2022/04/04

投資信託の「アクティブ運用」と「パッシブ運用」の違いとは

投資信託における、アクティブ運用とパッシブ運用の違いについて解説します。それぞれの運用方法のメリット・デメリットから、結局のところどちらの投資信託を選ぶのが良いのかという点まで投資初心者にもわかりやすく解説しますので、参考にしてください。

「アクティブ」vs「パッシブ(インデックス)」の永遠の論争

投資を始めると、「アクティブ運用」と「パッシブ運用」のどちらが良いのかという論争に高確率で触れることになります。世界中のプロのファンドマネージャーや市場関係者、経済学者などがこの論争に加わっており、この論争が始まってから何十年たっても、いまだに常にどこかで話題となっているテーマのひとつです。

今回は、「アクティブ運用」と「パッシブ運用」について投資初心者にもわかりやすく説明します。

アクティブ運用とは

アクティブ運用とは、投資信託の運用において、目標とする指標を上回る運用成果を目指すタイプの運用方法のことを指します。指標とは例えば日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)などに基づいた市場平均のことで、運用担当者であるファンドマネージャーが一定の運用方針に基づき銘柄の入れ替えや売買を繰り返し、市場平均を超えた高い利益を狙っていきます。

ファンドマネージャーの裁量が大きく手間が多いため、パッシブ運用と比べると信託報酬などの手数料が高いことが多いのが特徴で、積極的な運用によりリスクとコストを多くとり、大きなリターンを狙いにいくという運用スタイルです。運用がうまくいけばパッシブ運用と比べて大きな利益が狙えますが、うまくいかない時は損失も大きくなる可能性があります。

パッシブ運用とは

パッシブ運用とは、アクティブ運用とは逆で目標とする指数(日経平均株価やTOPIXなど)と連動した運用成果を目指すタイプの運用方法のことを指します。「インデックス(型)運用」とも言われ、アクティブ運用のように能動的な銘柄の入れ替えや売買を行わず、機械的に運用をするのがパッシブ運用の特徴です。

世界で初めて個人投資家向けに設定されたパッシブ運用のインデックスファンド(バンガード500インデックス・ファンド)が生まれたのは約40年前の1976年で、そこから急速に拡大してきました。アクティブ運用と比べるとファンドマネージャーの労力が少ないため、信託報酬などの手数料は低く抑えられる一方、常に市場と連動した成績となるため市場平均を大きく超えたリターンは出ないという特徴があります。

参考記事:『インデックス投資とは?メリット・デメリットからおすすめの投資信託・ETFまで解説

アクティブ運用のメリット

1. パッシブ運用よりも大きなリターンが出ることがある

アクティブ運用ではファンドマネージャーが積極的な売買を行うため、将来性を期待して入れた銘柄が予測通りの成長を遂げた場合など、パッシブ運用よりも大きい利益が出ることもあります。

2. 市場全体の下落を回避できることがある

パッシブ運用では市場と連動した値動きを目指すため、もし市場が大きく暴落した場合、同じように下がってしまいます。しかしアクティブ運用の場合、ファンドマネージャーの運用の仕方によっては下落幅が抑えられたり、場合によっては利益が出ることもあります。「世界金融危機時に莫大なリターンを上げた伝説のファンド」などといったものに運良く投資することができていれば、暴落時にもリターンが出ることになります(が、実際にそういったファンドに運良く投資できる可能性は限りなく低いと言えるでしょう)。

アクティブ運用のデメリット

1. コストが高い

パッシブ運用に比べ、人的コストが大きいアクティブ運用はコストが高いことがデメリットです。最近はアクティブ運用の中にもノーロード(販売手数料ゼロ)の商品も見られるようになってはきましたが、まだまだ多くのアクティブ運用の商品は販売手数料がかかり、信託報酬もだいたい資産に対して0.6~2%と、パッシブ運用よりも高く設定されています。手数料が高い=リターンが高いとは言えないのがアクティブ運用の難しいところです。

