2022/05/09

不動産投資ローンの団体信用生命保険とは?種類や注意点まで解説

不動産投資ローンを組む際に加入することができる、団信(団体信用生命保険)について解説します。生命保険の役割も果たす団信とは、どのような保険なのでしょうか。不動産投資において契約は必須なのか、一般の生命保険との違い、どのような種類があるのか、加入する際の注意点など初心者にもわかりやすく解説しますので、参考にしてください。

不動産投資ローンとは

不動産投資ローンとは、不動産投資のために金融機関から受けることができるローンの名称です。自身が住むための住宅を購入するために組む住宅ローンとは審査基準が異なり、購入する投資物件の収益性なども審査されます。

不動産投資ローンには主に個人投資家が利用するアパートローンと、個人投資家から事業主までより投資規模の大きい人が利用するプロパーローンがありますが、この記事ではアパートローンについて、ローンを組む際に加入することのできる団信(団体信用生命保険)について解説します。

参考記事:『【初心者向け】不動産投資ローンとは。種類や組み方、手順や審査基準まで

不動産投資ローンの団信とは

団信とは、不動産投資ローンの返済中に借主に万が一のことがあった場合に保険金によってローンの残債が弁済されるという保険です。支払いはローンの金利に含まれており、金利を少し上げることで特約をつけることも可能です。

住宅ローンにおいては団信への加入が義務付けられていることがほとんどですが、不動産投資ローンの場合は金融機関によって加入しなくても良いこともあります。団信は不動産単位で加入することができるので、複数の物件を保有している場合は複数の団信に加入することも可能です。団信に加入することによって、借主に万が一のことがあった際にも残された家族に収益用不動産が残り、その物件から賃料収入を得たり、売却してまとまった資金を得ることが可能になります。

一般の生命保険と団信の違い


一般的な生命保険 団体信用生命保険
保険期間 契約期間中は保障が続く ローンを完済した時点で保険期間が終了する
保険料

・保険料は契約時から変わらないことが多い

・加入時の年齢に応じて保険料が変わることが多い

・支払方法は選択できる

・残債額が減るにつれて保険料が下がる

・年齢に関係なく保険料は一律

・ローンの金利に保険料が含まれている

生命保険料控除 対象 対象外

不動産投資ローンの団信の種類

1. 通常の団体信用生命保険

通常の団信は、被保険者(ローンの契約者)が死亡もしくは高度障害状態になった際に、保険金によって残債がなくなるというものです。高度障害状態とは、病気や怪我などにより身体機能が重度に低下している状態のことを言い、具体的な基準は生命保険会社ごとに定められています。一般的に、この通常の団信は不動産投資ローンに含まれているため、ローン金利の上乗せはありません。様々な特約を付帯することで、金利が上乗せされるという仕組みになっています。


高度障害の例(住宅金融支援機構の場合)

保障開始日以後の傷害または疾病により、次の1から8までのいずれかの状態になった場合を高度障害状態とする。

1. 両眼の視力を全く永久に失ったもの

2. 言語またはそしゃくの機能を全く永久に失ったもの(注1)

3. 中枢神経系または精神に著しい障害を残し、終身常に介護を要するもの(注2)

4. 胸腹部臓器に著しい傷害を残し、終身常に介護を要するもの(注2)

5. 両上肢とも、手関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの

6. 両下肢とも、足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの

7. 1上肢を手関節以上で失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの

8. 1上肢の用を全く永久に失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったもの

(注1)「そしゃくの機能を全く永久に失ったもの」とは、流動食以外のものは摂取できない状態で、その回復の見込みのない場合をいいます。

(注2)「常に介護を要するもの」とは、食物の摂取、排便・排尿・その後始末、及び衣服着脱・起居・歩行・入浴のいずれもが自分ではできず、常に他人の介護を要する状態をいいます。

参考:住宅金融支援機構HP

2. 三大疾病特約付き団体信用生命保険

三大疾病特約付き団信とは、通常の団信の条件である「死亡・もしくは高度障害状態」に加え、三大疾病(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)によって所定の状態になった場合にも残債が完済となる特約つきの団信です。金融機関によって異なりますが、通常の団信に金利を0.2%~0.25%ほど上乗せすることで、三大疾病まで保証される場合が多いです。

