわけではないのですが、「配属はどこでも大丈夫です!」などと伝えていると、てこ入れ的に配属される可能性はあります。

したがって、「成長環境」をリクルートグループに期待して転職するならば、事前にカンパニーごとの違いや領域についてしっかりと理解・情報収集などの対策をするべきです。転職エージェントの中にははっきりと「リクルートグループへの転職対策に強い!」と標榜しているところもありますので、そういったエージェントをうまく使いながら、狙い目のカンパニー・領域を見定めましょう。

注意点としては、定性的な話ばかりするエージェント・人事部経由の情報しか持っていない転職エージェントの話は疑うべき、ということです。リクルートは対外的にはビジョナリーな会社として見られていますが、実際は非常に合理的かつ、ロジックを重んじる会社です。ですので、ふわふわとした定性的な話でしか各カンパニーや事業を語れない転職エージェントは、おそらく内情をしっかりと理解していません。また、人事部は基本的に各領域の要請に従って人材を獲得することがミッションですので、転職エージェト・転職検討者に悪い情報を伝えるわけがありませんし、そんな人事部からしか情報が得られていない転職エージェントでは、情報不足としか言いようがありません。

リクルートは「年収の高い会社」ではない

最初からタイトルを覆すようで恐縮ですが、一般的な企業と比べると、リクルートは年収が高い会社であると言えます。20代でも安定して年収600万円〜700万円はもらえる会社ですので、少なくとも低い方では確実にありません。

ただし、あえて「生涯年収」という観点と「年収1,000万円を超えられるか」という観点を加えると、途端にリクルートという会社は違う様相を示します。

リクルートグループでは、退職のことを「卒業」と言います。非常にサークル的なワードですが、実際に卒業に至る社員は、様々な葛藤を抱えその決断に至ります。葛藤の最たる例は「出世が望めない」という事実です。

リクルートグループでは営業であろうと事業推進部など経営企画側のスタッフであろうと、早ければ20代後半でGMになれます。ただし、それはあくまで圧倒的な成果を出した人の場合。30代前半で部長、役員になる人がいる一方で、50代になってもメンバーのまま昇進できない人も多数います。特に、30代中盤〜後半になってくると、「このままリクルートに残っても出世できないのではないか」という考えが芽生え、退職する方が非常に増えてきます。若手が次々と入社してくるため、プレッシャーを感じていづらくなる、というのも一つの理由です。自分より年下のGM・部長がいるのもやりにくいでしょう。

このように、リクルートは実力主義が色濃く、ただただ漫然と会社に在籍し続けることが心理的に難しい会社です。結果、生涯年収という意味では決して高くはなりえませんし、当初は相対的に高かったはずの年収も、いつの間にか他の企業の同年代より低くなっているということもありえます。あくまで「自分次第」という精神が確実に求められますので、この点は転職するにあたって絶対に留意が必要です。

リクルートの年収1,000万円の壁

リクルートにおいて、年収1,000万円に達するのはGMに就任する段階、つまり管理職になるくらいのタイミングです。

以前はGMにならなくとも、プレイヤーとして最前線に立ち続ける「ハイプロ」という役職・ポジションのままMG(ミッショングレード)が上がるキャリアステップもあったのですが、現在は基本的には一定以上MGが上がるとGMになることが求められます。

ただし、このGMになるには様々な難しさがあります。まず一つは、個人として残す成果。もう一つが、GM的素養があるか否か、です。特に後者は営業部のGMになるならば絶対に欠かせないポイントです。

前者はわかりやすく、プレイヤーとして表彰を多数受賞するなどの明確な活躍をしたといったこと。そして後者は、グループの他メンバーから「マネージャーになってほしい」「信頼が持てる」という評価を受けること。この後者がなかなか曲者で、たとえ通期MVPを2年連続で受賞しようとも、この点がクリアできなければGMに昇進することはありません。

後者があるからこそ、リクルートではただ単純に個人として結果を残すだけということができませんし、結果を残すだけであれば、年収にも上限がきてしまいます。もし転職して何年か在籍して結果を残せば簡単に年収1,000万円は超えるだろうと思っているのであれば、考えを改める必要があります。

