2022/03/07
個人年金保険とiDeCoはどちらがおすすめ?
個人年金保険とiDeCoはどちらがおすすめなのかという点について解説します。どちらも将来の老後資金を貯めるための制度なので、どちらを利用するべきか悩む人もいるかと思います。それぞれの制度の特徴からメリット・デメリット、それぞれの制度に向いている人までわかりやすく解説しますので、参考にしてください。
個人年金保険とは
個人年金保険とは、一定期間保険料を払い込むことで将来決まった時期に年金形式で保険金を受け取ることができるという保険の種類の一つです。公的年金とは異なり、個人が任意で加入する民間の保険商品となります。公的年金の不足を補うために自分で用意する年金という意味で、確定拠出型年金(iDeCo)などとともに「私的年金」と言われることもあります。
基本的には、保険料の支払いが滞る・解約する・保険会社が倒産するのいずれかが起こらない限り、契約時に設定した金額通りに年金を受け取ることができます(変額型の個人年金保険の場合は金額が変動します)。
参考記事:『個人年金保険のメリット・デメリットとは』
iDeCoとは
iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)とは、2001年にスタートした、確定拠出年金法に基づいて実施されている私的年金制度です。自分が毎月拠出した掛金を自分で商品を選び運用し、老後に向けた資産を形成することができます。個人年金保険と同じく、掛金を払い込むことで将来決まった時期に給付金という形で受け取ることができます。iDeCoの場合は掛金を拠出する期間が60歳までと決まっており、基本的に60歳より前に解約することはできません。
iDeCoという愛称がつけられたのは2016年からで、それまでは「個人型確定拠出年金」や「日本版401k」と呼ばれていました。iDeCoはつみたてNISAと同じく運用して出た利益が非課税なのに加え、掛金が全額が所得控除の対象になるため、所得税・住民税が安くなるという節税メリットも大きい制度です。
参考記事:
図で見る個人年金保険とiDeCoの違い
個人年金保険 | iDeCo | |
保険料(掛金) | 自身で設定できる | 職業によって上限が決まっている |
手数料 | なし(保険料に組み込まれている) | あり(口座開設手数料・口座管理手数料など) |
途中解約 | 可(解約返戻金を受け取れる) | 原則60歳まで不可 |
メリット |
・運用商品の選定などの手間がない(手軽) ・途中解約した場合、解約返戻金を受け取れる ・積み立てる期間は自分で決められる ・個人年金保険料控除を受けることができる ・老後資金を貯めながら、死亡保障も備えることができる |
・掛金が全額所得控除の対象になる ・運用して得た利益が非課税になる ・運用結果によっては大きく利益を出すことができる |
デメリット |
・インフレリスクがある ・元本割れの可能性は低いが、返礼率は高くない |
・運用商品は自分で選定する必要がある ・60歳まで原則中途解約不可 ・手数料がかかる ・元本割れの可能性がある ・職業によって掛金が制約されている |
個人年金保険とiDeCoはどちらがおすすめか
期待されるリターンはiDeCoの方が断然大きい
個人年金保険とiDeCoはどちらがおすすめかという点において、期待されるリターンで見ると断然iDeCoがおすすめです。iDeCoは自分で運用する商品を選べますが、その商品の中は元本保証型の預金商品から元本保証のない投資信託まで様々です。もし元本保証型の商品を選んだ場合は、どれだけ長期間運用したとしても利回りはほぼ0%ですが、元本割れの心配はありません。投資信託の商品を選んだ場合は実現可能な現実的な利回りとして3~5%程度と言われています。
一方、個人年金保険の場合一般的な商品(変額保険以外)の利回りは0.15%程度と言われており、元本割れの可能性は低く預貯金よりは増える可能性が高いですが受け取る金額が大きく増えることもほぼありません。iDeCoは選ぶ商品によって期待できるリターンは大きく変わりますが、ある程度のリスクを取った商品を選べば個人年金保険よりも大きなリターンが期待できます。