保険金が支払われる条件は生命保険会社によって定められており、単純に三大疾病に罹患しただけでは支払われない場合もあるため、条件はよく確認する必要があります。

3. 八大疾病特約付き団体信用生命保険

八大疾病特約付き団信とは、死亡もしくは高度障害状態および三大疾病に加え、さらに5つの重度慢性疾患(高血圧症・糖尿病・慢性腎不全・肝硬変・慢性膵炎)によって所定の状態になった場合にも残債が完済となる特約付きの団信です。三大疾病特約付き団信と同様に、保険会社によって保険金が支払われる条件が定められています。金融機関によって異なりますが、通常の団信に金利を0.2%~0.3%ほど上乗せすることで、八大疾病まで保証される場合が多いです。

4. その他特約付き団体信用生命保険

病気のリスク以外にも、自然災害による住宅の倒壊などを条件に保障範囲とする特約付き団信や、リストラや倒産といった理由で失業した場合に一定期間住宅ローンの返済を保険金によって行う失業補償付き団信などもあります。また、特約とは異なりますが「ワイド団信」と言って健康上の理由で通常の団信に加入できない人向けの団信もあり、こちらも通常の団信よりも金利が上乗せとなりますが、持病がある人でも加入できる可能性があるため自身の状況に応じて適切な団信を選びましょう。

不動産投資ローンの団信に加入する際の注意点

1. 健康状態が悪いと加入できない場合がある

団信に加入する際、契約者の健康状態を告知する必要があります。審査の基準は金融機関によって異なりますが、告知内容(健康状態)によっては団信の加入を断られる可能性があります。ローンの契約に団信への加入が必須である金融機関の場合には、ローン自体が組めなくなってしまうため注意が必要です。団信の加入が必須ではない金融機関であればローン審査には問題ありませんが、何かあった際の保障がなくなってしまうため、複数の金融機関へ相談に行く、ワイド団信への加入を検討するなどをおすすめします。

2. 途中解約できない場合もあるので、内容に注意

通常の生命保険であれば途中解約できることがほとんどですが、団信に関しては一般的に途中解約が認められていません。ローン返済中に団信の金利上乗せ分が重くなってきて保障内容を見直したい、といった場合でも柔軟に対応できないケースが多いです。そのため保障内容については慎重に検討する必要があります。

3. すべてのリスクがカバーできるわけではない

団信は特約を付けることで八大疾病や様々なリスクに備えることができますが、団信でまかなえる疾病以外にも、ローンを支払えなくなるリスクはあります。例えばそのほかの病気や怪我で長期間にわたって働けなくなった場合、団信からは保険金が支払われません。もしその他のリスクにも備えたいという場合は、団信とは別に就業不能保険などの保険への加入をおすすめします。

参考記事:『就業不能保険のメリット・デメリットとは。必要性から注意点まで

4. 該当の病気になれば必ずローンが免除になるわけではない

団信は特約をつけることで様々な病気のリスクに備えることができますが、該当の病気になれば必ず保険金が支払われるわけではないことにも注意が必要です。例えば心筋梗塞や脳卒中の場合、多くの団信では「初めて医師の診療を受けた日から60日以上、労働制限が必要な状態が継続したと医師に診断されたとき」でないと保障の対象になりません。それぞれの団信ごとに細かく保険金が支払われる条件が設定されていますので、よく確認しておくようにしましょう。

5. 加入済の生命保険があれば内容を確認する

不動産投資ローンを組む以前に民間の生命保険に加入している場合は、保障内容が重複していないか確認する必要があります。保障内容や給付金額を確認し、団信と生命保険のどちらか一方で保障が充分である場合には団信に加入しない、または生命保険を解約しても差し支えないケースもあります。しかし生命保険を解約する場合には、団信の保障期間はローン返済中のみであることを考慮しなくてはいけません。ローン返済後に再度生命保険に加入しようとしても年齢や健康状態によって以前と同じ条件では加入できない場合もありますので、慎重に検討するようにしましょう。

団信は慎重に検討して加入しよう

不動産投資ローンの団信について解説しました。不動産投資ローンの場合は加入が必須ではない場合もありますが、家族がいる場合は万が一に備える大切な保険です。特約の内容もよく理解し、適切な保障内容で加入するようにしましょう。

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