2022/02/14

生命保険の予定利率とは

生命保険の予定利率について解説します。保険商品を検討する際、資料などで見かける「予定利率」という言葉ですが、どのような意味があるのでしょうか。予定利率が関わる生命保険の保険料の決め方から、標準利率や金利との違い、現在の予定利率の状況についてまでわかりやすく解説しますので、参考にしてください。

予定利率とは、保険料を決める要素の一つ

保険の予定利率とは、保険会社が保険の契約者に約束する運用利回りのことです。保険料を決定するために用いる基礎率の一つで、予定利率が高い商品は保険料が安く、予定利率が低い商品は保険料が高くなります。

保険会社は、契約者から預かった保険料をずっとそのままにしているのではなく、有価証券などの金融商品や中小企業への貸し出し、不動産への投資などで長期的に運用し増やしていきます。運用でどれだけ増やすことができるかを約束した数値が予定利率となるため、予定利率が高いということは運用収益が高いという予定に基づいて契約することになり、契約者が支払う保険料は安くなります。

保険料を決める3つの基礎率

予定利率に加えて、予定死亡率(保険期間中に死亡する人の割合を予測した数値)、予定事業費率(保険会社が事業運営していく上で必要な経費を予測した数値)を合わせた3つが保険料を決める基礎率と言われている数値です。つまり、保険料は予定利率(保険会社が運用でどれくらい増やすかの予測)と予定死亡率(何人が死亡していくらの保険金が支払われるのかの予測)と予定事業費率(保険会社の運営にどの程度諸経費がかかるかの予測)によって決定されます。

保険の種類には生命保険や医療保険、がん保険など様々な種類がありますが、一般的に貯蓄性が高いと言われている終身死亡保険、学資保険、個人年金保険などは予定利率の数値によってどれくらいお金が増えるかが決まるため、特に重要な指標となります。

標準利率との違い

予定利率と似た言葉に標準利率がありますが、これは予定利率とは全く異なります。標準利率とは金融庁が保険会社に対して定める予定利率の目安とする運用利回りのことです。保険会社は金融庁が設定した標準利率をもとに、自社商品の予定利率を決定していくという流れになります。保険会社には標準利率に連動して予定利率を設定しなければいけないという義務はありませんが、予定利率を標準利率より高く設定しすぎてしまうと保険会社の運用に対する負担が増してしまうため、多くの保険会社では標準利率の動きに連動して予定利率も上げ下げされています。

日本においてはバブル崩壊によって低金利政策が施行され、近年では日銀がマイナス金利政策を打ち出している影響から、標準利率は以下の通り下がる一方となっています。標準利率が今後さらに下がった場合、すでに契約している商品の予定利率は変更されませんが、新しく契約する商品には新しく設定された予定利率が適用されます。

標準利率の推移

改訂年度 標準利率
1994年 3.75%
1996年 2.75%
1999年 2.0%
2001年 1.5%
2012年 1.0%
2017年 0.25%

上記のように標準利率は下がり続けているため、昔加入した保険の方がお金が増えやすいという状況になっています。長年加入している保険の解約を検討している場合は、新しく入る保険の予定利率と比べながら安易に解約してしまうことのないようにしましょう。

予定利率=金利ではない

予定利率が保険料の運用利回りのことを指すなら、銀行の金利と同じ意味では?と思う人もいるかもしれませんが、予定利率は金利とは異なります。銀行に預けたときにかかる金利は預けたお金すべてに対して複利計算でかかりますが、予定利率は保険料から諸々の経費を引いた残りの金額に単利計算でかかります。そのため予定利率と金利を比べた場合、銀行に同じ額を預金するよりも元本は少なく、利息が出にくい条件で計算されています。支払う(預ける)金額が同じで、金利と予定利率が同じだったとしても、保険よりも預金の方がお金が増えやすいということです。単純に銀行の利息と保険の予定利率を比べてどっちの方が増えるかという判断はしないようにしましょう。

低い予定利率は、今後も続く見込み

保険の予定利率について解説しました。予定利率を決める要素である標準利率は下がり続けており、特に2017年の標準利率の引き下げは保険会社の予定利率に大きく影響を与え、保険商品自体の販売中止など強い影響がありました。日銀は現在の政策を経済が安定的に成長し、物価上昇率が目標の2%になるまでは継続するとしており今後もこの低い予定利率は続く見込みです。予定利率が高い時代の商品に加入している人は保険を見直す際も解約ではなく特約の付加・解約で対応するなど、安易に解約を選ばないようにしましょう。またこれから保険に加入する人は、複数の商品をよく比較、検討した上で、保障内容や貯蓄性、保険料負担のバランスを見極めて検討することが大切です。


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