2022/06/21
健康保険(公的医療保険)の種類徹底解説
健康保険(公的医療保険)の種類について解説します。国民皆保険制度である日本では、誰もが何かしらの健康保険に加入しています。代表的な公的医療保険制度である健康保険と国民健康保険の違いから、その他の健康保険の特徴、健康保険証に書いてある項目の見方までわかりやすく解説しますので、参考にしてください。
日本の公的医療保険制度
健康保険とは公的医療保険制度のことで、公的医療保険とは加入者が病気や怪我などで医療が必要となったときに、その医療費の一部を公的機関などが負担するという制度です。日本ではすべての人が公的医療保険に加入することと決まっており、これを「国民皆保険制度」と呼んでいます。すべての人が健康保険をはじめとした公的医療保険に加入し、全員が保険料を支払うことによってお互いの負担を軽減させるという仕組みです。
代表的な公的医療保険としては「健康保険」と「国民健康保険」がありますが、名前が似ているため違いがよくわからないという人も多いと思います。まずはこの2つの公的医療保険の違いを解説します。
健康保険
健康保険とは企業に勤める従業員が加入する公的医療保険で、正社員だけでなくパート・アルバイト・契約社員などの人も条件次第で対象となります(正社員の勤務時間と比較して、4分の3以上働いている人が加入対象となる)。健康保険はさらに2つにわけられ、主に大企業が独自の組合を設立して運営する「健康保険組合(組合けんぽ)」と、主に中小企業の従業員が加入する「健康保険協会(協会けんぽ)」があります。
国民健康保険
国民健康保険とは、健康保険や以下で紹介するその他公的医療保険の対象とならないすべての人(自営業・フリーターなど)が加入する保険です。日本は国民皆保険制度を採用しているため、無職の人も国民健康保険に加入することとなります。国民健康保険は対象者が住んでいる地域の自治体が保険者として管理しており、保険料は被保険者の年齢や前年の所得金額をもとに世帯単位で計算されます。保険料の計算方法は市区町村によって異なるため、引っ越しなどで違う自治体となった場合は、所得金額が変わらなくても保険料が変わる可能性があります。
国民健康保険は健康保険と比べると傷病手当金や出産手当金などの給付がない市区町村がほとんどなので、保障としてはやや手薄です。国民健康保険の被保険者は、健康保険の被保険者と比べるとより民間の医療保険等を検討する必要性が高いと言えるでしょう。
健康保険 | 国民健康保険 | |
制度の運営者 | 健康保険組合または健康保険協会 | 自治体 |
制度の対象となる人 | 企業に勤める会社員とその扶養家族 | 自営業・フリーター・無職など |
扶養制度 | あり | なし |
保険料の支払い | 事業主と折半 | 全額自己負担 |
健康保険・国民健康保険以外の公的医療保険
公的医療保険には健康保険と国民健康保険以外にも、年齢や職業によっていくつかの種類があります。
共済組合
共済組合とは、公務員や教員・私立学校の教員などが対象となる保険です。国家公務員、地方公務員などそれぞれの区分ごとに作られた「共済組合」が管理しています。
日雇健康保険
日雇健康保険とは、土木・建築業などの日雇い労働者が加入することのできる保険です。この保険の加入者は「日雇特例被保険者」とも呼ばれ、保険料の算定には日額が用いられるなど一般的な健康保険の被保険者とは異なる扱いを受けます。
船員保険
船員保険は、日本の船舶で働いている船長、船員、予備船員などが対象者となる保険です。ただしすべての船員が対象となるわけではなく、5トン未満の船舶や、川や湖、港内だけを航行する船舶の船員は船員保険の対象とはなりません。
後期高齢者医療制度
後期高齢者医療制度とは、75歳以上もしくは65歳以上で障害を持つ高齢者が加入する公的医療保険です。後期高齢者医療制度は2008年からスタートした制度で、75歳になるとそれまで入っていた国民健康保険から後期高齢者利用制度に必ず移行する形になります。後期高齢者の中でも所得によってかかる医療費の負担がわかれていますが、基本的には自己負担は1割と定められています。
健康保険証の見方
すべての公的医療保険加入者には健康保険証が配布されます。医療機関で健康保険証を提示することで、自身の負担割合の分の自己負担金額を払うだけで済むようになっています。健康保険証には様々な情報が記載されていますが、主な重要な記載事項は以下の通りです。
保険者番号
「保険者番号」とは、健康保険証の下部に印字されている8ケタ(国民健康保険は6ケタ)の数字のことです。この番号は厚生労働省によって付与するルールが決められているので、この番号を見ることである程度の勤務先や保険の種類などがわかるようになっています。
8ケタの保険者番号の場合、最初の2ケタの数字のことを法別番号と言い、以下のように区分されています。
法別番号 | 公的医療保険の名称 | 主な加入者 |
01 | 健康保険協会 | 中小企業の従業員 |
02 | 船員保険 | 船員など |
03または04 | 日雇健康保険 | 日雇い労働者 |
06 | 健康保険組合 | 大企業の従業員 |
07 | 自衛官等療養給付 | 自衛官 |
31 | 国家公務員共済組合 | 国家公務員 |
32 | 地方公務員共済組合 | 地方公務員 |
33 | 警察共済組合 | 警察官 |
34 | 公立学校共済組合 | 教職員 |
39 | 後期高齢者医療制度 | 75歳以上の高齢者など |
63 | 特定健康保険組合 | 任意継続の被保険者など |
記号
「記号」とは「事業所整理記号」とも呼ばれ、同じ健康保険組合の中で被保険者が所属する企業に割り振られた番号のことです。
番号
「番号」とは、同じ企業内で被保険者ごとに割り振られた番号のことです。もし扶養家族がいる場合は、その扶養家族も同じ番号になります。
健康保険の種類と仕組みを理解しよう
健康保険の種類について解説しました。日本の公的医療保険は世界の中でもとても手厚い部類で、大きな負担なく医療を受けられるとてもありがたい制度です。しかし、公的医療保険があっても先進治療など保険の適用とならない高額な治療もあり、どんな治療でも自己負担少なく受けられるというわけではありません。健康保険制度を頼りすぎるのではなく、必要であれば民間の医療保険も検討するようにしましょう。
参考記事:『医療保険の選び方』