2021/01/30

PEファンドへのキャリアを在籍者の経歴から考察【最強のエリート集団の学歴・職歴】

PEファンド15社250名のデータをもとに、PEファンドへ転職するためにはどのような経歴・キャリアを辿れば良いのかを考察します。MBA保有率を含めた学歴や、新卒での入社企業も含めた職歴まで、PEファンド15社250名の経歴をもとに、PEファンドへ転職するための道を考察します。

PEファンドへのキャリアを在籍者のデータから考察

外資系投資銀行(外銀)や戦略コンサルティングファーム(戦略コンサル)経験者の"あがり"ポジションのイメージのあるプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)。

しかし黒子的な立場のせいかメディアへの露出は少なく、基本的には新卒採用も行っていないため、外銀や戦略コンサル以上に実態が分からない業界と言えます。

一方で最近は中途採用の求人も多くなってきており、なんとなくかっこいいイメージがあることから、PEファンドへの転職を考える方も増えてきています。外資系投資銀行の方や戦略コンサルタントにも、将来はなんとなくPEファンドに行きたい、と言っている方も多いです。

今回はPEファンド在籍者の経歴(学歴・職歴)を見ることで、PEファンドに転職するための道を模索したいと思います。

PEファンドとは?

投資ファンドの一つであるPEファンド。そもそも「投資ファンド」とはなんなのか。まずは投資ファンドの種類について解説します。

投資ファンドの種類

「投資ファンド」とは、企業に投資して投資先の成長によってリターンを得ることを生業とする企業です。様々な投資ファンドがありますが、一つの分類方法として、

1. 投資企業の成長段階

2. 出資比率

3. 運用期間

の3つの観点で整理することができます。

「PEファンド」とは、成熟企業に高い比率で出資し、5年程度かけて、経営陣等と協力し(あるいはPEファンドのメンバー自身が経営者となり)ながら企業のさらなる成長を実現することでリターンを得るファンドです。

「物言う株主」に代表されるようなアクティビストファンドとは違い、中長期かつ自身が経営サイドに深く入り込むことによって企業を成長させることが一番の特徴と言えます。

調査・分析対象

本記事では2016年〜2019年のPEファンド在籍者の経歴(学歴・職歴)を見ることで、PEファンドに転職するための道を考察します。対象者は、以下15のPEファンドに在籍する250名を対象としており、多くが管理職層(ディレクター、プリンシパル、パートナー等)ですが、アナリストやアソシエイトなどの層も含みます。


※全てのPEファンドの全ての社員ではなく、一部(サンプル)であるため、本記事の分析結果が必ずしもPEファンド全体にもあてはまるとは限らない点、あらかじめご留意ください(統計処理によりPEファンド全体の傾向を推定することもしていません)。また、データ取得期間の関係上、既に退職者が含まれている可能性もあります。

PEファンド在籍者の学歴

PEファンド在籍者の出身大学は以下の通りです。

東京大学と慶應義塾大学出身者が半数を占め、さらに海外大学(主にアメリカの名門大学)、京都大学、早稲田大学、一橋大学と続き、かなりの「高学歴」偏重と言えます。

※N=230(学歴不明除く)※その他大学は旧帝大、国公立大、MARCHなど

その他の大学の構成を見ても、旧帝国大学や国公立大学出身の方が多く含まれます。

やはり、PEファンドは、外資系投資銀行や戦略コンサルと同様に高学歴のエリート集団と言えます。

驚異のMBA取得率

MBAについては、対象者250人中82人(32.8%)もの人がMBAを取得しているという結果になりました。もちろんこの結果だけでMBAが有利かどうかは判断できませんが、MBAでは様々な企業の成功事例を扱うことから、企業の成長をサポートするPEファンドへの大きな足掛かりになるのかもしれません。

MBA取得先のビジネススクールは、その95%が海外の大学院であり、大半がハーバード大学(HBS)、ペンシルバニア大学、スタンフォード大学、ノースウェスタン大学、INSEAD、マサチューセッツ工科大学(MIT)、カリフォルニア大学バークレー校、シカゴ大学、イェール大学、ミシガン大学、コロンビア大学、ダートマス大学、ニューヨーク大学、と"FT Global MBA ranking 2019"を始めとする多くのMBAランキング上位に選出される一流校が集まっています。

一方で、数は少ないものの一橋大学や慶應義塾大学といった国内の大学でMBAを取得している方が4人おり、海外に比べて比較的取得ハードルの低い国内での取得も検討の余地があるかもしれません。

PEファンド在籍者の新卒で入社する業界

前述のとおり、高学歴エリートが集まるPEファンドですが基本的に新卒採用は行っていないため、最初に入る業界は別の業界になります。ここでは現在PEファンドに在籍する方が新卒で入社した業界・企業を見ていきます。

※N=246(新卒での職歴が不明な対象者を除く)

PEファンドの在籍者の新卒で入社する業界は、金融業界が過半数を超えています。

PEファンドの業務は、大きく分けて投資先の選定(バリュエーション)と成長(コンサルテーション)に分類されることを踏まえると、前者として金融・商社(数は少ないですが監査法人や会計事務所も含む)、後者としてコンサル(特に戦略)での経験が役に立つことが推察されます。また前述したとおりPEファンドの投資先とこれらの業界のクライアントが重なる部分が大きいことも関係するかもしれません。