参考記事:『投資信託やETFのコストが長期投資に与える影響

2. リスクが大きい

アクティブ運用では、市場平均を超えようと積極的な運用(売買)を行うため、リスクが大きくなります。もちろんパッシブ運用を上回る成績となる場合もありますが、それはつまり、パッシブ運用を下回る成績となる場合もあるということです。市場平均に大きく負ける可能性もあるということは認識しておく必要があります。

3. ファンドマネージャーの腕に成績が大きく左右される

アクティブ運用はファンドマネージャーの実力次第で良くも悪くも成績が大きく左右されます。銘柄選択、リスクヘッジ、売買のタイミングなど、あらゆるポイントでファンドマネージャーの腕が試されます。また、注意しなければならない点としては、ファンドやファンドマネージャーの過去の実績のアピールです。過去の運用実績が良かったり、過去の市場暴落時に良いパフォーマンスを出していることと、今後も同様に良い運用実績を出すことには何も関係がありません。過去の運用実績に惑わされないようにしましょう。

パッシブ運用のメリット

1. コストが低い

パッシブ運用ではファンドマネージャーが細かく戦略を立てたり頻繁に銘柄の選定や売買を行う必要がないため、人的コストが安くなり手数料を抑えることができます。パッシブ運用の銘柄では、ノーロード(販売手数料ゼロ)の商品も多く見られ、信託報酬も資産に対してだいたい0.1~0.5%とアクティブ運用と比べると低く設定されています。なるべくコストをかけずに平均点が取れるというのがパッシブ運用最大のメリットです。

2. ファンドマネージャーの腕に成績が左右されにくい

パッシブ運用では、ファンドマネージャーの実力が運用実績にほとんど関与しません。ファンドマネージャーによって運用方針や得意不得意は異なるものですが、パッシブ運用ではそこのリスクをほとんど考えなくてよいというメリットがあります。

3. 運用状況が分かりやすい

パッシブ運用はベンチマークとなる指数に合わせた運用を行うので、投資家に知識がなくても日経平均株価やTOPIXなどの指数をチェックしていれば、だいたいの自分の資産の運用状況を推測することができます。投資家の時間を割かずに運用を任せられるというのもパッシブ運用のメリットです。

パッシブ運用のデメリット

1. 市場平均を超えるリターンは出ない

パッシブ運用は対象となる指標に連動するように設計されているため、その指標を超えるリターンを得ることはありません。市場平均を大きく超えるリターンを狙いたいのであれば、パッシブ運用は向いていません。(ただし、市場平均を大きく超えるリターンを狙うことは、極めて難しいことです。)

2. 投資をすることで得られる日々の面白さや刺激が少ない

アクティブ運用に比べて、パッシブ運用は刺激が少ない投資と言えるかもしれません。そのため、投資に面白味や刺激を求める人は、単調でつまらないと感じることでしょう。ただし、投資の目的は面白さや刺激を得るためにやるものなのか考える必要があります。

パッシブ運用に軍配が上がっていると言わざるをえない

長年にわたり壮絶な論争が繰り広げられている「アクティブ運用」vs「パッシブ運用」ですが、結論としては「パッシブ運用」に軍配が上がっていると言わざるをえません。多くの著名な投資家たちも以下のような理由からパッシブ運用を薦めています。

・パッシブ運用を上回る実績を出せるアクティブ運用銘柄を選択できる投資家(ファンドマネージャー)はほぼいない。

・たとえいたとしても、その実績を継続して出せる投資家はゼロに近い

アクティブ運用のファンドの4分の1がパッシブ運用よりも成績が良いことは事実ですが、その銘柄を見抜いて選ぶことはほぼ不可能に近く、さらにその4分の1の成績が良いファンドが長年にわたって良い成績を出し続けると言うことはほぼ皆無ということです。

投資の初心者であるかどうかに関係なく、パッシブ運用を選択することが結局のところ一番運用実績が良くなる近道であると言えるでしょう。

投資の目的やスタイルに合わせて判断をしよう

アクティブ運用とパッシブ運用の違いについて解説しました。アクティブ運用に比べてパッシブ運用のメリットは大きいと言わざるをえませんが、けっしてアクティブ運用を否定しているわけではありません。自分自身の投資の目的や運用スタイルに合わせて、利用できるところではアクティブ運用も利用していくと良いでしょう。

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