2020/12/21

「3年目で年収900万円超」博報堂現役社員インタビュー【働き方・年収・転職事情まで】

博報堂現役社員へのインタビュー記事。電通との違いをはじめとした広告代理店業界での博報堂の立ち位置やグループ企業との関係、博報堂の働き方の実態、年収・昇進イメージと役職、博報堂への転職や博報堂からの転職事情など幅広くお聞きしました。

博報堂の業界での立ち位置。電通との違いはあるのか?

−−−これまでの経歴を簡単に教えてください。

国立大学を卒業後、新卒で博報堂に入社しました。入社後は、数年ごとに担当の業界が変わりながら、CMやWeb動画の制作を行っています。


−−−はじめに、広告業界全体の中での博報堂の立ち位置についておうかがいしたいと思います。広告代理店といえば「電博」と言うように、どうしても電通と比べられることが多いと思いますが、実際、電通との違いなどはあるのでしょうか?

中にいる限りでは、みんなそんなに電通との違いを気にすることはないのですが、電通の方がすごいです。人数も資産も全然違いますから。「電博」とは言われますけど、売上も半分ですし、電通には全然かないません。

ちなみに、「電博」という言葉を作った人は、最強のコピーライターだって言われているんです。同等みたいに見えるじゃないですか?でも、博報堂はオリンピックも触れませんし、日本をあげて何かをするっていうときも絶対に電通が選ばれます。電通に勝っているとこなんてどこもないんじゃないかと思います。電通は世界の企業ですが、博報堂はしょせん日本の中の企業なんです。

人材に関してもそこまで詳しくはありませんが、電通の方が人数も多いから優秀な人が多いんじゃないかなと思っています。


−−−そうはいっても、博報堂はここだったら電通には負けない、というところもあるんじゃないでしょうか?「正直、電通の人よりも博報堂の人の方が賢いと思うことが多い」という声もよく聞きます。

うーん、電通に負けていないというところは正直あまりないと思います。電通の方が昔からあるし、根回しの力も強く、ゴリっとした仕切り方もできます。

資金面に関してだと、例えばテレビの枠を買うときなんかにも、電通の場合は赤字でもいいですっていう買い方ができるんですが、博報堂はお金がないのでできません。

タレントの起用に関しても、電通はAKBとかEXILEとか吉本とかとどっぷりなように芸能関係に強いので博報堂はかないません。

そういったことから、博報堂はデータを使ったり小頭いい感じにするしか差別化できないんですよね。真っ向勝負ではかなわないから、「データを活用したマーケティング戦略」みたいなところで意識的に勝負しています。だからなんとなく博報堂の方が頭良さそうみたいなイメージを持つ人もいるんじゃないでしょうか。世間では電通は体育会・男社会の厳しいイメージがありますよね。そういった見え方の部分もあると思います。


−−−他の広告代理店についてはどう感じていますか?

他社を意識することはほとんどないですね。あるとしたら、デジタルではサイバーエージェントが強いですね。人数も多いですし、価格も下げてきたりもしますし。他には、トランスコスモスはお客さんへのケアが強い印象があります。サイバーエージェントやトランスコスモスは、SNSのアカウント運用みたいな細かい仕事もかなり取ってきていますね。最近は旧来の広告代理店よりも、デジタル専用代理店の方が強いと思います。ADKなんてサイバーエージェントに買収されるんじゃないかっていうくらい、サイバーエージェントは強いですね。


−−−デジタル領域に関していえば、博報堂の子会社や孫会社にもデジタル専用代理店などもありますよね?グループ企業についてはどう感じていますか?

あまりグループ企業という認識はなく、プロダクションの一個としか思っていないような気がします。ただグループでやったほうが博報堂としての収益が上がるから、できる限りグループ発注しましょうねっていうのはありますけど、それくらいですかね。

人材の質は、正直全然違います。プロダクションと代理店って全然違くて、代理店は考える人、プロダクションは実行する人なんです。言い方が悪くなってしまいますが、実行する部分にはそんなに頭はいらないんですよね。博報堂が決めた案をよりよく実現するために、例えばカメラは何を使うかとか、撮影のロケ地をどこにしようとか、そういう部分を考えるのがプロダクションなので、代理店とは役割が違います。もちろん役割が違うので、比較はできません。ただ、実際のところ、博報堂に入れなくて、グループ企業のプロダクションに行っているという人も多いのは事実なんです。人にもよりますし、個人的な感覚の部分もあるので一概には言えませんが、個人的にも博報堂の方が頭が良い人が多かったり、企画にしても出してくる企画が面白い人が多いと感じています。

博報堂の働き方。やはり激務なのか?