個人年金保険とiDeCoの運用シミュレーション
毎月15,000円を30歳から30年間積み立てた場合
個人年金保険 | iDeCo | |
想定利回り | 0.15% | 4%(平均利回り) |
60歳時点の積立元本 | 540万円 | 540万円 |
60歳時点の運用益 | 12.3万円 | 501.1万円 |
60歳時点の合計運用額 | 552.3万円 | 1041.1万円 |
あくまで一つのシミュレーションですが、iDeCoで投資信託型の商品を選び長期運用していった場合、個人年金保険より圧倒的に運用益を増やすことができます。仮に、iDeCoでよりリスクの低い商品を選び想定利回りが2%程度だったとしても、合計運用額は739.1万円と個人年金保険よりもたかいリターンが期待できます。
積立中の節税効果もiDeCoの方が高い
積立中の節税効果という点で見ても、iDeCoの方がその効果は高くなります。個人年金保険で積み立てを行うと、その金額の一部が個人年金保険料控除の対象となります。控除できる金額は所得税で年間4万円、住民税で年間2.8万円が上限です。つまり、上記のシミュレーションと同じく毎月15,000円支払い年間180,000円積み立てたとしても、控除できるのは上限の4万円×10%=4,000円と2.8万円×10%=2,800円を足した6,800円が限度となります。30年間の節税効果は204,000円です(税率10%の場合)。
一方iDeCoで積み立てを行うと、その全額が所得控除の対象になります。上記シミュレーションと同じく毎月15,000円を30年間積み立てた場合、年間積立180,000円に税率をかけた分がそのまま節税になるということです。所得税・住民税の税率が10%の場合、所得税180,000×10%=1.8万円、住民税180,000×10%=1.8万円で合わせて年間3.6万円の節税になります。30年間積み立てると節税効果は合計108万円となり、その節税効果の大きさがわかります。
個人年金保険に向いている人
上記期待されるリターンと積立中の節税効果を鑑みると、現状はiDeCoを利用する方が制度としてはおすすめできます。しかし、以下のような人の場合はiDeCoではなく、個人年金保険の利用が向いている可能性があります。
・より確実に老後資金を貯めたいと思っている人
・資産運用に関する知識がない人
・死亡保障も準備したい人
死亡保障と資産運用をまとめて行いたい人や、元本割れの可能性がある商品に不安がある人は個人年金保険をおすすめします(ただし、個人年金保険でも外貨建てなど変動タイプの商品の場合は、元本割れの可能性もあります)。
iDeCoに向いている人
上記個人年金保険におすすめの人に当てはまらない場合、特に以下のような人にはiDeCoをおすすめします。
・年収の高い人
・資産運用に関する知識がある人
・多少リスクがあっても大きなリターンを狙いたい人
iDeCoの所得控除には制限がないため、年収が高い人はより節税効果が高くなります。60歳まで原則解約ができないなどデメリットもありますが、強制的に老後資金を貯めることができ、より大きなリターンを見込むことができるため、なるべく早く利用するべき制度と言えるでしょう。
資金に余裕があるなら併用も可能
資金に余裕がある人の場合、個人年金保険とiDeCoの併用も可能です。iDeCoと同じく運用利益が非課税になる制度としてNISAやつみたてNISAとの併用もできます。制度を併用することで、分散しながらより確実に老後資金を貯めることができます。ただしどちらもも基本的には長期継続するべき制度ですので、無理のない範囲で保険料や掛金を設定することが大切です。もし途中で支払いが難しくなり解約したいとなった場合、iDeCoは原則解約不可、個人年金保険はいつでも解約できますが解約返戻金は今まで支払った保険料以下となる可能性が高い点には注意しましょう。
参考記事:
自分に合った制度を活用しよう
個人年金保険とiDeCoはどちらがおすすめなのかという点について解説しました。基本的にはiDeCoの方がより効率的に老後資金を貯められる可能性が高いですが、人によっては個人年金保険の方が向いているケースもあります。安心して老後を迎えるためにも、自分に合った方法で資産形成を進めましょう。