リクルートは「意識の高い(笑)」会社ではない

リクルートでよく使われる言葉として「圧倒的当事者意識」という言葉があります。営業であれば、クライアントの課題を自分ごととして捉えられるほどに高い当事者意識を持って、仕事に取り組むことを指します。(リクルートで求められるスキル・スタンスを示す「6・4シート」にも、重要なスタンスとして「圧倒的当事者意識」は含まれています。)

ただ、字面がなかなか独特なので、外部の方からは揶揄されることも多いです。外部だけでなく、社内的にも一種ネタ的に扱われています。他にもリクルートには独特の用語が多いこともあって、ネガティブな意味合いで「意識の高い(笑)」会社と言われがちです。また、リクルートに入社する人は大学時代も意識高い系人材であることが多いので、余計その印象が強くなっています。

では、実際にリクルートは「意識の高い(笑)」会社なのでしょうか?答えははっきりと「NO」と言えます。

リクルートの本当の姿

「意識が高い(笑)」という言葉を「一見高尚なことを言っているけれど、中身が伴っていないこと」と定義するならば、リクルートは間違いなく当てはまりません。もちろん多くの社員がいるので一定数そのような社員はいると思いますが、その割合はかなり少ないと言えます。

なぜかというと、リクルートグループでは薄っぺらい説明やおざなりな仕事は全く評価されず、常にアウトプットと言語化が求められるからです。こういった能力はコンサルや経営企画の仕事であれば当然のように求められるのですが、営業職でも同様の能力が求められるケースはかなり稀と言えます。

実際、コンサル会社からリクルートに転職した方でもっとも驚くのは「営業のレベルの高さ」です。多くの企業では営業はただ言われたことをやる、クライアントの課題を特定することも、その解決をする能力も決して高くないのに対し、リクルートでは営業の戦略・戦術理解度からクライアントへの提案力まで、相対的にレベルが高いと言えます。

このように、リクルートが「意識が高い(笑)」というのは、実際にリクルートの各社員の仕事や実情を知らずに揶揄している、もしくは独特の社風のみを見て評しているかのどちらかでしょう。

リクルートは「営業至上主義」ではない

古くからのリクルートを知っている方、もしくはそのイメージが残っている方は、リクルートは「営業至上主義」の会社と思っている方も多いと思います。それは半分正解、半分外れです。

たしかに、現在もリクルートグループ各社の成長を支え、最前線でCL(クライアント)の課題解決に邁進しているのは営業です。彼らの対CLへのグリップ力・そこから得られる情報は大きな資産となっています。

一方、営業だけがリクルートのコア人材ではどんどんなくなっていることもまた、事実です。時代が変わる中で事業の中身も、その動かし方もまた大きく変わり、活躍する人材も多様になっているのが今のリクルートです。

例えばネット人材。じゃらんやSUUMOなどといった、リクルートが抱える多くのメディアは、2000年代に入ってから紙媒体からネット媒体へと大きく切り替わってきました。それに合わせて、Web系人材の確保にも積極的になり、現在NB(ネットビジネス)組織は、各カンパニー内において非常に重要な存在となっております。

また、営業以外が売上の核となるケースも増えてきています。全国に店舗出店を行っているゼクシィナビカウンターやSUUMOカウンターなどといった、カスタマーと直接対面しCLに送客・マネタイズするビジネスモデルは、営業ではなくカスタマーと対面する「アドバイザー」の役割が重要になります。そういったアドバイザーが仕事に意義を持って集中できるよう、マネジメントをする能力が若手社員でも求められます。


このように、かつてのような営業ゴリゴリの会社ではなく、様々な事業・職種の人間が協力しあう中でビジネスを前に進めているのが今のリクルートです。

ただしリクルートの営業職から離れた人が口を揃えて言うのは「リクルートに入ったなら、一度は営業を経験するとよい」という言葉です。ビジネスを理解する力や課題を解決する力、それがもっともつくのが営業であるからです。リクルートの商品開発・戦略設計も、営業部との認識すり合わせ・合意形成を確実に行っている領域ほどうまくいっています。営業至上主義ではなくなっているものの、「営業へのリスペクト」という姿勢は今も変わっていません。