−−−博報堂といえば激務、タクシー帰りも当たり前のイメージですが、働き方について教えてください。

部署や年次、クライアントによって違うかもしれません。年次でいえば、もちろん若い方が帰れないことが多いですね。クライアントでいえば、小さいクライアントだと帰りは早めなことが多いのに対して、大きいクライアントだと終電やタクシー帰りが当たり前だったり。土日出勤もケースバイケースですが、あるときはあります。撮影やイベントは土日が多かったりもしますから、そういうのもありますね。個人的には、金曜日はあまり働きたくないので、金曜は早めに終わらせて、その代わり土日に働けばいいやという感じで土日に働くことも多いです。それでも、週5日フルで働いて、土日もフルで働いて死にそう、ということはありません。週5日タクシーで帰って、土日は休める、みたいな感じですかね。


−−−働き方の面でも電通との違いなどはあったりするのでしょうか?

例の出来事もあり、電通の方が早く帰っています。もちろん博報堂でも気をつけていますが、努力目標、という感じですね。電通は、クライアントに頭下げてこれ以上はやれませんって言っています。博報堂の場合は、クライアントが働き方改革などで早く帰るようになって、夜8時以降は絶対に連絡が来ないようになったりして、早く帰れることが多くなりましたね。でも、CMやイベントなどの繁忙期は徹夜することもありますよ。逆に、CMの制作が終わったりした後は暇になることもあり、波があります。

働き方でいうと、自由なスタイルです。営業の場合は、クライアントに合わせて何時に来るみたいなことがありますが、スタッフ(編集部注:コピーライターなどの企画を考える人の総称。営業ではない人たちのこと。)は日中いなかったりもします。企画書を書くのは家でもできますし、やることをやっていればいいという雰囲気です。夜型の人とかは16時に来て、朝の3時まで働くみたいなこともあります。やることをやっていれば何も言われない文化です。


−−−飲み会なども参加自由だったりするのでしょうか?

飲み会も、チームや人によりけりですね。自分は飲み会が好きじゃないので、ほとんど行っていません。もちろん、飲み会もお酒も強要もされませんよ。

博報堂DYメディアパートナーズっていうテレビ局の担当では、テレビ局がそういう飲み会をするので結構多いですが、そもそもお酒嫌いな人はそこの部署に行きません。まあ、間違って行ってしまったとしても、飲み会は断れますね。時代が時代なので、飲み会やお酒を強要なんてしてしまったら、すぐパワハラって言われちゃいますからね。上が守ってくれます。というより、上の方が気にしなきゃいけない雰囲気になっていますね。


−−−ちなみに、合コンなどのプライベートな飲み会はありますか?博報堂の社員はどの辺で飲んでいますか?

最近は博報堂の就職人気ランキングも落ちてきているようで、以前よりは人気はなくなってきているみたいですが、若い社員はかなり合コンをしている人も多いですね。まだぎりぎりモテると聞きました(笑)。ある程度年を取ると、男性は結婚している人が多いです。ほぼ社外での結婚です。女性は独身の人が多いですね。

飲み会は、六本木とか西麻布とか乃木坂とか、いわゆる港区界隈でしていますね。赤坂にはいませんが。住んでいるのは、代々木上原、下北沢、学芸大学、三宿、不動前とかその周辺エリアが多いですね。渋谷区・港区が多いのかな。

博報堂の年収。3年目で900万円超。

−−−博報堂の年収イメージについて教えてください。

入社1年目で残業代を含めて700万円くらいでしょうか。そこから入社3年目で900万円を超えるくらいまで上がります。初任給が28万円くらいだと思います。それに残業代がつきます。例えば、残業が毎月100時間で時給が2000円ちょっとで深夜だとさらに+25%、とかだと、額面で60万円くらいになるんですかね。若手はかなり給料が高いと思います。電通は60時間くらいしか残業できませんが、博報堂は申請すれば140時間まで残業代がつけられます。

入社4年目の10月から残業代がつかなくなり、みなし残業になります。そうすると、毎月の給料が10万円くらいは下がります。なので、このタイミングで辞める人も多いですね。ただ、残業代がつかなくなっても、その分ボーナスの金額が上がるので、年収は下がるわけではないんですよね。ただ、毎月の手取りはかなり減ってしまう感覚になります。4年目以降はゆるゆると年収が上がっていって、10年目くらいで年収1000万円に乗るくらいですね。