※メーカーの内訳はトヨタ自動車、昭和電工、オムロン、積水化学工業、といった自動車、電機、化学、精密機械、消費財メーカーなどです。

PEファンド在籍者が多く集まる新卒入社企業

金融業界を始めとした上位5業界にPEファンド在籍者が5名以上いた企業は以下の表の通りです。

※カッコ内の数字は人数

各業界、見事なトップティアが並ぶ形となり、高学歴エリートの中でもさらなるトップ層が在籍していることが推測されます。日系銀行でも、日本興業銀行や日本長期信用銀行出身者など、当時の高学歴エリートが入社する企業出身者が目立つのも特徴的です。

次に、対象者がその後の2社目以降にどのような業界・企業に転職したのかを見ていきます。

PEファンド在籍者の新卒からの転職先

新卒入社の業界別に、2社目以降の転職先の業界を見ていきます。

PEファンドの在籍者(特に管理職層)は、複数のPEファンドや類似業界(PEファンド以外の投資ファンドなど)を渡り歩いている方が多いため、PEファンドを含む投資ファンドへの転職者を除いてみていきます。

2社目以降として投資ファンド系以外の業界を経た人の割合は以下の通りです。

※N=119

新卒で外銀や戦略コンサルに入社した方の多くが、2社目でPEファンドに転職しているのに対して、それ以外の業界に新卒入社した方は一度別の業界を経てからPEファンドに転職しているようです。

新卒で総合商社でも半数近くが投資ファンドへ転職しているが

グラフ上では、総合商社と総合・ITコンサルの半分程度も直接PEファンド系に行っていますが、その大半がMBAを取得しています。商社または総合・ITコンサルからでもMBAを取得することでPEファンドへ転職する近道になるかもしれません。

次は、新卒での入社企業からPEファンドに行くことの少ない業界(外銀・戦略コンサル以外の新卒入社の場合)において、どういうルートを経てPEファンドまで辿り着いたかを見ていきます。

PEファンド在籍者の2社目以降の業界

以下のグラフは横の項目が新卒の業界、棒グラフは2社目以降の業界の割合を示しています。なお、2社目以降に複数の業界を経験している場合は適宜案分しています。(例えば、2社目に外銀、3社目に戦略コンサルを経て、4社目に現職の場合は、2社目以降に外銀を0.5、戦略コンサルを0.5経験したとしています)。

PEファンドを含む投資ファンド系への転職は除いています。

共通して言えるのは、大半が一度は外銀、戦略コンサルを経てPEファンド系に転職しているということです。

特に、日系証券からは外銀への転職者が多く、総合商社や総合・ITコンサルは外銀、戦略コンサルの両方、メーカーは戦略コンサルを経ている方が多い印象です。

すなわち、新卒で採用人数の少ない(東大・慶應でもトップ層が入る)外銀や戦略コンサルに入社できなかったとしても、2社目以降で外銀や戦略コンサルに転職できればPEファンド入社への可能性はかなり高まると言えるでしょう。

具体的に日系証券、総合商社、総合・ITコンサル及びメーカーからPEファンド(現職)に転職した例は以下があげられます。


【日系証券→外銀→PEファンドの例】

栗山史氏

明治大学工学部卒

大和証券新卒入社

クレディ・スイス・ファースト・ボストン証券、BZW証券会社、ゴールドマン・サックス証券、メリルリンチ証券、アライアンス・バーンスタインを経て

2012年 フロンティア・マネジメント入社/執行役員


【総合商社→戦略コンサル→PEファンドの例】

安達保氏

東京大学工学部卒

MIT(MBA)

三菱商事新卒入社

マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て

2003年 カーライル・グループ入社/シニアアドバイザー


【総合・ITコンサル→戦略コンサル→PEファンドの例】

米ノ井克司氏

早稲田大学理工学部卒

トゥールーズ・ビジネス・スクール(航空MBA)

デロイト・トーマツ・コンサルティング新卒入社

BCGを経て

2017年 CLSAサンライズ・キャピタル入社/シニア・アソシエイト


【メーカー→戦略コンサル→他業界→の例】

呉哲民氏

亜細亜大学経営学部経営学科卒

一橋大学(MBA)

オムロン新卒入社

BCG、アリックス・パートナーズを経て

2015年 ジャパン・インダストリアル・ソリューションズ入社/マネージングディレクター

PEファンドへ転職したいのなら

本記事をまとめると、


1. PEファンド在籍者は高学歴。MBA保有率も高い。

PEファンド在籍者は東京大学・慶應義塾大学・海外大学出身者が多くを占めています。さらに多くの人が海外の評価の高いビジネススクールでMBAを取得しています。


2. 新卒で入社する業界は金融か戦略コンサルがPEファンドへの転職可能性が高い。

新卒入社の企業はPEファンドで必要なスキルを身につけることができる金融または戦略コンサルが多いという傾向も見られました。金融・戦略コンサル以外であれば、総合商社の三菱商事出身者も目立ちます。

外資系投資銀行・戦略コンサル出身ならば2社目でPEファンドに転職することも可能です。それ以外の業界であってもMBAを取得すれば直接PEファンドへ行く道も開けますし、その後の転職先でも十分にPEファンドへの転職は可能です。


3. 転職を挟むのであれば、外資系投資銀行か戦略コンサルへの転職を目指せ。

総合・ITコンサルや監査法人・会計事務所、メーカー(日系・外資)、それ以外の業界であっても、転職先次第でPEファンドへの転職のチャンスは十分にあります。外資系投資銀行か戦略コンサルへの転職を目指すのがPEファンドへの近道になりそうです。


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