リクルートでいろんな職種を経験してみたいけれど、まずはどの職種で始めればいいのかと転職活動で悩んでいる方は、一度営業を経験してみるのが良いと思います。リクルートの場合、社内・カンパニー間での異動希望制度もありますので、入社後のキャリアパスも多様です。後々の憂いなく、営業職に挑戦するとすれば、リクルートはとても良い環境です。

リクルートは「新規事業が得意な会社」ではない

リクルートは「新規事業に積極的」というイメージの強い会社です。このイメージは間違いなく事実です。社内での新規事業コンテストや、それにあわせて講演会なども多数開催されています。

一方で、「新規事業が得意な会社」かというと、必ずしもそうとは言えません。これは、リクルート特有のビジネスモデルが「強すぎる」ことに起因しています。

リクルートのビジネスモデルはいわゆる「リボン図モデル」と言われており、クライアントとカスタマーとの間にリクルートが介在し、価値提供をすることでマネタイズを行っています。リクナビ、じゃらん、ゼクシィ、SUUMO、どれもその構図は変わりません。一見ビジネスモデルが別のように見えるゼクシィナビカウンターやSUUMOカウンターも、カスタマー接点がメディアではなくカウンターになっただけで、本質に違いはありません。

逆に言うと、リクルートの稼ぎ方はある種「ワンパターン」なのです。C2Cサービスや位置情報を活用したサービスなど、様々な新規事業を検討してきた一方で、その多くはサービスクローズとなってきており、リボン図モデルから離れた主要サービスを打ち出せていません。実際よく言われるのは、新規事業コンテストでの経営陣からのフィードバックも、「リボン図モデルありき」「リボン図モデルこそがベスト」という思想が透けて見える、ということです。

したがって、リクルートグループにおいては社内に新規事業の知見が少ないのが現状です。ただし、この事実を転職検討者の視点から見ると、非常に大きなチャンスにもなりえます。他業界からリクルートに転職すると、ある種ワンパターンな新規事業の考え方を、全く異なる視点から俯瞰し、アレンジすることができます。そしてリクルート自身も、現在国内既存事業の伸びに限界を感じつつある状態ですので、indeedのような海外事業を伸ばす一方で、新規事業への期待が高まっています。だからこそ、毎年派手に新規事業コンテストを開催しているとも言えます。

別業界の経営企画室で働いていた方はもちろんのこと、営業として勤めてきた方にとっても、その経験が今、リクルートで大きく評価される可能性を秘めています。リクルートで新規事業に挑戦したい方であれば、他業界からの転職に躊躇する必要はありません。

リクルートは「簡単に転職できる会社」ではない

リクルートは、これまで述べたように人材の新陳代謝が盛んで、中途採用にも非常に積極的な会社です。グループ全体で見れば、常に中途採用の入口は開かれているといって良いでしょう。

ただし、求人の数が十分であるからといって、リクルートが「転職で入りやすい会社」と一概に言うことはできません。というのも、リクルートは面接を重視した採用を行っており、対策がしにくいことで有名だからです。その面接も、過去の経験を掘り下げる、その人のパーソナリティを理解しようとする面接ですので、取り繕うことが難しい内容となっています。

ただし、リクルートの場合、人事部は採用要件を明確に設計した上で採用を行う傾向にあるため、難しいとはいえ対策は可能です。その対策は個人でリクルートの諸々の情報を得るだけでは不十分ですので、転職エージェントに頼るのが良いでしょう。特に、リクルートグループへの転職に強みを持っているエージェントをうまく活用しするのが良いでしょう。(もちろん、リクルートそのものが運営するリクルートエージェントも、活用するに越したことはありません。)


参考:

株式会社リクルートの資産データ一覧|OpenMoney


参考記事:

リクルートへの転職を考えるなら知っておきたいこと【年収・各社の特徴・求める人材まで】

リクルート社員の年収・資産データからリアルなお金事情を分析

HOME記事一覧Page Top