2022/03/07

学資保険のメリット・デメリットとは。必要性から注意点まで

学資保険のメリット・デメリットについて解説します。子どもが産まれる際、教育資金を貯めるために学資保険を検討する人は多いと思います。では教育費を学資保険で準備することは適切なのでしょうか。教育に必要だと言われている費用から学資保険の仕組み、必要性や注意点までわかりやすく解説しますので、参考にしてください。

学資保険とは

学資保険とは、教育資金を準備するための貯蓄機能を持った生命保険のことです。毎月保険料を支払うことで将来の教育資金を積み立てるとともに、子どももしくは親に万が一のことがあった際には保険金が支払われます(契約者(親)が契約期間中に死亡もしくは高度障害状態になってしまった場合は、その後の保険料支払いが免除され、満期保険金等も受け取ることができます)。

積み立てた保険料は、子どもの成長や進学に合わせて祝金や満期保険金という形で受け取ることができます。多くの学資保険は大学進学のタイミング(18歳)で満期保険金が受け取れるようになっていますが、満期保険金の他に中学や高校進学のタイミングでそれぞれ祝金がもらえるタイプの商品もあります。

学資保険に加入できる期間は保険会社によって異なりますが、妊娠中から子どもが6~7歳になるまでの間くらいで加入できるという保険会社が多いようです。被保険者(子ども)と同居しているなどの条件を満たしていれば、親でなくても祖父母等でも学資保険に加入することができます。

学資保険の種類

学資保険には大きく分けて「貯蓄重視型」と「保障重視型」という2つの種類があります。貯蓄重視型の商品の場合、教育費用の準備に特化しており、返戻率が高めに設定されている反面万が一の際の保障は少なくなっています。保障重視型の商品の場合は、万が一の保障が手厚くなっていますが返戻率は低めに設定されています。貯蓄重視型の場合は満期保険金が今までに支払った保険料総額を上回ることが多いですが、保障重視型の場合、満期保険金が今までに支払った保険料総額を下回ることもあります。

子どもの教育にかかる費用

そもそも、子どもの教育にはいくらくらいかかるのでしょうか。文部科学省のデータによると、幼稚園から大学まですべて公立で進学した場合は総額で平均約1,080万円、すべて私立で進学した場合の平均は約2,535万円でした(この金額には学校に支払う授業料の他、修学旅行・遠足などの費用や教科書代、制服代、通学費用なども含まれています)。

中でも大学は、4年間で500~1,000万円近い費用がかかるとされているため大学入学までに貯蓄を行っておくことが非常に大切となります。そのため多くの学資保険は、一番お金がかかるタイミングである大学入学に合わせて満期保険金が受け取れる設定になっています。

参考:子供の学習費調査(文部科学省)


学資保険の加入率

ソニー生命が高校生以下の子どもの親748名に対して行った調査によると、進学のための教育資金をどのような方法で準備しているかという問いに対して「銀行預金」(55.1%)と「学資保険」(50.7%)という回答が突出して高くなりました。約半数の親が、学資保険を利用して教育費を準備しているということがわかります。

【子どもを大学等へ進学させるための教育資金を準備している方法(複数回答可)】

銀行預金 55.1%
学資保険 50.7%
財形貯蓄 10.2%
学資保険以外の生命保険 7.9%
株式投資などの金融投資 4.9%
祖父母などからの資金援助 4.1%
教育ローン 3.5%
奨学金 3.1%
祖父母などからの借り入れ 1.3%
消費者金融 0.4%
特に準備はしなかった 15.5%

参考:子どもの教育資金に関する調査2021(ソニー生命)

学資保険のメリット

1. 貯蓄が苦手でも確実に教育費を積み立てることができる

学資保険は保険料が引き落としされ半強制的にお金を貯めることができるため、貯蓄が苦手でも確実に積み立てを行うことができるというメリットがあります。預金だけだと気軽に出し入れできてしまい、ついつい使ってしまうという人にとっては学資保険のような仕組みはとてもありがたいものです。

2. 契約者に万が一のことがあったときの保障機能がある

学資保険に契約していると、契約者が死亡もしくは高度障害状態になってしまった時はその後の保険料の支払いが免除され、満期時には予定通りの保険金を受け取ることができます。預金だけではそのような保障はありませんが、学資保険という手段を使うことで教育資金を積み立てながら万が一の保障機能も備えられるというのは大きなメリットです。

