2021/01/05

住宅ローン「借入期間35年で繰り上げ返済」と「借入期間20年」を比較

住宅ローンを35年ローンで借入し、繰り上げ返済をして20年で返済が終了する場合と、最初から20年ローンで借入する場合を比較します。

住宅ローン「35年の繰り上げ返済」と「20年で返済」を比較

住宅ローンを「借入期間35年で繰り上げ返済して20年で支払い完了」する場合と、「最初から借入期間20年で返済」する場合を比較します。

※本記事は住宅関連企業に勤めるゲストライターによる寄稿記事です。


参考記事:『住宅ローンを繰り上げ返済するメリットについて考察

住宅ローンの返済はどうするのがお得?

住宅の購入は人生の中でも非常に大きな買い物です。

住宅ローンの返済は毎月の支出の中でも特に大きな費用になってくるため、悩みを抱えている方が多いのが実情です。

特に、「住宅ローンの繰り上げ返済はするべきか?繰り上げ返済した方がお得なのか?」という話は、これからローンを組む方、現在すでにローンを組んでいる方ともに悩みの大きいポイントのようです。

本記事では、

・まずは35年で住宅ローンを組んで、繰り上げ返済をする

・最初から20年で住宅ローンを組む

上記2パターンの場合、結局どちらの方が得なのかということについて説明します。

お得かどうかの判断は、基本的には「支払利息の総額の比較」で行いますが、後半でそれ以外のそれぞれのメリット・デメリットについても説明します。

35年ローンと20年ローンを単純に比較

まずは、

・借入金額:5,000万円

・金利(当初10年間):0.6%

・金利(11年目以降):0.85%

・返済方式:元利金等返済

で借入した場合の、返済期間が35年と20年の場合を単純に比較すると、以下の表のようになります。


5,000万円の借入を通常通り35年で返済した場合、

・総支払額:5,667万円

・うち利息:667万円

となるのに対し、20年で返済する場合は、

・総支払額:5,340万円

・うち利息:340万円

となり、利息で考えると、327万円ほど20年ローンの方が「お得」となります。

ただし、毎月の返済額は当然大きく変わり、35年ローンの場合は13万円台なのに対し、20年ローンの場合は22万円台となります。

35年の住宅ローンを繰り上げ返済で20年で完済するには

次に、同じ条件で、35年ローンを繰り上げ返済で20年で返済するためには、何年目でいくらの繰り上げ返済が必要か計算します。下の表は、それぞれ何年目にいくら繰り上げ返済をすれば返済期間が20年で完済になるかをまとめたものです。

住宅ローンの繰り上げ返済は、早ければ早いほど利息軽減効果が大きいですが、20年での完済で合わせても同様の結果になります。

例えば、15年後に2,210万円の繰り上げ返済をすれば、20年でローンは完済でき、35年間通常通りローンを返済した場合と比べて、246万円(667万円→421万円)の利息軽減効果があります。また、最初から20年ローンを組んでいた場合と比べると、81万円(340万円→421万円)ほど最初から20年ローンを組んでいた場合の方が「お得」になります。

「35年ローンを20年で完済できるように繰り上げ返済をする」場合、本ケースにおいては、10年後〜11年後を境に、それより早ければ35年ローンの方が、それより遅ければ20年ローンの方が利息面では「お得」になります。

もちろん、5年後、10年後に、ある程度大きな金額の繰り上げ返済をすることがそもそも可能なのか、さらにその資金があった場合、繰り上げ返済に充当することが本当に適切なのか、という話もあります。


(参考:『住宅ローンを繰り上げ返済するメリットについて考察』)

住宅ローンを短い期間で組むと、借入可能額が下がる

そもそもの大前提の話になるのですが、20年ローンの方が35年ローンよりもローンを組む難易度が高いです。ローンの借入限度額は基本的には年収(や企業名)に応じて設定されますが、35年かけて返せる金額と20年かけて返せる金額は当然異なります。したがって、借入限度額も大きく変わってきます。

例えば、年収600万円の独身の方で、返済負担率が25%だとすると、借入限度額は、

・35年ローンの場合:4,734万円

・20年ローンの場合:2,826万円

となります。あくまでシミュレーションではあるものの、2,000万円近く借入限度額に差があることがわかります。

(当初金利0.6%を想定。住宅情報機構株式会社の住宅ローンシミュレーションをもとに筆者試算。)

なお、返済負担率とは、年収のうち(年間の)ローン返済に充てる費用の割合のことで、住宅ローン以外にも自動車ローンなども含めて算出します。「返済比率」「返済負担割合」と呼ばれることもあります。金融機関ごとに、年収に応じた返済負担率の上限が定められていて、基本的には年収が高いほど返済負担率も高く設定されます。年収に応じて差はありますが、一般的には25〜35%程度が目安となります。


以上のことから、住宅ローンを組む際に、「そもそも20年などの短期間でローンを組めるのか」という点はハードルとして存在することも認識しておくと良いと思います。

20年ローンのリスク

その他にも、20年で住宅ローンを組んだ場合に想定されるリスクとして、仮に返済負担がキツくなり返済期間を伸ばしたい(例:20年から25年への返済期間の切り替え。返済の「繰り延べ」)と考えた時の難易度が高いことです。もちろん不可能というわけではないのですが、

・繰り延べの理由が必要(金融機関の審査をクリアする必要がある)

・個人の信用情報に傷がつく

・返済期間を伸ばす分、総支払額(利息)が増加する

などといったハードルやデメリットが存在します。

「繰り延べ返済」とは言うものの、内容としては「借金が返せなさそうなので期限を伸ばして欲しい」と言うことと同義なので、金融機関も一定の根拠がなければ認めてくれません。その後の生活にも影響を残すリスクも考えると、気軽に選べる選択肢ではありません。

35年ローンで状況に応じて繰り上げ返済するのがおすすめ

「繰り延べ返済」の難易度が高い一方、「繰り上げ返済」は収入や家計の状況に合わせて実行できるものです。ですので、基本的には、まずは長い期間で住宅ローンを組み、状況に応じて繰り上げ返済をしていく方が、リスクは抑えられます。

もちろん、35年ローンの返済よりも20年ローンの返済の方が支払い利息の総額は少ないですし、35年ローンを繰り上げ返済する場合でも、よほど早い段階で大きな金額での繰り上げ返済をしない限りは、20年ローンの返済の方が支払い利息の総額は少なくなります。ただし、それ以上に、そもそも短い期間での住宅ローンは借入可能額が低くなること、また、「繰り上げ返済」は簡単にできても「繰り延べ返済」の難易度やデメリットを考えると、「35年の住宅ローンを組み、状況に応じて繰り上げ返済をする」というのが返済方法としてはおすすめです。

また、繰り上げ返済をする場合でも、そもそも繰り上げ返済をした方がリターンが大きいのか、というのは考える必要があります。繰り上げ返済のメリット・デメリットについては、以下の参考記事がわかりやすいと思います。

参考:『住宅ローンを繰り上げ返済するメリットについて考察

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