−−−博報堂の昇進イメージについて教えてください。

博報堂は、役職が部長と局長と局長代理くらいしかないんです。この役職が給料とは関係がありません。役職とは別に、基本的には年々上がっていくグレードというのがあります。1万円単位とかのかなり細かい給与テーブルになっているのですが、そのグレードによって給料が決まります。グレードは、上がるスピードに若干の差はありますが、よほどのことがない限り、上がっていきます。


−−−役職と給料は関係ないんですね。

そうですね、部長は名誉や肩書きがあるというだけで、給料とは関係ありません。年次が上がることで給与テーブルは上がっていきますし、もちろん成果を出せば給与テーブルの上がり方は早くなりますが、それと部長になれるかどうかは別問題の部分があります。また、部長になれたとしても、任期もあるので、それまでに成果を出せないと、平社員に戻ります。どちらにしても、給料と役職は紐づいてはいないんです。

博報堂への転職。博報堂からの転職。

−−−博報堂への転職者が最近増えているように感じますが、実際のところいかがでしょうか?

最近かなり多いですね。中途だらけです。5年目くらいの若い社員の研修では、8〜9割が中途だったと聞きました。社会人5年目以内の転職者が結構いるのかもしれませんね。肌感としては、10年目未満の転職者が多いと思います。電通の子会社とかADKからとか、業界経験者が多いです。あとはたまにボスコン(編集部注:ボストン コンサルティング グループ)などの外資系コンサルとか東京海上みたいな関係のなさそうな業界からの転職者もいますね。

新卒プロパーのマインド的には、プロパーじゃない人よりもプロパーの方が優秀だろと思っている人が多そうですが、実際のところはそこまで変わらない印象です。ただ、最近は誰でも入れるんじゃないかという気がしてくるくらい本当に転職者が多くて、さすがに人材の質は落ちてきてるんじゃないのかと思うことはあります。


−−−どういう人が博報堂に向いていると思いますか?

心が強い人じゃないでしょうか?心と体が強い人ですね。一般的な企業と比べれば、帰るのはかなり遅いですし。営業の場合はクライアントとスタッフの板挟みになることも多いです。スタッフはスタッフで、大御所のクリエイターさんとかがいて怖いんですよね。師弟関係とかもありますから。プロフェッショナルな人が多い分、求めてくるものが高いので、怒られることも多いですよ。だから心の強さは必要だと思います。普通に寝れないこととかもあるので、体力も必要です。

でも良い人が多いと思いますよ。それは電通も同じなんじゃないかな。ある程度それが当たり前だと思ってみんな入ってきますし、嫌味っぽい人とかはいないですね。

博報堂の雰囲気でいうと、電通ほど体育会ではありません。もちろんいわゆる「広告マン」みたいな人もいます。一方で、理系のオタクみたいな人もいたり、だぼだぼの服を着たいわゆる「クリエイター」みたいな人もいたり、いろんな人がいる感じです。でも電通みたいなゴリゴリした人はあまりいないですかね。


−−−博報堂から転職いていく人も多い印象です。

博報堂から出て行く人も最近かなり多いです。起業する人もいれば、Airbnb(エアービアンドビー)のような最近日本に来ている外資ベンチャー、国内ベンチャー、NPO、コンサル、メーカーの宣伝部系とか。グーグルやフェイスブックも多いかもしれません。かなりバラバラですが、外資系に行く人が多い印象です。博報堂よりも給料良いところに行きたいと思ったら、そうなってしまうんじゃないでしょうか?博報堂はなんだかんだ給料も世間体も良いので、それ以上となるとそんなに選択肢は多くないのかもしれません。ある外資系企業に転職した知人は、給料は倍になったのに働く時間は大幅に減ったと言っていました。


−−−最後に、博報堂へ転職を考えている方に、何か一言お願いします。

プロパー社員が中途社員に対して強いと思っていることに、1,2年目の経験が大きいと感じています。先ほどもお話ししたように、若いうちは特に、どの仕事でも理不尽なことが多いです。頭の良し悪しもあるんですが、とにかくまずは全て理不尽なことも受け入れて、頑張れるかどうかが一番大切なことだと思っています。中途社員でも、似たような環境から転職してきた人は活躍している人が多い印象です。ストレス耐性が高い人ですね。

自分のまわりに関して言えば、中途社員はプライドも高く自分をよく見せようという意地もある人が多いです。ただ、今お話ししたように、意地を張っていても何にもならないことも多いので、一度プライドとかを全部捨てて、仕事に取り組めるような人と一緒に仕事をしたいですね。


−−−本日はありがとうございました。


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参考:

博報堂社員の年収・貯金などの資産データ一覧|OpenMoney

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