3. 生命保険料控除の対象となる

学資保険は終身保険など他の生命保険と同じく保険料控除の対象となります。学資保険の保険料を払っている期間は毎年対象となり、支払った保険料に応じて所得税・住民税が減額されます。生命保険料控除は年末調整か確定申告で対応することができますが、加入している保険会社から毎年送られてくる「控除証明書」が必要となりますので送付された場合はなくさないようにしましょう。

参考記事:『生命保険料控除とは?対象となる保険から申請方法、注意点まで

学資保険のデメリット

1. 早期解約すると損になってしまう

学資保険は、途中で解約した場合は解約返戻金を受け取ることができます。しかし早期解約するほどにその金額は少なく、元本割れしてしまう可能性が高い点には注意が必要です。満期まで継続するからこそ学資保険はメリットがありますので、満期まで途中解約せず払い続けられる保険料かどうかは契約時によく考えるようにしましょう。

2. インフレリスクがある

学資保険は、契約した時点で満期時に受け取れる保険金額が確定する商品です。契約期間中にインフレが進んで物価が上がり、現金の価値が契約時より低下していても受け取れる金額は変動しないため、インフレに弱いというデメリットがあります。学資保険で受け取れる保険金がインフレにより価値が減ると予測される場合は、学資保険以外の方法でも教育資金を準備しておく必要があります。

3. 過去と比べて返戻率が低い

返戻率とは「(受け取れる保険金の総額÷払い込んだ保険料の総額)×100」で求めることができ、払い込んだ保険料総額に対して受け取れる保険金の総額の割合を示したものです。20~30年前までは、貯蓄重視型の学資保険の場合返戻率が120%ほどあることが多かったので、払い込んだ保険料に対して2割増えて戻ってくるというお得な保険と言われていました。しかし現在は保険の予定利率が大きく下がっており、貯蓄重視型の学資保険でも返戻率は高くても105%程度となっています。もちろん銀行の金利と比べれば高いですが、過去と比較すると返戻率は下がっており、お得な保険とは言えなくなっているのが現状です。

参考記事:『生命保険の予定利率とは

学資保険に関する注意点

教育費全額を学資保険で貯められるわけではない

学資保険を満期まで継続した場合、商品によりますが200万円~300万円ほどの満期保険金を受け取れるものが多いです。もちろん満期保険金は大きな金額ですが、学資保険があったとしても教育費用をすべて賄えるわけではありません。前述したように、教育費が一番かかると言われている大学では4年間で500~1,000万円ほどかかると言われています。学資保険で準備しているから大丈夫と思わず、預金や投資など他の方法での資産形成も同時に進めておきましょう。

保険金の支払われ方に注意

学資保険は大学入学となる18歳で一括で満期保険金が支払われるものが一般的ですが、中学・高校・大学入学時に分割して祝金が支払われるものなどもあり、保険金の支払い時期がそれぞれ異なります。例えば中学から私立を検討しているので中学入学時にも祝金がもらえるタイプがいい、高校までは預金で賄えそうなので大学入学時に一括でもらえるタイプがいい、など自身の希望に合う商品を検討しましょう。

学資保険は必要?

学資保険は今も子どものいる約半数の人が加入している一般的な保険商品です。しかし返戻率は年々下がってきており、必ず入るべきお得な保険とは言えなくなっています。そのため一昔前とは違い、現在では「保障と貯蓄は切り離して考えるべき」という考え方が少しずつ広まってきています。つまり、貯蓄として少しでもお金を増やしたいのであれば投資など他の方法でお金を増やし、保険は保障のみを求めて最低限の保険料を支払うということです。投資など他の資産運用方法には元本割れのリスクはありますが、保険商品で貯蓄を行うよりも効率的にお金を増やすことができる可能性があります。つみたてNISAやジュニアNISA、iDeCoなど今は投資初心者でも始めやすい非課税投資制度が整ってきていますので、少しリスクを取ってでもお金を増やしていきたいという人は学資保険ではなくそちらを検討してみましょう。

逆に、資産運用の知識が全くなく、ローリスクローリターンでもとにかく確実に貯めていきたいという人にとっては学資保険は向いています。自分には学資保険が合っていると思う場合には、活用して着実に教育資金を貯めていくべきでしょう。

参考記事:

つみたてNISAのメリットとデメリット・注意点

iDeCoのメリットとデメリット・注意点

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